サイズ
長 474.0 cm 幅 193.0 cm 高 166.0 cm
エンジン形式
V型6気筒DOHCスーパーチャージャー
︎ジャガー社による初のSUVとなるFペイスは、2015年9月のフランクフルトショーでワールドプレミアを果たす。ジャガー次世代モデル群のひとつとして開発されたFペイスは、ボディの80%にアルミニウムを採用した軽量モノコック車体構造を採用し、同社セダンの「XE」「XF」にも使用されるプラットフォームを共有するが81%の部品をFペイスの為に専用開発している。︎Fペイスのエクステリアデザインは、同社クーペの「Fタイプ」の要素を取り込んだジャガーらしいスポーティで迫力あるものとなっている。そのデザインはジャガーチーフデザイナーのイアン・カラムによるもので、ウェストラインより上のグリーンハウスを極端に絞る事でスポーツカーの形をしたSUVを表現している。またウェストラインより下は厚みを持たせ力強さを表現し大型のフロントグリルとシャープなヘッドライトはジャガー他モデルと同じイメージとされた。テールランプはFタイプのイメージでデザインされ、止まっていても走っている様なアクティブなデザインでまとめられている。︎搭載されるエンジンは、ボア・ストローク84.5mm×89.0mmを持つV型6気筒DOHC2994ccとなりルーツ型スーパーチャージャーが付き、340馬力/6500rpmと45.9kgm/3500rpmのトルクを発揮する。組み合わされるトランスミッションは定評のあるZF製8速オートマチックとなる。4輪駆動システムは、自社製のオンデマンド4WDとなる。縦置きエンジンとトランスミッションの後方にセンターデフと電子制御湿式多板クラッチにコンパクトなチェーンを用いたトランスファーで構成される「インテリジェント・ドライブライン・ダイナミクス(IDD)」を採用する。通常走行では前後10:90とジャガーらしく、ほぼ後輪駆動(ドライ路面でフルスロットル時なら100%リア駆動になる)、悪路ではこれが50:50となりトラクションを確保する。路面状況によっては90:10と前輪駆動に近い配分も可能。IDDのソフトはジャガーが独自に開発を行ったもので、トラクションロスを予測し路面状況を瞬時に判断し適切なトルク配分を可能としたものとなる。足回りはフロントにアルミ製ダブルウィッシュボーン式+コイル、リアに鍛造アルミ製アームを使用したインテグラルリンク式+コイルを用いている。ブレーキはABS付き4輪ベンチレーテッドディスクとなり、タイヤサイズは4輪ともに225/55R-19W。インテリアはSUVの形をしたスポーツカーらしく、スペースには余裕があるにもかかわらず、ドライバーズシートにはタイト感を感じさせるデザインがなされている。それでもアップライトなドライビングポジションは見晴らしが良く見切りも良好となる。ドライバー正面のメーター類は全てデジタル表示となり、回転計、速度計の配置が選択可能となる。センターコンソールに位置するオートマチックのセレクターは、イグニッションオンでせりあがる円筒型のデザインでロータリー式のダイヤルタイプ。インフォテイメントシステムはタッチスクリーン式となる。電動パワステはロックトゥロックが2.5回転とクイックなレシオが採用されるが、中心付近の「ステアリングの座り」が良く出来ている為、直進安定性は高い。コーナーの切り始めは抜群に滑らかで安定感はとても高く、車重が効いているせいか同社セダン系を含めてもFペイスの評価が高い。オフロード走行を想定したオール・サーフェス・プログレス・コントロール(ASPC)と呼ばれるシステムが採用されている。これは滑りやすい路面をステアリング操作のみで、ドライバーが設定した一定速度(3.6km/h〜30km/hの範囲)で走行出来るものとなる。Fペイス35t Rスポーツはハイパワーエンジンを搭載する割には、ジャガーらしく滑らかな乗り心地を感じさせるものとなる。以前からジャガー社はスポーツモデルにレスポンス遅れの少ないスーパーチャージャーを好んで採用していた。レスポンシブに澄んだ音を響かせながら、2トン級の車重をものともしないで鋭い加速感を味わえる。しっかりとしたオフロード性能を持つにもかかわらず、泥濘路を走る姿をあまり想像出来ないオンロードが似合うSUVだと思う。ワインディングロードに於いても50:50となる前後重量配分を活かしながら、ロールの少ないスポーツカーの様な走り方が出来る。S字の切り返しもシャープで、レスポンスの良い8速ATをもってしても、変速をもどかしく感じるほどのペースでコーナーをクリアする事が可能だ。これはブレーキを使ったトルクベクタリングが働く事により回頭性を上げているからで、好みの姿勢を保ちながら、違和感なく面白い様にコーナーをクリアする醍醐味が味わえる。いくら技術力があっても、それを表現するセンスが問われる、スポーツカー造りの長年のノウハウを多く蓄えた老舗ならではのセッティングと言えるだろう。どんなボディ形状のモデルでも、ジャガーらしさはしっかりと継承され、その味わいはいつまでも守られ続ける事になりそうだ。全長×全幅×全高は4740mm×1935mm×1665mm、ホイールベース2875mm、トレッド前1640mm、後1660mm、車両重量1980kg、燃料タンク容量62リットル。新車時価格849万円。ジャガーFペイスは2017年「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2017」と「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー2017」の2冠を受賞している。