サイズ
長 501.0 cm 幅 189.0 cm 高 139.0 cm
︎アルピナの創業者ブルカルト・ボーフェンジーペンがBMW1500用ウェーバーキャブレターユニットを開発したのが1962年、アルピナを創立したのが1965年。特別なクルマを求めるエンスージャストのために、特別なBMWをつくりあげ独自の地位を築きあげてきた。車名には「BMWアルピナ」と「BMW」が付く。しかしグループ企業となっているメルセデスAMGとは異なり、アルピナはBMWとは資本関係を持たずに、深い協力関係を維持しながら続いてきたのが特徴的。そのアルピナが創立50周年を迎える2015年のジュネーブモーターショーで発表したのが「B6ビターボグランクーペアルラット」となる。アルラットはオールロードの事、すなわちフルタイム4WDを示す。BMWは650i(F06型)に「xDrive」を用意しており、それをベースにアルピナがチューニングしたコンプリートカーとなる。全長×全幅×全高は5010mm×1895mm×1400mmでホイールベース2970mm、車両重量2030kgとなる。︎エンジンはボア×ストローク、89.0mm×88.3mmで4394cc(N63型)のV8DOHC32バルブにツインターボを備え最高出力600馬力/6000rpm、最大トルク81.6kgm/3400〜4500rpmを発揮する。︎変速機はZF製8速電子制御トルコン型オートマチックで、アルピナ独自のブルーとグリーンのステッチの入ったステアリングの裏にマニュアルシフト用のボタンが付いたスウィッチトロニックと呼ばれるものになる。全長5mを超え、車重2トンをオーバーするこのクルマの公表性能値は、0→100km/h3.8秒、最高速度324km/hとなっている。ちなみに100km/hで高速巡航中のエンジン回転数は僅か1500rpmとなる。︎足回りはフロント、ダブルウィッシュボーン式、リア、インテグラルアーム式となる。ホイールは繊細な20本スポークの「アルピナ・クラッシック(スタイリングⅢ)」と呼ばれるモノで20インチとなり、タイヤサイズは前255/35ZR20-97Y、後295/30ZR20-101Yとなる。豪華な設えのキャビンは、ウッドとレザーで仕立てられ、10.2インチの大型モニターがダッシュボードに配置される。330km/hまで刻まれたスピードメーターがほぼフルスケールで活躍するとは、とても思えないくらいのラグジュアリーな空間となっている。洗練された乗り心地は、日常的なスピードでは柔らかく穏やかで装備されたアダプティブダンパーでスポーツ、またはスポーツ+をチョイスすれば一気にソリッドでフラットな乗り心地をしめす。車重2トンを超える大型クーペの挙動をタウンライドから超ハイスピードまでコントロールするには、アルピナといえどもアダプティブダンパーに頼るしかなかった…あるいはそれだけ高いクオリティをこのクルマに与えたかったと言えるかもしれない。ワインディングでは4WDは完全な黒子となり、全幅1.9mもあるクーペは、そのパワーを少しも持て余す所無く、狙った通りのラインをしっかりトレースしてくれる。ラグジュアリーで超高性能なB6ビターボグランクーペアルラットは、ドライビングに特別な贅沢さを求める人に相応しいクルマ、アルピナだから仕上げる事が出来た工芸品の様な一台といえるかも知れない。新車時価格は2197万円となっていた。南ドイツのブッフローエで続いてきたアルピナは、フェラーリの半分にも満たない年産1700台が精一杯といわれたのは2014年の事。2021年には2000台を超える生産台数を記録するほど更に人気のあるメーカーとなり、そのうち約25%が日本に輸入されているといわれている。迫力を漂わせながらも押し出しの強過ぎない、控えめさを持つアルピナの繊細なキャラクターに、日本のファンは魅力を感じているのだと思う。しかし、そのアルピナは2022年3月10日、商標権を25年にBMWが取得すると発表した。今まで続いてきたボーフェンジーペン一族によるファミリービジネスとしてのアルピナ。そのこだわりの少量生産が続けられるのも残り僅かとなりそうだ。