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F1スーパーファースト2
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メーカー
ミッション
セミオートマ
グレード
F1スーパーファースト2
ボディタイプ
外装色
ネロ
年式
2009 年型
走行距離
12650km
乗車定員
2 名
サイズ
長 454 cm 幅 192 cm 高 121 cm
エンジン形式
排気量
4308 cc
馬力
510
トルク
48.0
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

1990年代初めにルカ・ディ・モンテゼーモロがフェラーリ社長に就任して以来、工場から送り出されるフェラーリ各モデルは、スポーツカーとしての速さはもちろん、それまで生産されていたモデルに比べ、ドライバビリティやコンフォート性能、信頼性を高める政策がとられていた。「456GT」や「550マラネロ」の12気筒モデルは勿論、「F355」「360モデナ」などのV8エンジン搭載モデルも然り。それは「魅力あるフェラーリを実用に使って欲しい」というモンテゼーモロの掲げた新たなるフェラーリの目標でもあった。より贅沢なスポーツカーへと傾倒していくフェラーリが「ピュアでベーシックなフェラーリへのノスタルジア」として原点回帰を狙い、1960年代のフェラーリ中核モデルの様に公道とサーキットを隔てなく楽しめるモデルとして20033月のジュネーブショーで発表したのが「360チャレンジストラダーレ」となる。25馬力のエクストラパワーと、強化されたブレーキや足回りをもち、ベースモデルより110kg軽量化が施される事で、ワンメイクレース用のサーキット専用モデル「360チャレンジ」を上回る動力性能が与えられた。フェラーリのピュアな本質をもつこのドライビングマシンは1400台が生産されるが、それを待ちわびるコアなファン達により瞬く間に完売となる。この流れを踏まえて後継車である「F430」のラインナップに加わったのが「430スクーデリア」となり、2007年のフランクフルトショーで発表される。開発には7回のF1ワールドチャンピオンに輝いたミハエル・シューマッハが深く関わったとされ、車名の「スクーデリア」とは「厩舎」を意味する言葉で、レーシングカーを競走馬に見立てるなら、「レーシングチーム」といったニュアンスをもち、サーキットやレースとの深い関わりを表したものとなっている。ベースモデルの「F430」に見劣りしない程度の実用性を確保しながら、強靭なアルコア社開発によるアルミ材を繋いだフレーム構造をもつボディは、100kgにも及ぶ軽量化が施され、飛び切りのドライビング・エモーションをもたらしてくれるモデルに仕上げられている。そのパフォーマンスは、2002年に発表された660馬力を誇るV12気筒エンジン搭載モデル「エンツォ・フェラーリ」と同じ125秒というラップタイムをフィオラーノテストコースで記録し、パワーウェイトレシオ2.45kg/psを達成。フランク・ステフェンソンによるエクステリアは、軽量化とエアロダイナミクス改善の為にエアダム一体式バンパーはじめ、リアエンドのスポイラーもリデザインが施されながらカーボンファイバー製に改められている。15mm低められた車高と強化された足回りをもち、高い位置に移設されたリアマフラーにより、大型化されたリアディフューザーは片側2本から3本にフィンを増やされ、それに伴いフロントセンターダクトも大型化された。これにより最高速走行時には300kgものダウンフォースが得られる様、空力の大幅な向上が図られている。「F430」のガラス製から軽量なレキサン(ポリカーボネート)製に変更されたリアウィンドウ越しに見えるエンジンは、紛れもなくV8エンジンながら「430スクーデリア」は、V12ミドエンジンのスーパースポーツに勝るとも劣らない魅力に溢れるモデルとなっている。