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DB7ヴァンテージV12
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メーカー
ミッション
オートマ
グレード
DB7ヴァンテージV12
ボディタイプ
外装色
ライトブルーメタリック
年式
2001 年型
走行距離
17200km
乗車定員
4 名
サイズ
長 470 cm 幅 183 cm 高 124 cm
エンジン形式
排気量
5935 cc
馬力
420PS
トルク
54.5Kgm
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ボルドーレザー
燃料区分
ガソリン
幌色

アストンマーティンは、その金字塔といわれる傑作「DB4」「DB5」「DB6」を送り出し、その一方で1959年にはレーシングスポーツの名作「DBR1」で念願のル・マン24時間レースに勝利し、コンストラクターズタイトルを獲得、それまでの歴史の中で最高の時を迎えていた。その後も「DBS」「DBS V8」を発表し、順調に見えたデイビッド・ブラウン時代に翳りが見え始めたのは1970年代に入った頃だった。生業のトラクター部門の過剰投資が発端となり、1972年には25年もの間、所有してきたアストンマーティンをも手放す事態に陥ってしまう。この時、負債を肩代わりしアストンマーティンのオーナーとなったのはカンパニー・デベロップメンツ社であったが、僅か2年後の1974年には経営権を放棄してしまう。その後、世界のアストンマーティン・オーナーズ・クラブが出資を募るが、北米のピーター・スクラブ、カナダのジョージ・ミンデン、英国のアラン・カーティスの共同出資により何とか窮地を脱することとなる。1975年再組織されたアストンマーティンの新社長となったカーティスは「V8」と名乗っていた「DBS」に改良を加えるとともに「ラゴンダ・サルーン」を発表し再建に成功。1981年には石油資本家グループを率いる自動車愛好家のヴィクター・ガントレットがアストンマーティンを買収すると、精力的な企業活動を展開する。それはル・マンをはじめとするWECに参戦するニムロッド・レーシングをサポートしながら、1986年には「V8ヴァンテージ・ザガート」を発表し、四半世紀ぶりにザガートとの協力関係を復活させ、限定モデルとして50台の製作に及んだ。勢いを取り戻したかに見えたアストンマーティンは19879月、プレミアム・ブランド買収を企業戦略としていたフォードにより買収されその傘下となってしまう。それでもガントレットは1991年まで社長として留任し、アストンマーティンは1988年に「AM V8」の後継車「ヴィラージュ」を発表する。そして親会社のフォードは、ガントレットの後任としてウォルター・ヘイズという人物を送り込んだ。ウォルター・ヘイズは、当時、同じフォード傘下のジャガーが開発を進めていた「Fタイプ(現在販売されているモデルとは異なる)」プロジェクトが凍結されたのを知ると、これをアストンマーティンの新型グラントゥリスモに仕立て直す事を提案する。その結果、フォードの承認を得て完成したモデルが「DB7」となり「ジャガーXJ-S」と共通のホイールベースをもつなど、当時のジャガー車との親和性を感じさせるキャラクターをもつ。ウォルター・ヘイズは19933月のジュネーブショーで正式発表された「DB7」を、同年5月にニューポート・パグネルのアストンマーティン縁の工場に運び、89歳の誕生日を迎えたデイビッド・ブラウンを招いて、彼の長寿を大いに祝福した。1966年の「DB6」以来、実に28年ぶりに「DB」の車名を復活させたのもヘイズ自身の粋な計らいとなり、それから僅か数ヶ月後の93日、デイビッド・ブラウンは南仏モナコにおいて大往生を遂げた。アストンマーティンの新たな門出を祝うべき「DB7」の美しいボディデザインは、アストンマーティンの黄金期と共に生きたデイビッド・ブラウンの審美眼を大いに満足させたに違いない。フォード傘下で発表された「DB7」は、アストンマーティンの依頼により、同じくフォード傘下で「ジャガーXJ220」や「ジャガーXJR-15」を生産していたTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)に任され、基本設計、開発、生産設備に至るまで、短期間で完成されたモデルとなっている。「DB7」のボディデザインは、当時TWRのデザイナーだったスコットランド出身のデザイナー、イアン・カラムによるもので、かつての「DB4GTザガート」の面影を残しながらも、30年以上の隔たりのある「DB6」と同等のボディ長をもつ流麗なボディデザインが施されている。伝統的な形状のラジエーターグリルやフロントフェンダー上のエア・アウトレットが違和感無く溶け込んだボディは、エンジンフード、トランクリッド、フロントフェンダー、前後バンパーこそ複合素材が用いられるが、ボディ骨格はスチールモノコック製となり、かつての“スーパーレッジェーラ”による軽量なボディ構造とは大きく異なっている。