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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
外装色
ホワイト
年式
1973.0 年型
走行距離
不明
乗車定員
4.0 名
サイズ
長 416.0 cm 幅 161.0 cm 高 127.0 cm
エンジン形式
排気量
2341.0 cc
馬力
130
トルク
20.0
車検
令和8年4月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

「ポルシェ911」がタイプ「901」という車名で912日に始まったフランクフルトショーでデビューした1963年。スポーツカーの世界では多くのクルマが戦後からの第二世代というべき新型へのモデルチェンジを果たしつつある時期であった。イギリスでは「トライアンフTR-4」「MG-B」「ジャガーEタイプ」「ロータス・エラン」などが登場し、イタリアではアルファロメオ が「ジュリア・スプリントGT」をデビューさせ、フェラーリは「250LM」と2+2ボディをもつ「330GT」という2台を発表していた。フランスからは史上初の市販型ミッドシップGT「ルネ-ボネ・ジェット」が登場、ドイツではメルセデスベンツが「300SL/190SL」に代わり「230SL」を発表。日本では一足先に発売された「フェアレディ1500」に続き「ホンダS500」が市販開始となった。まさにスポーツカー百花繚乱の時代、と言えるかもしれない。日本での「ポルシェ911」のお披露目は1965515日に東京プリンスホテルで行われ、デビューしたばかりの新型4気筒搭載モデル「912」を伴ってという形になった。長期にわたりポルシェの正規輸入ディーラーとして存在していた三和自動車は1952年に日本総代理店としてポルシェの輸入、販売を開始しポルシェに相応しいショールームとして、1966422日に飯倉片町交差点の一角に六本木ショールーム兼本社を新たにオープンした。最高のクオリティと卓抜したセンスに貫かれたショールームのショーウィンドウのガラスは、当時、国内最大級で内壁は有田焼の特注タイルで彩られ、フロアは全面カーペットが敷き詰められていた。ショールームのお披露目パーティでは「911」はもちろん、当時最新のグループ6・プロトタイプモデルの「カレラ6」が並べられ大人のサロンさながらの雰囲気に訪れるゲストは驚かされた。展示される「911」のリアフードの下に大型の鏡を置いてゲストの目を楽しませるなど数々の趣向が凝らされていた。初期型「911」は1967年式まで、大きな変更を受けずに生産され「0シリーズ」とよばれている。それ以前のモデルとなる「356SC」の影響と味わいをもちながら2130馬力の空冷フラット6エンジン搭載により130km/h以上での高速クルーズでも高いスタビリティを見せた。しかし、急なスロットルオフは直進安定性に影響を与え、タイトコーナーではオーバーステア傾向に注意が必要ともされていた。1968年からの「Aシリーズ」からは、高価となってしまった130馬力の標準モデル「911E」の廉価版として「911T」がラインナップされる。車名の「T」は「ツーリング」の頭文字とされコストダウンの為シリンダーヘッドはアルミとスチールによるバイラル構造では無く、鋳鉄製とされた。8.6という低めの圧縮比(標準型911E9.0)が採用され、おとなしいバルブタイミングにより、110馬力と控え目の出力となるが、バルブ径とポート径は160馬力を発揮する「911S」と同サイズの大きなものが採用されていた。これは「911T」の簡素な軽量ボディを、ポルシェがレースのホモロゲーションに活用する事を目論んでいたからといわれている。また2時代のピーキーだといわれたフラット6のラインナップの中では「911T」の、比較的穏やかなエンジン特性は低速トルクも豊かで扱いやすく、日常使いにアドバンテージを持つと評価された。1969年「Bシリーズ」となった「911」はロングホイールベース化と燃料噴射装置の導入という、大きな変更が施される事となった。フロアパンとエンジン/ギアボックスの搭載位置はそのままに、ハーフシャフトのジョイント容量を増やし後退角を付けサスペンションアームを延長して、ホイールベースを従来のものから57 mm延長し、2268mmとすることでオーバーステアなどシビアな操縦性を改善する方向とされ、同時により太いタイヤを装着出来るように、ボディの前後フェンダーには僅かなフレアがつけられた。また、リアヘビーを是正する方向で、クランクケースがマグネシウム合金化され「911S」ではアルミ製エンジンフードが採用された。燃料噴射装置については「カレラ6」などレーシングカーからの経験により、ボッシュ製6プランジャー式メカニカル・インジェクションが用いられる。