「430スクーデリア」に搭載されるエンジンは、水冷90°V8気筒DOHC32バルブでボア×ストローク92.0mm×81.0mmから4308ccの排気量を得るのは「F430」と同じ。このエンジンは1973年デビューの「308GT4」に搭載されたF106A型エンジンから始まる、歴代のフェラーリV8ミッドシップモデルに受け継がれて「360モデナ」に至る94mmのボア間ピッチをもつものではなく「F430」に搭載する為に新開発されたF136E型とよばれるものとなる。F136E型エンジンは、先にマセラティが自社の「クーペ/スパイダー」用に設計した4.2版を、フェラーリが再設計したものとなり、エンジン開発責任者はルノーF1チームから移籍してきたジャン・ジャック・イスが担当。マセラティ用4.2版よりストロークのみ1mm伸ばして64cc大きな4308ccの排気量とし、それが車名の「430」の由来ともなっている。イスはそれだけにはとどまらずマセラティ版では90°スローによるクロスプレーン式だったクランクシャフトを、これまでのフェラーリV8エンジン同様に、慣性吸気を利用出来、確実にパワーアップが狙える180°スローのシングルプレーン式に設計変更を施した。マーレ社製アルミ鍛造ピストンや、パンクル社製チタン鍛造コンロッドの採用により軽量化に配慮されたエンジンは単体重量184kgを実現。加えて低重心化が施され、クランクシャフト中心は「360モデナ」より15mm低く設計され、市販車としては異例ともいえる低さを可能とした。これは「360モデナ」で使用されていた247mm径の乾式単板クラッチを、215mm径の小型ツインプレート化したことによるもので、対応トルクも22%増やしながら回転慣性は9%減らすことにより、機敏なレスポンスをも実現した「F430」のエンジンがベースとなっている。「430スクーデリア」に搭載するにあたり、吸排気効率アップを狙ってインテーク形状の見直しとパイプ内にマイクロピーニング加工が施されるとともに、排気系も新設計とされた。また新形状のピストンの採用により圧縮比は、11.3から11.88に引き上げられ、ドライサンプ用オイルポンプは高圧の新型に変更されている。ECUのフューエルマップも専用品とされ、ロードカーとしては初となるF1テクノロジーによる特別なコイルと、高性能プロセッサーが採用され、点火の最適化と燃焼効率の改善が図られた。これらのチューニングによりベースモデルより20馬力と5kgmのトルクを手に入れた「430スクーデリア」のエンジンは、最高出力510馬力/8500rpmと最大トルク48.9kgm/5250rpmを発揮する。ポイントとなるのはトップエンドのパワーのみならず、フラット化されたトルクカーブにより僅か3000rpmにおいて最大トルクの80%が得られるよう柔軟性をも確保された上で、4000rpm以上ではズバ抜けた超速レスポンスを見せるところ。組み合わされるトランスミッションは基本的な構造は「F1トランスミッション」を踏襲するが、注目すべきは「F1スーパーファスト2」と改名され、大きな進化を見せているところとなる。2006年に発表された「フェラーリ599」に採用された「F1スーパーファスト」から、更に高圧の油圧アクチュエーターを新装備、クラッチの断続を同時に処理出来る新たなソフトと、マルチコーン・シンクロを備えたギアボックスの組み合わせにより、変速に要する時間が短縮されている。変速に必要とされる時間は、当時のF1マシンでさえ0.030.04秒、最速だった「599」用の「F1スーパーファスト」では0.1秒とされる中、「430スクーデリア」の「F1スーパーファスト2」では、僅か0.06秒を実現。「F355」から始まった、シングルクラッチによる「F1トランスミッション」システムに於いて、F1マシンに最も近い変速スピードをもつ最終進化版となっている。「430スクーデリア」は、スロットル全開のままシフトアップを試みると、僅かにショックを伴うが、この点を除けばレーシングカーのシーケンシャル・ギアボックスを操るような、最短のギアチェンジによるシームレスな加速感を体感出来るとともにシフトダウンについては完璧なものとなっている。