サイズ
長 424.0 cm 幅 166.0 cm 高 131.0 cm
ポルシェ964型カレラのボディデザインは、ナローボディ時代から長く続いてきた911のシルエットはそのままで、それ以前の930型から実に85%もの部分が新設計のパーツで成り立っているという。前後バンパーは959や928を思わせる、曲線的で一体感のあるモノとされ、サイドスカートが加えられた。それらにより964型カレラは、ずっとモダンなイメージに仕上げられ、ダックテールスポイラーやターボウィングではなく、エンジンフードに収納される可動式リアスポイラー(電動モーターにより80km/hで起き上がり10km/hで元の状態に格納される)が採用されている。ポルシェ964カレラ4は、88年終盤にプレス発表を南仏のニースで行ったが、ショーデビューは1989年パリ・サロンとなる。それは911にとって25周年という記念すべき年でもあった。964カレラ4のフロアパンはセンターデフや前後のデフ、プロペラシャフトを含むトルクチューブなど4WDのメカを搭載する為、徹底的に新設計され、部分的に樹脂製のパネルが使われるフロアは完全にフラット化された。それと合わせて可動式リアスポイラーやウィンドウ周りのフラッシュサーフェス化などの効果で空力特性が大幅に向上し、CD値0.395から0.32となった。新型エンジンは空冷式を継承しながら、それまでの3.2リッターエンジンからボア・ストロークともにそれぞれ5mmと2mm延長され100mm×76.4mmとなり3600ccの排気量を持つ。スパークプラグを各シリンダーに2本ずつ配しツインイグニッション化され、SOHC2バルブのままでボッシュ・モトロニックで総合制御される。またエキゾースト系も完全新設計となり250馬力/6100rpmと31.5kgm/4800rpmのトルクを発揮する。このたび、入荷した「964カレラ4 RUF CRo Conversion」は、ポルシェのコンプリートカーを製造する自動車会社「RUF」が公認する、日本で唯一の輸入元であったRTC(旧,石田エンジニアリング)が手掛けるRUF製エンジンコンバーションキットを組み込んだ一台。3600ccの排気量と11.3となる圧縮比はそのままに、シリンダ加工、シリンダヘッド加工、更にエキゾーストパイプ交換、ECU(DME)コンバーションにより、285馬力/5800rpm、と33.14kgm/5200rpmのトルクを発揮する。このRUFコンバーションキットは、エンジンをポルシェ製からRUF製に生まれ変わらせるもので、RUFという自動車メーカーの責任の下で開発されたものとなる。RUFが製造、販売するコンプリートカーと同様の工程を経て製品化され、単純にパワーアップのみを狙ったチューニングとは全く異なる。ノーマルの扱いやすさをそのままに、耐久性、信頼性も高次元でバランスさせたものとなっている。「CRo」はドイツのCUPカーのレギュレーションの中で、最大限のパワーを引き出す為に開発されたキットといわれている。最高出力の285馬力は、いかなる気温状況に於いても発揮でき得る馬力表示となっていて、最低保障馬力ともいえるもの。低速トルクを犠牲にしないまま、中回転域から上の吹け上がりは、自然吸気エンジンとして最高ランクのものとなる。ドライサンプによるエンジンオイルの量は11.5リットルとなり、このエンジンと組み合わされるギアボックスは、ボルグワーナータイプのシンクロを備えた5速マニュアルトランスミッションとなる。足回りはフロントにストラット式、リアにセミトレーリング式でそれぞれにスタビライザーを持ちながら、ショックアブソーバーと組み合わされるバネがポルシェ伝統のトーションバー式から一般的なコイル式となる。更にステアリングに911としては初めてパワーアシストが付いた。定評のあるブレーキは4ピストンのキャリパーに四輪ベンチレーテッドディスクが組み合わされ、ポルシェとして初めてABSが標準装備された。︎964カレラ4に使われるフルタイム4WDシステムは前後トルク配分をフロント31%:リア69%(固定)で駆動され圧倒的にリア寄りにセットされている。センターデフはプラネタリー式でリアデフとともに電子制御の多板クラッチによるデフロック機構を備える。