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Turbo
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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
Turbo
ボディタイプ
外装色
シルバーメタリック
年式
1975 年型
走行距離
63720km
乗車定員
5 名
サイズ
長 423 cm 幅 165 cm 高 141 cm
エンジン形式
排気量
1990 cc
馬力
170
トルク
24.5
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

クーラー・パワーステアリング・ETCが、装備されております。


1913年、カール・ラップとグスタフ・オットー(オットーサイクル・エンジンとも呼ばれる4ストロークの内燃機関を発明したニコラウス・オットーの息子)2人は、それぞれミュンヘンで飛行機ビジネスの夢を追いかけていた。1918年、それぞれが所有する会社が合併し、これがバイエリッシェン・モトーレン・ヴェルケ=BMWの起源となる。会社設立の翌年、早くもBMW社にとって初の世界記録樹立の機会が訪れる。9760mの高度に87分で到達した飛行機のエンジンとして搭載されていたのがBMW社製のエンジンだった。この時から、航空機のプロペラをイメージしたエンブレムが出来上がり、そこに使われる青はバイエルンの空を、白は雲を表現したものといわれている。その後1923年には、第一次大戦後のヴェルサイユ条約により、航空機製作を禁止された事で、BMW社はオートバイ・エンジン製作に方向転換する事になる。チーフエンジニアのマックス・フリッツが開発した水平対向2気筒のモーターサイクル・エンジン搭載によるオートバイ「R32」が作られ、現在のBMWモーターサイクルの製作につながるモデルとなる。1928年にはアイゼナッハ社という、ドイツ国内の自動車会社が身売りするという話が舞い込み、これを受けたBMW社は、ここから自動車開発にも取り組み始めた。1933年ジュネーブショーでデビューした「303」は、キドニーグリルを採用したBMW社製造による初の自動車となる。ラジエーターグリルは四角いのが一般的だった時代に、2分割するデザインを採用することで、BMW車として他と区別できるよう個性的なアイコンとなり、それは現代まで続く。1937年には直列6気筒クロスプッシュロッド1971ccエンジンをもつ、高性能車「328」が完成する。この「BMW328」はナチスの後押しを受けながらモータースポーツに参戦し、ミッレミリア、ベルリン-ローマ、アイフェルレースなどヨーロッパ全土で活躍し、BMW社の名前を世に知らしめる事となった。それから第二次世界大戦に突入し、敗戦によりBMW社は、航空機、2輪車、4輪車の製造を禁止されてしまう。1951年、そのダメージから立ち直り生産活動を再開したBMW社は、戦前同様に高品質の高級車による少量生産を貫こうとする。1952年に登場するサルーンの「502」はバロック・エンジェルという愛称をつけられる程のエレガントなスタイリングと世界初のアルミ・ブロックV8エンジンを搭載、後期モデルではディスクブレーキを採用するなど、贅沢で先進的な技術を誇った。しかし、人々の生活状態や経済状況に全く配慮していない高級車は販売を伸ばせず、BMW社の経営状況は悪化の一途を辿る。この状況からBMW社を救ったのは1955年から販売された、庶民の為の小さなキャビン・スクーター「イセッタ」だった。イタリアのイソ社が生産する「イセッタ」をBMW社がライセンス生産し、オリジナルより多くの生産台数を誇るBMW製「イセッタ」は、大ヒット商品となった。これに続いて自社のオートバイ技術を活かした「700」は、イタリアのカロッツェリア・ミケロッティがボディデザインを担当する2ドア・小型クーペで、BMW製オートバイ「R67」用の水平対向2気筒エンジンをリアに搭載するモデル。小型軽量で高性能だった為、モンツァ12時間耐久、ホッケンハイム6時間耐久、ニュルブルクリンクなどで好成績をおさめ、BMW社に再びモータースポーツへの復帰をもたらした。これを契機にBMW社は1961年、フランクフルトショーに於いて高級車「502」と小型車「700」の間のクラスの新型車を発表した。それがノイエ・クラッセ=新しいクラス“と社内でよばれた「1500」となる。ボディデザインは「700」に続きミケロッティが担当し、広いグラス・エリアと細いピラーをもち、ボクシーな先進の高剛性モノコック・ボディは、当時としてはモダンなデザインが施されていた。キドニーグリルが与えられたフロントフェイスは逆スラントノーズとなり、現在まで続くBMW車のイメージが確立されたモデルとなる。フロントにマクファーソン・ストラット、リアにセミ・トレーリングアームが採用された足回りも、その後、長らくBMW車に用いられ、1980年代までは世界のFR車の教科書ともいえるサスペンション型式をもっていた。