「F430」に採用されていた電子制御ディファレンシャル「Eデフ」は、アクセル開度、ステアリング舵角、ヨーモーメント、4つの車輪の回転速度をそれぞれセンシングし、電子制御による油圧アクチュエーターで左右のドライブシャフトに繋がるフリクションディスクを押し付ける事によりLSD効果を生み出し、最適なトルク配分を行うもので、本来は当時のF1マシンの為に開発されたシステムとなる。この「Eデフ」は「430スクーデリア」ではアップデートが施され、同じく進化した「F1-TRAC」とよばれるトラクションコントロール、エンジン、電制サスペンション、F1トランスミッション、ABSCST(Control for Stability and Traction=姿勢安定装置)と協調しながらソリッドな操縦性に貢献し、まるでドライバーの腕前が上がった様な走りを体感する事を可能としている。足回りは、前後ともにアルミ製のアームで構成された4輪ダブルウィッシュボーン式となり、電子制御式のダンパーは「F430」に比べ単体で100g軽量化が施されながら、1.4Gもの高いコーナリング能力を発揮する。ブレーキは前後ともにカーボン-セラミックディスクが採用され、フロント398mm×36mm、リア380mm×34mmサイズとなっている。組み合わされるキャリパーはフロント6ポッド、リア4ポッドのブレンボ製アルミ・モノブロックが装備されABSが備わる。最大1.6Gの減速を可能とするブレーキシステムは、100km/hから停止までの距離は「F430」から3m短縮された34mとなっている。ホイールは前後19インチ径となり、組み合わされるタイヤはフロント235/35ZR19、リア285/35ZR19サイズで、スペシャルコンパウンドのピレリPゼロ・コルサが採用されている。インテリアはベースモデルの「F430」の様にレザーをふんだんに採用したものではなく、軽量化の為にカーボンとバックスキンで覆われ、フロアマットさえ省かれたスパルタンな仕上げとなっている。シートは、ベースがカーボンファイバー製で、座面と背面をメッシュ素材、その周りをバックスキンで覆った軽量なバケットタイプが採用されるが、ホールド性とかけ心地は群を抜いた造りとなっている。カーボンとレザーのコンビによるステアリング上部には、F1マシンの様にレヴ・リミットに近づくにつれLEDライトが点灯するシフトアップインジケーターが備わり、エアバッグも装備される。そのステアリングを通して見えるメータークラスターには「F430」と同じスケールとレイアウトを見せるメーター類が並ぶが、使われる文字のデザインは異なる。ステアリング裏に備わる変速の為のパドルは、アルミ製からカーボンファイバー製に変更されている。またステアリングに備わる「マネッティーノ」とよばれるドライブモード選択機能は「430スクーデリア」では「レーシング・マネッティーノ」とよばれ、5つの走行モード選択が可能となっている。ただし「F430」に設定される「アイスモード」に替えて「レーシング・マネッティーノ」では「CTオフモード」が新たに追加されている。この「CTオフモード」とは、トラクションコントロール機能だけを停止するもので、いざという時の為にCSTはオンの状態を維持する。「CSTオフモード」における、全ての電子制御をカットするモードとは異なり「CTオフモード」は、ミハエル・シューマッハのアイデアから生まれたもので、サーキットのタイトコーナーなどでテールアウトの姿勢に持ち込めるだけでなく、スロットルの開け具合によりドリフトコントロールも可能となっている。また「レース」「CTオフ」「CSTオフ」モードに於いてはダンパーは最も硬いセッティングとされてしまう為、バンピーな路面では接地性が損なわれたり、ABSが早めに効いてしまうなど弊害も出てしまう。こんな場面に威力を発揮するのがカーボン製に材質が変更されたセンターコンソール上にあるダンパーの形状が描かれた「ダンパーソフト」スイッチ。これもまたシューマッハの発案による機能で姿勢変化はやや大きくなるが、アップダウンに富んだコースやバンピーな路面では大きな効力を発揮する。