︎2001年デビューしたインプレッサWRX STI(GDB型)をベースに、京都を本拠地とする「トミーカイラ」が2002年に市販したコンプリートカー「スバルインプレッサWRX STI トミーカイラM20b2.2」。「トミーカイラ」は富田義一をリーダーに、数々のレーシングカーや70年代の国産初のF1マシン、コジマF1でもその手腕をふるった解良喜久雄により、トミタ夢工場をベースとして製造されたコンプリートカーのブランド名。90年代には由良拓也デザインによるイギリス生産のオリジナルスポーツカー「トミーカイラZZ」が名声を馳せる。トミーカイラのコンプリートカーとして出された数々の車種の中で、インプレッサとしては先代となる1993年のGC8型をベースとする「トミーカイラM20b」以来の2世代目となる。M20bでは、スバルの初代STiがベースのインプレッサWRXから30馬力アップしたのに対し、40馬力アップとなる260馬力にチューニングされていた。専用ECU、専用インタークーラー、専用スプリングを組んだサスペンションに2インチ大径の専用ホイールで仕上げて、本家のSTiの鋭敏な特性から、よりスポーツ4WDらしいドライバビリティ重視のセッティングとされ、高い評価を得ていた。M20b2.2のエンジンは、ベースとなるボア×ストローク92mm×75mmというショートストローク型の1994ccベルトドライブ水平対向4気筒16バルブ・ターボエンジン(EJ20型)を2146ccに排気量アップしたもの。これはボア×ストロークをそれぞれ93mm×79mmとややロングストローク化して常用域での扱いやすさを重視しながら、高回転の伸びとパンチのある加速フィールを狙ったモノとなる。最高出力はベースとなる2Lの280馬力から355馬力にアップされ、最大トルクは45kgmを発揮する。エンジンチューンにはクーリングチャンネル付きのオリジナル鍛造ピストンを中心に構成された2.2Lキットが組み込まれ、エンジン内部のチューニングに伴いECUを書き換え、適正化を図っている。その内容はスピードリミッターのカットと燃調のリセッティングが主となる。ターボチャージャーは純正のまま組まれ、トミーカイラの名前に相応しい耐久性と信頼性を確保している。足回りは、純正ダンパー(ビルシュタイン製)にオリジナルスポーツコイルスプリングを組み合わせ、スポーツ性と快適性がバランス出来るようにチューニングされている。サスペンション型式は前マクファーソンストラット式/後ストラット式となる。ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクを採用し、フロントは4ポッド、リアは2ポッドのSTi純正のブレンボ製となる。M20b2.2に採用されるトミーカイラオリジナルホイールは「PRO-R」と呼ばれる軽量高剛性の鍛造1ピースホイールで18インチ径×8インチのサイズとなり、235/40-18サイズのタイヤと組み合わされる。インテリアでは専用の260km/hスピードメーターが組み込まれ、軽さと重厚感を兼ね備えたアルミシフトノブが付く。グリップ部分にはトミーカイラのマスコットとなるカメのエンブレムがプラスされている。これは「ZZ」が出来た時に使用したモノで、大メーカーのポルシェやフェラーリをウサギになぞらえ、後発の自分達をカメにみたて、ウサギに勝つという精神が込められているといわれている。エクステリアはトミーカイラらしい大開口部を持つスポイラー一体型のオリジナルバンパーで攻撃的なルックスとなっている。それとバランスを取る様にリアトランクのオリジナルGTウイングで揚力の前後バランスを向上させている。︎2.2Lに排気量アップされたエンジンがチューニングのカナメとなるが、馬力アップだけでなくクルマとしての総合的なバランスの取れた性能アップが高い信頼性と共にあるのがトミーカイラらしいところ。定評あるコンプリートカーを製造してきたトミーカイラによるM20b2.2は、極めて稀少な一台といえると思う。