これはアメリカでの厳しい排ガス規制に対しての対策でもあった。「911T」だけはウェーバーキャブレターが装備され、標準モデルとなる「911E」と「911S」にはインジェクションが装備された。また、排ガス規制への対策は排気量アップにも及び、1970年の「Cシリーズ」からはボアを4mm広げることでエンジン排気量を2.2とし、クラッチ径も10mm拡大するとともに「911T」のブレーキは、ソリッドディスクからベンチレーテッドディスクに格上げされた。1972年の「Eシリーズ」からは更なる排気量アップが施されフラット6のエンジン排気量は2.4化された。これはストロークを66mmから70.4mmに延長したことによるもので、あわせてクランクケース形状の見直し、コンロッド及びコンロッド・ベアリングの寸法変更が行われ、従来「911S」のみに用いられていたアルミ鍛造ピストンが、全モデルに採用された。また排気量アップに伴い各モデルとも大幅に圧縮比が下げられ、排ガス中の窒素酸化物を軽減させるとともに、当時ヨーロッパで進む鉛公害に対する無鉛ガソリン化の動きにも歩調を合わせた施策が打たれた。圧縮比は「911T」「911E」はともに1.1下げられ、それぞれ7.58.0に「911S」に至っては1.3も引き下げられ8.5となり2.2エンジン時代の「911T」の8.6をも下回る数値となってしまった。しかし、今まで不足気味だと指摘されていた低速トルクは、排気量アップとロングストローク化により改善が見られ、ドライバビリティの向上が見られた。2.4エンジンに組み合わされる5速ギアボックスは新型となる915型とされ、従来の、H型の左側手前に1速を配するレーシングパターンから、H型右側前方にトップギアをもつ通常パターンに変更された。これにより渋滞時の使い勝手は低速トルクアップと合わせて、大幅に改善されたことになる。この2.4エンジン搭載の「911T」は、1973年式までとなり、翌年からビック・バンパーを装備する「Gシリーズ」の登場で幕を閉じる。今回入荷した車両は、ディーラーにより正規輸入された1973年型「911T」となり、空冷SOHC水平対向6気筒エンジン搭載で、ボア×ストローク84.0mm×70.4mmから2341ccの排気量をもつ。ボッシュKジェトロニック燃料噴射装置を備え、7.5の圧縮比から130馬力/5600rpm20.0kgm/4000rpmのトルクを発揮する。組み合わされるトランスミッションは、72年型(Eシリーズ)から新たに採用された14速でHパターンとなるポルシェシンクロを備えた915型とよばれる5MTとなる。足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+トーションバー、リア・トレーリングアーム式+トーションバーとなっている。ブレーキは前後ともにベンチレーテッド・ディスクが装備されるが、サーボの備えは無く、それなりの踏力は必要とされるタイプとなる。高い信頼性をもち、その踏力に応じて斬進的に確実な効きを示すものとなっている。ホイールとタイヤサイズは、本来6J×15サイズのアルミ鍛造によるフックス製の純正ホイールに185/70VR15サイズが組み合わされるところだが、今回入荷した車両にはフロントに6J×15サイズに195/65R15、リアは7J×15サイズに215/60R15サイズのタイヤが装備され「カレラRS」タイプのフロントバンパーと低められた車高により、レーシーな佇まいに仕上げられている。インテリアは現代まで続く「ポルシェ911」にも通じるメータークラスターを持ちながら、絶品の握り具合をもつ細身の皮巻きステアリングを通して中央には大径のレブカウンターがレイアウトされている。レブカウンターのレッドラインは63006600rpmをに置かれ、その右側には250km/hまで刻まれたスピードメーターが配置される。空冷時代のポルシェ・エンジンは精密機械に例えられ、オイルの管理はとても重要となる為、レブカウンターの左側には油圧、油温、油量と3つのメーターによりオイルの情報が正確に伝えられる。装備されるメーター類はともにVDO製となっている。この「Eシリーズ」までは、それまで継承されてきたシート形状にヘッドレストが装備される形となるが、翌年からの「Gシリーズ」からは、シートバックとヘッドレストが一体化されたハイバック型シートへと移行される。一方「911」伝統となステアリングポストの左側に位置するキーシリンダーは以降モデルチェンジが繰り返されても継承される事となる。細目に立ちあがるピラー類により、全方向とも視界は開けたものとなり、室内のタイト感やボディサイズ感も併せて「ポルシェを着る」と表現される程、ドライバーには馴染みやすくスポーツカーの定番といわれる由縁となる。ウィンドシールドをとおしてドライバーズ・シートから見えるヘッドライトの峰は「911」ならではと言える、格別な眺めと言えるものになっている。