搭載されるエンジンは新開発の「M115」とよばれるもので、当時のBMW技術者のリーダー、アレクサンダー・フォン・ファルケンハウゼンを先頭に、後に設立される「M社」の責任者となるパウル・ロシェはじめ、若き精鋭達による設計となり、頑強な鋳鉄ブロックと半円球燃焼室を備えるSOHCヘッドを載せた4気筒エンジンが搭載されていた。全てが、この当時の一歩先を行くエンジニアリングに満ちたノイエ・クラッセは、瞬く間にヒットし、BMW社の礎を築くとともに、モデル・バリエーションを加えながら、排気量アップを重ね、数々のモータースポーツシーンでも活躍を見せはじめた。19663月のジュネーブショーでコンパクトで軽量な2ドア・モデルを加えると、1968年には、このボディに2エンジンを搭載し大幅に性能アップが図られた「2002」がデビューする。2000ccエンジン・2ドアボディを表す車名をもつこのモデルは「羊の皮を被った狼」というニック・ネームをもち、1964年から始まったヨーロッパ・ツーリングカー・チャンピオンシップ(ETC)6869年と年間優勝を果たし、66年の「2000TI」での勝利と合わせるとBMW社は、ETCにおいて3度の勝利を獲得している。「ポルシェ911S」や「アルファロメオ ・ジュリアGTA」など強豪ひしめく中、BMW社が勝利を獲得出来たのは、先進の「ターボ過給技術」が活かされたからに他ならない。ピストン・エンジンをターボで過給する技術は1900年代初頭に始まり、航空機用としては1940年代に入る迄に完全に一般化され、ボーイング社のB17爆撃機などにも採用され、高高度飛行を可能としながら航空機用レシプロエンジンに最後の栄光をもたらした。BMW社は長らく航空機用エンジンメーカーとして活躍していた頃のノウハウを活かし、ETCにおいては「2002tii」のクーゲルフィッシャー製燃料噴射装置に加え、ターボチャージャーを装備し280馬力を発揮する「2002tik(k=コンプレッサー)」を参戦させ、タイトルを獲得する事に成功した。ポルシェ社が本格的にターボ搭載モデルの「917/10」をCan-Am選手権に投入したのは、1971年シーズンとなるのでBMW社がこの時代、ターボ過給技術のトップランナーとなる。モータースポーツの現場を実験の場として、この技術を市販車に反映させ開発されたモデルが「2002ターボ」となり、1973年フランクフルトショーでのデビューをはたす。そのエクステリアは、フロントバンパーが取り払われ、オイル・クーラーとタービンに冷却気を吸入するためのエア・インテークを備えた専用のエアダムが装備される。また前後フェンダーにはFRP製のオーバーフェンダーがリベットにより装着され、リア・トランクリッドにはウレタン製リア・スポイラーが備わり、ボクシーなボディながらも迫力のあるレーシーな佇まいが注目を浴びた。エアダムとボディサイドには「BMW M社」の前身となる「BMWモータースポーツ社」のインテリア・デザイナー、ウォルフガング・ゼーハウスによる「Mストライプ」がレイアウトされる。3色で構成される「Mストライプ」の、ブルーはバイエルンのBMWを、レッドはモータースポーツを、そしてパープルはその両者の融合を表現している。またエアダムにはそのストライプの上に車名の「2002」と「Turbo」の文字がミラー文字で表現され、このモデルの存在を強くアピールしていた。「2002ターボ」が搭載するエンジンはノイエ・クラッセ登場時に、開発された「M115」型エンジンの発展型となる「M31」型とよばれる水冷直列4気筒SOHCで、ボア×ストローク89.0mm×80.0mmから1990ccの排気量をもつ。パウル・ロシェがリーダーとなって開発されたこのエンジンは、6.9に下げられた(同排気量の2002tii9.5)圧縮比と、クーゲルフィッシャー製PL04機械式燃料噴射装置、それにKKK(kuhnle,kopp und kausch=キューネ・コップ&カウス社は現在ボルクワーナー・ターボシステム社に吸収合併されている)EB32G型ターボチャージャーを備え、最高出力170馬力/5800rpm24.5kgm/4000rpmのトルクを発揮する。ノン・ターボの「2002tii」からは、パワーで約30%、トルクで約35%の出力アップが図られている。市販車として初めてターボチャージャーを装備したモデルは、1962年、米国GMによる「シボレー・コルベア・モンツァ/オールズモビルF85ジェットファイア」といわれている。この時はメーカー・オプションとして「ターボ」が設定された上に、特筆する程のパワーアップが実現されていなかった事から、「2002ターボ」を実質、市販車初の「ターボ車」と表現される事がある。エンジンは進行方向に対して右に30°傾けて搭載され、組み合わされるギアボックスは標準は4MTとなり、オプションでクロスレシオの5MTが用意されていた。リア・ディファレンシャルにはLSDが備わり、ロッキングファクター40%という高めのロック率をもっている。足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+コイル、リア・トレーリングアーム式+コイルとなり、前後にスタビライザーを備える。サーボ・アシストを持たないブレーキはフロントにベンチレーテッド式ディスクが装備され、Ate4ポッドキャリパーと組み合わされ、リアはドラム式となる。