これは40km/h以上でホイールのスリップを感知すると自動的にロックしLSD的効果を発揮するとともに、低速での緊急脱出時には室内からスイッチによりロックする事が出来る。︎インテリアはそれまでの911カレラと同様のイメージでハイバック型シートを備え、ステアリングポスト左側にイグニッションキーが配置される。メーターナセル中央には6800rpmからレッドゾーンとなる大径のタコメーターが備わり、基本的には25年変わらないスタイルが保たれている。唯一、タコメーター左側のメーター内にデフロックを示す、緑色のインジケーターランプが加えられている。またデフロックの為のスイッチはセンターコンソールに配される。964カレラ4の室内で一番強く感じるのはノイズレベルの低減…911特有のサウンドは聞こえるが防音、遮音が格段に向上している。またCD値向上による風切り音の低さも効果的に働いている。走り出して次に気づくのはパワーステアリング…軽いだけでなく911特有のキックバックも軽減されている。トーションバーからコイルに変更された足回りは、低速での乗り心地は若干硬い印象になるかもしれないが、速度を上げる事により印象は好転し、ダンピングは極めて有効なモノとなる。室内環境は空調システムにエアコンが組み込まれた事により、進化を最も感じられる部分かもしれない。しかし、それらの装備は約200kgの増量となりパワーアップしたエンジンを持ってしても、絶対的な性能は中速レンジまでは3.2Lヨーロッパ仕様の911カレラと同等となる。964カレラ4の見せ場は180km/h以上の高速レンジで200km/hからのフルスロットルで力強いパンチが感じられる。また直進安定性は驚異的に優れ、それまでの911との差を大きく感じられるモノとなっている。コーナリングは基本的には911の癖を残すが、唐突にスロットルオフしてもタックインは穏やかで、脱出時のトラクションは素晴らしいの一語に尽きる。また定評のあるブレーキシステムもABS、が組み込まれた事や、重量増によるネガは全く心配なく、充分信頼できるクオリティになっている。︎ポルシェ社は一貫して前輪で操舵、後輪で駆動をコントロールする事をポリシーとしてきた。964カレラ4も、もちろんその例のとおり前後トルク配分を31:69とする事でポルシェの理想のハンドリングが得られる様になっている。かつての959開発での経験を盛り込んだ、ドライバーに4WD化によるネガを感じさせずに、基本的にはより一層、洗練された911カレラとして仕上がっている。︎全長×全幅×全高は4252mm×1652mm×1320mm、ホイールベース2270mm、トレッド前1380mm後1374mm、車両重量1450kg、燃料タンク容量77Lとなっている。「RUF」というメーカーは1939年に創業者であるアロイス・ルーフがガソリンスタンドを併設した自動車修理工場を興したところから始まった。1963年に修理に入っていたポルシェ356を購入した事がきっかけとなり、ポルシェの整備を請け負う事になる。70年代に入るとRUFのポルシェのメンテナンスについて定評が生まれ、ドイツ連邦自動車局から認可を受け自動車メーカーに発展する。1973年のオイルショックの余波を乗り切り、1974年に創業者の死去により二代目となるルーフ・ジュニアが会社を引き継ぐ事となる。1977年に初めてのコンプリートカーとなる「RUFターボ3.3」を発表。RUFの名前を世に知らしめたのは、1984年「RUF BTR3.4」による306km/hという最高速度の記録となるだろう。そして1987年「RUF CTR」により339.8km/hという最高速度記録でその名前を不動のものとする。その「RUF CTR」は黄色いボディを持つ事から「イエローバード」の愛称で親しまれ数々の速度記録を更新した。ポルシェというだけでも充分な速さを持つうえにRUF製のエンジンを持つ「964カレラ4
RUF CRo Conversion」はRUF専用となる、ボディカラーと同色のリアガーニッシュや、同型の964ボディベースのコンプリートカー「RUF BR4」や「RUF BR2」と同じ特徴的なグリーンのバックランプが装備され、RUFステアリング、RUFエアロミラーを備えボンネットエンブレムにも誇らしげにRUFの文字がセットされた貴重な一台となっている。