全長×全幅×全高は、4163mm×1610mm×1320mm、ホイールベース2271mm、トレッド前1360mm、後1342mm、車両重量は1110kgとなる。燃料タンク容量は62で、最小回転半径は5.35mとなる。新車時ディーラー販売価格は、スタンダードの「911T」が425万円、アルミホイール、パワーウィンドウを含む「911Tデラックス」で485万円となる。1973年式「911T」の生産台数は3838台となっている。メーカー公表性能値は「911T」の最高速度は205km/hとなり、同年式、同排気量の「911E」は220km/h911S」は230km/hとなっている。1972年から新たに採用された915型ギアボックスは、従来の1速がHパターンの左側手前にあるレーシングパターンから、標準的な14速でHパターンとなるギアレバーをもち、2.4化されたエンジンは、それまでのポルシェ各モデルに比べ驚く程の低回転域での柔軟性を持つことにより、市街地での運転をはるかに容易なものとしている。低速時でも1速を多用する場面は少なく、1速は発進専用とし60km/hまでの市街地においても、3速どころか4速さえ使えるくらい低速域では、充実したトルク感を味わえる。この高いフレキシビリティーをもつ「911T」の性格はシリーズ中でも「911」らしさを活かしたまま、日常使いのしやすさで人気を博し、2017年には「991型」後期モデルで「911カレラT」として現代のラインナップにも復活を遂げる。マニュアルトランスミッションと機械式のLSD装備をアピールし「純粋なスポーツカーファン向けのコンセプト」をテーマとされていた。日本仕様では騒音規制により、残念ながらMTモデルが設定されなかったが、ベースモデルとなる「カレラ」用3・ツインターボの370馬力エンジンと、軽量ガラス、簡素化されたトリム、リアシートの省略などにより20kgの軽量化がほどこされていた。現代のモデルにも継承されたドライバビリティの高さ感じさせる「911T」ではクラッチ、ギアボックスは作動も軽くスムーズで四方に開けた視界により、市街地のみならず長距離を高速移動する場合に於いても、ドライバーへの負担を軽いものとし、リア・エンジンのわりにスタビリティは高く、ステアリングを軽く保持するだけで、横風の影響も少なく直進性は高い。但しウェットな路面では軽い前輪がアクアプレーニングを起こすことを念頭に置き、潜在的な弱点として注意を要するに越したことはない。ハンドリングは多くのドライバーが体験する通常のコーナリングにおいては、ニュートラルと感じられるだろう。それでもオーバースピードでコーナーに侵入しスロットルを急に閉じる、或はブレーキを踏むなど、急に後輪の荷重を減少させる操作を行えば、唐突にグリップを失う「911」ならではの動きは避けられない。咄嗟にカウンターステアを切り、同時に適度にスロットルを開けリアを安定させるのがスピンを防ぐ方法となるが、鋭い反射神経、的確な判断と経験が必要になるともいわれている。ポルシェ「911」ならではのこの挙動は、様々なアドバンテージを持つリア・エンジン車ゆえの唯一の弱点ともいえるもので「911」登場時から数々の対策が施されているところとなる。このことからもポルシェほど「スロー・イン、ファースト・アウト」の原則に従い、しっかりとコーナー手前で、効き味鋭く信頼性の高いブレーキでスピードを抑え、適度なスロットル開度を保ってコーナーを回り、出口に向かってフルパワーをかけるのが最も安全確実となる。クイックで軽く、極めて正確なステアリングは軽いキックバックはあるが路面感覚を確実に伝えてくれるものとなり、常にドライバーの味方となる。変わりゆく時代の流れの中で空力付加物をもたないプレーンな「911T」のボディスタイルは「911」誕生時の、シンプルでソリッドな不変の魅力をたたえるものとなっている。オートマチックトランスミッションの多段化や高性能化、多様化の進む中で、スタンダードとなるマニュアルトランスミッションは、クラッチペダルとマニュアルシフトを操り、レスポンスの良いエンジンによる、ドライバー自身が走らせる楽しみを思い出させてくれるものとなっている。復活した「911カレラT」でも「ガレージを飾るのでは無く、コーナーを攻める為の一台」といわれる様に、走らせる事でクルマとの一体感を楽しめるのが「911」をはじめとするスポーツカーの大切な要素の一つでもある。中でも「911T」は、その実用性の高さとアンダーパワーゆえの安全マージンを併せもつことで、初めてのクラッシックポルシェとして「911」デビューを果たすには、最良の選択肢のひとつと言えるかも知れない。クラッシックとよばれる時代の「ポルシェ911」は、その扱いやすいコンパクトなサイズ感と同様に、ライトウェイト感覚で走らせる事が出来、高いスピードに頼る事なく、ダイレクトにスポーツカーをドライブしている味わいも感じられるところが、とても貴重なモデルと言えるだろう…