タイヤサイズは4輪とも185/70-13サイズとなり、5.5J×13サイズのアルミホイールと組み合わされる。今回入荷した車両には、当時オプションだった貴重な6J×13サイズとなるマーレ製の鍛造アルミホイールが装備されている。インテリアは、ターボ・モデル専用の380mm径となる太めのグリップをもつ、3スポークのレザーステアリングを通して、ドライバー正面には3つのメーターを納めたメーターナセルが備わる。渋めの艶消しレッドのパネルで囲まれたメーター類はVDO製となっている。メーターナセル右側には、2連メーターが追加レイアウトされ、手前からVDO製の時計とブースト計になり、ターボ・モデルの専用装備となる。今回入荷した車両は、5MTが装備されている為、左手前に1速が位置するレーシング・パターンが採用され、ペダル類は、吊り下げ式では無く、3つともに床から生えるタイプとなる。シートサイドが深めとなる革で張られたレカロ製のバケットシートも、ターボ・モデル専用装備となり、ホールド感が高く長時間でのドライビングでも疲れの少ないものとなっている。大きめのグラスエリアと細めで内側への倒れ込みの少ないピラー類をもつキャビンは広く感じられ、ドライバーからの視界は全く申し分無い。後席のヘッドルームはやや少ないが、レッグルームには余裕が感じられる。全ての点で高水準となる「2002ターボ」のインテリアだが、フェイス・レベルのベンチレーションが無く、ドア内張のダッシュボードに近くに位置するダイヤルを回し、三角窓に頼らざるを得ない。しかし今回入荷した車両には希少なクーラーが装備されているのは、頼もしいアイテムとなる。全長×全幅×全高は4220mm×1620mm×1410mmで、ホイールベースは2500mm、トレッド前1375mm、後1362mm、車両重量1080kg、燃料タンク容量は70となっている。僅か2年間という製造期間に生産された台数は1672台となる。当時「2002ターボ」は、リベットにより装着されたFRP製のオーバーフェンダーが日本の運輸省では認可されず、同型のスチール製のフェンダーを溶接しボディと一体としたモデルが輸入元により作られた。その輸入元となるバルコム・トレーディングでは、1974111日から晴海の国際貿易センターで開催された「国際モーターショー東京」で、このモデルを展示発表し、1975年の1年間のみで117台が販売された。メーカー公表性能値は、0100km/h加速6.9秒、0400m加速15.3秒、最高速度211km/hとなる。カーグラフィック誌による実測データは、5MTモデルにより、0400m加速14.4秒、01000m加速27.3秒となっている。ホールドの良いバケットシートに腰を下ろして、しっかりとしたドアを閉めると高い密閉感が感じられる。キーを捻りエンジンをスタートさせるとノーマル・アスピレーションモデルとは異なる、印象的な低音で低めのエキゾーストノートが響く。重めのクラッチを踏み込み左手前の1速を選択し、クラッチをエンゲージして走り始めると、低速では、本来ステアリングの重さが気になるかもしれないが、今回入荷した車両にはパワーステアリングが備わりアシストの恩恵にあずかれる。街中のスローペースでは、この時代のスポーツモデルらしく、重めの操作系に気を使わされる部分もあるが、少しペースを上げてエンジン回転数が3000rpmを超えた辺りから、スゥーッと前方へ押し出されるとともに、軽快さを示しはじめターボ効果が感じられる。信頼性と耐久性を考慮してブースト圧を0.56バールと低めにセッティングされているので、蹴飛ばされるような圧倒的な加速とはならない。そのぶんターボの効かない回転域でも粘り強く60km/hの、5速、2000rpmからでもスムーズに加速を受け付けてくれる。それでもフルスロットルを与えると、30004000rpmからブースト計の針を敏感に反応させながら6400rpmのリミットまで、容赦なく迫力ある加速を味うことができる。近代の、緻密な制御系による洗練されたターボ・エンジンとは異なり、低回転からトルクが盛り上がり、ただ速度を増すだけではなく、ドライバーがフル・スロットルを繰り返したくなる魔力というか強い個性と中毒性をもっている。フル・パワー時でも、足回りは充分なスタビリティを保ち、基本的にはニュートラルなステアリング特性をしめす。ウォーム・ローラー式のステアリングはスピードを上げるに従い、より正確性を強調し、ワインディングロードを駆けるような時には、好ましいものとなり路面感覚を良好にフィードバックしてくれる。サーボ・アシストを持たないブレーキは、踏んだ分だけ反応を示し、必要な時には確実な減速が可能となる。ハイ・アベレージでの走行に於いてもリアがだらしなくブレイクすることなく、しっかりとトラクションが確保されたものとなる。近代のBMW車のようなラグジュアリーなフィーリングとは異なり、よりダイレクトでスポーティな乗り味となっている。低速域では少し固く感じられる足回りも速度を増すにつれ、しなやかさを感じさせハイスピード・クルージングでは高い直進性を実感出来る。全方向に視界も良くコンパクトで軽量なボディに、個性の強いエンジンを搭載する「2002ターボ」は、現代においても多くの高性能車達とは一味違った楽しみを存分に感じさせてくれる、貴重なスポーツセダンとなっている。