F1マシンとF1チャンピオンから多くのフィードバックを得て「430スクーデリア」は高い完成度とドライバビリティを誇る。全長×全幅×全高は4512mm×1923mm×1199mmで、ホイールベースは2600mm、トレッド前1669mm、後1616mm、車両重量1250kgとなっている。前後重量配分は43:57で、燃料タンク容量は95、新車時価格は3026万円となる。生産台数は1200台とされ、派生モデルとしてオープントップモデルの「フェラーリ スクーデリア スパイダーM16」が存在する。これは、フェラーリが2008年に16回目のF1コンストラクターズチャンピオンを獲得した記念に販売されたモデルとなり、499台が生産されている。メーカー公表性能値は0100km/h加速3.6秒以下、0200km/h加速11.6秒以下、01km加速20.9秒、最高速度は320km/hとなる。ベースモデルの「F430」は、0100km/h加速4.0秒、01km加速21.6秒、最高速度315km/hとなっている。低く蹲るように止められた「430スクーデリア」は、徹底した軽量化により研ぎ澄まされたオーラを放ち独特の存在感を滲ませる。ドアを開けば、そのインナーパネルは一体のカーボン製とされ、ダッシュボードはじめシートやステアリングまでカーボンとバックスキンで覆われたキャビンが現れる。ドライバーズシートに腰を下ろすと足元にカーペットは無く、全てがソリッドでドライな感覚にとらわれる。キーを捻りシステムを作動させた後に、ステアリング上の赤いスタートボタンを押せば、エンジンが始動しドライバーはそのノイズレベルの高さで軽量化を実感することとなる。ステアリング右側のパドルを引いて「1速」を選び、センターコンソールにあるサイドブレーキを解除、ゆっくりとアクセルを踏み込むことで「430スクーデリア」は、スムーズに動き出す事が出来る。スピードを出さなくても車体の軽さと、シームレスなシフトチェンジを体感出来るが、低速で走らせる限り、そのパフォーマンスから想像される気難しさは感じられない。エンジンやタイヤが温まるのを確認してから、スロットルを深めに踏み込んでみるとレッドゾーンの始まる8600rpm迄回して、1速で80km/h2速で120km/hに達するが、そこまでの時間は一瞬で、その加速力は圧巻となる。キャビンは透明感の高い咽び泣く高音サウンドでは無く、ドライな中音基調の大音量に包まれるが全く不快では無い。アップシフト時にチェンジによるショックをやわらげようとスロットルを緩めるタイミングを狙っていてもなかなか間に合わない。それくらい「F1スーパーファスト2」によるシフトチェンジは素速く完了してしまい、その構造を考えれば異次元の体験となる。ブレーキは、踏力により制動力をコントロール出来るタイプで、ストロークをいっぱいに使っても振動は無く、確実にそしてリニアにスピードを落とす事が可能で自然なものとなる。コーナリングに於いてはステアリングが軽めで、滑らかさを保ちながら、路面とタイヤがコンタクトする感覚をダイレクトに伝えてくれる。公道に於いても「430スクーデリア」 は、ドライバーに過度なストレスや緊張を感じさせずに、痛快なドライビングが楽しめる様にセッティングされ、暴れ回る猛獣を御す、というより極めて文明的な操縦感を味わう事が出来る。軽さが感じられる乗り味は軽快で気難しさとは無縁なものとなり、ステアリングを握るドライバーは、あまりの楽しさにスピードを抑えて走る事が何よりも苦痛に感じられるかもしれない。フェラーリは、F1ワールドチャンピオンドライバーの意見を生産モデルにダイレクトに反映し、その恩恵をドライバーが直に享受出来るという素晴らしい連携を確立し、ドライビングの楽しみの裾野を大きく広げて見せた。プロフェッショナル達が競い合うレースの頂点で培われ、磨き抜かれた電子制御技術が、ドライバーをサポートしながらまるでワークスレーシングドライバーが体験し見ている景色を、同じ視点から体験している様な、そんな贅沢な時間を提供してくれる。フェラーリは「430スクーデリア」ではそんな世界を見せたかったのかもしれない…