搭載されるエンジンは、それまでの「DB」シリーズにならいストレート6が選択され、ジャガー製の3239ccの排気量をもつ直列6気筒DOHC24バルブ式エンジンに、米国イートン社製スーパーチャージャーと水冷式インタークーラーにより過給を加えることで、最高出力335馬力/5750rpm、最大トルク50kgm/3000rpmを発揮する。組み合わされるトランスミッションはゲトラグ製5MTGM製電子制御式4ATとなる。足回りは4輪ダブルウィッシュボーン式となりビルシュタインのダンパーを備えている。18インチのホイールにブリジストン製エクスペディアS-01を装備し、開発テストのメンバーにはワールドチャンピオンを3回獲得した元F1ドライバーのジャッキー・スチュワートの名前も含まれている。1700kgにもなる車両重量を0100km/h加速5.9秒、最高速度266km/h(ATモデルは261km/h)まで引っ張るアストンマーティンらしい高い性能値を公表している。コノリーレザーとウォルナット・パネルで覆われた上品なインテリアをもち、ボディ塗装はクルーのロールス・ロイス工場に運びこまれ施工されるなど、英国製高級車としての成り立ちを持つ。フォード傘下となるまでのアストンマーティン各車は「フルハンドメイド」にこだわり続け、当時、80年を超える長い歴史の中で生産されたアストンマーティンは僅か12000台程度に過ぎなかった。生産効率の悪さは要改善項目とされ、より多くの潜在的ユーザーに向けてのクルマ造りが必要とされる時代を迎え、その要望に対応した最初のモデルが「DB7」となっている。この時期、古くからのハンドメイドにより生産される「ヴィラージュ」は伝統のあるニューポートパグネルのアストンマーティン本社工場で行われ「DB7」の生産は元ジャガー・スポーツのファクトリーとして使われていた、TWRのブロクスハム工場で造られていた。「DB7」は、年間生産台数約800台というアストンマーティンとしては驚異的な生産効率により「ヴィラージュ」のおよそ半額となる新車価格を実現し、日本導入時「メルセデスベンツSL500」や「BMW850CSi」「ポルシェ928GTS」と同じ価格帯となる1460万円で販売され、アストンマーティンとしては商業的に成功を納めたモデルとなっている。新時代のアストンマーティンとなる「DB7」は、19993月のジュネーブショーにおいて、より高性能を求める声に応える形で「DB7ヴァンテージ」という新たなモデルをデビューさせた。何よりも注目すべきは、搭載される新開発となるコスワース製6V12気筒エンジン。アストンマーティン史上初となるこの12気筒エンジンは、1996年にフォードが発表したF1マシンをイメージしたフロントウィングが印象的なショー・モデル「インディゴ」にミッドシップで搭載されヴェールを脱いだエンジンで、基本的にはフォードのデュラテックV6(日本市場にも少数導入されたフォード・モンデオST220が搭載していた3DOHC24バルブエンジン)を縦に2基繋いだ設計をもったエンジンとなる。また車名に含まれる「ヴァンテージ」とは「アドヴァンテージ」に由来する、アストンマーティンが生産する、より高性能なモデルに用いられる伝統の称号で、スピード、パワー、そして類稀なるスタイリングの代名詞ともなる重要な名称となっている。変更を受けたエクステリアデザインでは、1950年代からのアストンマーティンのデザイナーであった、テッド・カッティングによるル・マン優勝車「DBR1」や「DP212/214/215」に用いられた円形のロードランプをモチーフとした、ウィンカー/ロードランプのコンビライトが採用され、大型化されたフロントグリル下のエア・インテークや、それに繋がるカタチで大きく膨らんだサイドスカート、リアバンパーが新たな特徴となっている。またインテリアのブラッシュアップもあわせて行われ、更に高いクオリティでの仕上がりを見せるモデルとなっている。搭載されるエンジンは、オールアルミ製の60°V12気筒DOHC48バルブとなりボア×ストローク89.0mm×79.5mmから5935ccの排気量をもつ。デュアルプロセッサー電子エンジン制御システムと10.3の圧縮比から最高出力420馬力/6000rpmと最大トルク54.5kgm/5000rpmを発揮する。このエンジンは僅か1500rpmにおいても85%のトルクを発揮するフラットなトルク特性をもち扱いやすさを考慮したうえに、12気筒エンジンの特性を活かしたクリーミーな回転感と、回転数に応じて伸びやかなパワーの盛り上がりをみせる爽快感を併せ持っている。開発にはF1での活躍を始め、多くのレーシングエンジンを手がけてきた英国の名門コスワース社が関与している。それだけにエンジンの材質は、強度、剛性、耐久性に配慮され、オイルジェット冷却ピストンや等長ステンレス製マニホールドなどレーシングエンジンの技術が余す所なく生かされている。組み合わされるトランスミッションは、6MTZF5ATとなっている。足回りは、4輪ダブルウィッシュボーン式+コイルとなり、前後ともにスタビライザーが装備される。ブレーキは4輪ともにドリルド・ベンチレーテッド・ディスクが装備され、テブス製ABSを備えたブレンボ製キャリパーが組み合わされる。