サイズ
長 538.0 cm 幅 193.0 cm 高 188.0 cm
メルセデスベンツのミニバンとして登場した「Vクラス」。その3世代目となるW447型と呼ばれる、現行型Vクラスのデビューは2014年3月のジュネーブショーとなる。先代の2世代目(W639型)は「ビアノ」という名称で販売されたが、現行型では再び「Vクラス」と命名された。日本国内で発表されたのは2015年10月、お台場で開催された「東京モーターフェス2015」の会場で、デリバリーは翌年1月からとなっている。それまで競合ライバル車に対し、見劣りしていた部分をブラッシュアップし、室内を更に広く見せる演出にもこだわっての登場となった。用途に合わせて全長4905mmの「標準ボディ」、+245mmの「ロング」、+475mmの「エクストラロング」と全長の異なる3モデルが用意された。W447型Vクラスの220dに搭載されるエンジンは、OM651型と呼ばれる直列4気筒、DOHC16バルブのクリーンディーゼルターボとなる。ボア・ストロークは83mm×99mmの2142ccで16.2の圧縮比をもち、163馬力/3800rpmと38.7kgm/1400rpmのトルクを発揮する。コモンレール式電子制御燃料噴射を備える直噴ディーゼルターボで「Cクラス」や「Eクラス」、日産車にも搭載モデルを持つブルーテック(Blue TEC)エンジンとなる。このブルーテックエンジンは、厳しい日本の排ガス規制に対応する為、DPF(粒子状物質除去フィルター)でPM(粒子状物質=排ガスに含まれる黒い粒子)を除去した排ガスに、アドブルー(Ad Blue)と呼ばれる尿素水溶液(燃料給油口下に、青いキャップの補給口を持ち、25ℓのタンクを搭載する。これで約2万km走行可能となる)を噴射してNox(窒素酸化物)を削減するという排気システムを備え、環境に深く配慮されたものとなっている。組み合わされるトランスミッションは「7Gトロニック・プラス」と呼ばれる、変速のなめらかさで定評のある7速オートマチックとなる。この高効率なトランスミッションと直噴ディーゼルターボエンジンにより、JC08モード燃費15.3km/ℓというカタログ燃費と、実質10km/ℓを下回らない経済性を誇る。足回りは、前マクファーソン・ストラット式、後セミ・トレーリングアーム式となり、走行状況に応じて、減衰力を調整してくれる「アジリティ・コントロール」と呼ばれるセレクティブ・ダンピング・システムを装備する。ブレーキは前ベンチレーテッドディスク、後ディスクを備え、タイヤサイズは245/45R18となっている。全長×全幅×全高は5380mm×1930mm×1880mm、ホイールベースはトヨタ・グランエース(3210mm)を凌ぐ、3430mm、トレッド前1665mm、後1645mm、燃料タンク容量70ℓ、車両重量2490kgとなる。国産高級ミニバンに比べ約100mm広い全幅は、ミニバンとしては珍しいFRという駆動方式と合わせて、最小回転半径6mを可能とする。また狭いエリアで大きなリアゲートを開くのは困難な場合でも、リアのガラスハッチのみ開ける事が出来るのは便利な機能の一つ。新車時販売価格は730万円。W447型Vクラスは先代となる「ビアノ(W639型)」に比べ、ステアリングホイールやメーターまわり、ダッシュボードの形状は「Eクラス」に近く、より乗用車的になった。ミニバンとしての内容を見ると、とくにリアシートを中心としたエンターテイメント性に関しては、ミニバン王国といわれる日本の人気車種達が、いまだ先を行く感じは否めない。しかし、セパレートタイプとなるシートの造り、ケタ外れのしっかり感はロングドライブで疲れを感じさせない、メルセデスベンツのブランド名に相応しいものとなっている。着席した時の身体の面圧を重視し、そこに寝転んだ時のフラット感や快適性は考慮されていない。このセパレートタイプのシートは大型の荷物を積み込む場合を考慮して、一座ずつ取り外しが可能となっている。国産ミニバンなら、シートアレンジも手軽な操作で手間要らずとなるところだが、一座20kg以上あるシートを移動するのは骨の折れる作業となってしまう。これも乗員の安全を第一に考慮した結果ならではと言えるだろう。エクストラロングのボディは走り出すと後方の長さを意識させられる大きさとなる。2.5tに近い車重をもつが、僅か1400rpmで40kgm近いトルクを発揮するエンジンにより、その動力性能に不足は感じられない。ただし、街中のスローペースでのストップ&ゴーが続くとディーゼルエンジン特有のエンジンノイズと振動の高まりが気になり出すかもしれない。プレミアムセダン並みの運転環境を備えながらも、基本的には商用車ベースの骨格を基に生まれた出自を、隠しきれない部分と言えるだろう。それでも、このVクラスの長所はアウトバーン育ちゆえの、高速時の安定感とフラットな乗り心地だ。走行する距離が長ければ長い程、ドライバーの疲労感にアドバンテージをもたらすものとなる。また街中で感じた、エンジンノイズや振動も高速巡航時には控えめとなり、2列目シートにおいては、速度を上げる程フラットな乗り心地を味わう事が出来、快適性の高まりを感じられるようになる。また中高速コーナーの連続するワインディングロードでは、ロールはある程度許すがロールスピードが自然な為、以外にもハンドリングが楽しめる。こういった場面でも、車重によるブレーキ性能の不足を感じさせる事がないのはメルセデスベンツらしい所となる。ドライバーは、運転中しっかりとクルマと対話が出来、ドライビングの楽しみを強く感じられる。これは、ある意味クラッシックな構造を今に残す「Gクラス」を運転しているのに近い感覚と言えるかもしれない。ミニバンの形態をしていても、ドライバーズカーとなる「Vクラス」は、国産高級ミニバンと同じカテゴリーに属するクルマとは言い難い。比較すべきは、ヨーロッパ産のドライビングの充実感を味わえるセダンやワゴンとなりそうだ。その使用用途の中に長距離、高速移動、多人数乗車、あるいは大型荷物というワードが含まれる時「Vクラス」は最良の選択肢のひとつとなり得るかもしれない。メルセデスベンツのエンブレムを付けるのに相応しいクオリティを持ちながら、高い経済性を併せ持つのも「W447型Vクラス220d」の特徴といえるだろう。