サスペンション及びブレーキともにアップデートが図られており、フロント・サスペンションは新型アッパー及びロアー・ウィッシュボーンが採用されるとともに、前後のコイルスプリングのダンピング・レートも改められ、乗り心地とハンドリングが高次元でバランスされたものとなる。10本スポークによる新らしいデザインが採用されたホイールは、フロント8J×18インチ、リア9J×18インチとなり、245/40ZR18265/35ZR18サイズのタイヤと組み合わされている。インテリアは、エアバック内蔵型の3スポークステアリングを通して中央に2つの大径メーターが備わり右側のスピードメーターは300km迄数字が表記され(以前は280km/h)目盛は更に20km/h上まで確認出来る。6つのメーターがレイアウトされるメータークラスターはほぼ同じ印象となるがメーターのデザインは改められている。センターコンソール上部の2つの吹き出し口のあるエリアまでウォールナットパネルは延長され、エンブレムがレイアウトされるとともに、スイッチ類が変更を受け、デジタル式だった時計はアナログ式となり印象が一新された。コノリーレザーによるシートは、肩の部分が張り出した有機的なデザインのハイバックシートから、ヘッドレストが独立した、より一般的なスポーツシート形状に変更されている。センタートンネルにより完全にセパレートされたリアシートはヘッドスペースはじめ空間が不足気味の為、大人の乗車には適さないがGTとしては必要なエリアとなっている。全長×全幅×全高は4666mm×1829mm×1237mm、ホイールベース2590mm、トレッド前1520mm、後1520mm、車両重量1860kg、燃料タンク容量89、新車時価格1565万円となる。「DB7ヴァンテージ」の生産台数は2086台となっている。メーカー公表性能値はMTモデルは060mph(96.56km/h)加速4.9秒、最高速度185mph(297.73km/h)ATモデルは0100km/h加速5.1秒、最高速度165mph(265.54km/h)となっている。アストンマーティンでは、これまでベースモデルのエンジンをチューンナップして搭載する高性能モデルに「ヴァンテージ」という名称を使ってきた。「DB7ヴァンテージ」ではベースモデルの「DB7」とは全く異なる12気筒エンジンが搭載されての登場となり、各部のリニューアルと合わせて上級モデルというより、ニューモデルに近い印象となっている。ドアノブを引いてシートに腰をおろすと、美しくデザインされたメーター類や、古くから採用される伝統のコノリーレザーにより、スポーツカーとしては華やかなインテリアの仕立てにアストンマーティンを感じずにはいられない。キーを捻るだけでは始動しないエンジンは、センターコンソールのオーディオ右側にレイアウトされるエンジンスタートボタンを押す事が必要となる。「DB7ヴァンテージ」は、通常「Dレンジ」では2速発進となるが、僅か1500rpm85%のトルクを発揮するフレキシブルなエンジンにより、1.8トンを超えるボディを力強く加速させるには充分なトルク感を発揮しながら速度を上げていく。ギアが何速に入っていても、タコメーターの針が何回転を指していてもアクセルに僅かに力を入れる事でシュンッと素早いレスポンスを返し加速する。低回転でのアクセルのつきは非常に良く、踏めばレッドゾーン手前まで一気に吹ける感覚で、振動やストレスを感じさせずウルトラスムーズな回転感をもつ、これこそ12気筒の真髄といえるだろう。実用域では静かさが印象的なエンジン音は、回す程に官能的なサウンドに変化し4000rpmを超えるころには唸るような音質を聴かせてくれる。同じ12気筒でもフェラーリの突き抜けるような甲高いアグレッシブなサウンドに比べ、コスワース製となるアストンマーティンの12気筒は、何層にも深みを感じさせるノーブルなシンフォニーのように柔軟性を感じさせるものとなる。それでもドライバーが望めば鋭いレスポンスによりシャープに回転を上げながらのサウンドは、充分なパワーを実感できるスポーツカーならではのエンジンとなる。また、このエンジンに負けていないのがブラッシュアップされたシャーシ性能で、良好な乗り心地と洗練されたハンドリングが高い次元でバランスされている。単なるスポーツカーとしてだけでは無く、高性能GTとしても確立された「DB7ヴァンテージ」の性格は「フェラーリ456GT」のライバルとしての存在感を示している。これは歴史を振り返れば「フェラーリ250GT」と渡り合っていた「アストンマーティンDB4」以来の事とも考えられ、本当の意味でのアストンマーティン新時代、そして想像以上に良い形でアストンマーティンは21世紀を迎えたとも考えられる。アストンマーティンは「DB7」だけでなく、この「DB7ヴァンテージ」が誕生したことにより、この後「ヴァンキッシュ」「DB9」と後継モデルが産み出され、現代へと引き継がれていく。「ハンドメイド」だけにこだわり続ける事なく、新時代に対応出来たアストンマーティンだからこそ現代においてもブランド力を高く維持しながら、並いるライバルメーカーの中で埋もれずに古くからの伝統をもった英国のGTカーメーカーとして、輝き続けているのだろう