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センターロック
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メーカー
フェラーリ
ミッション
マニュアル
グレード
センターロック
ボディタイプ
外装色
レッド
年式
1987 年型
走行距離
600km
乗車定員
2 名
サイズ
長 448 cm 幅 197 cm 高 48 cm
エンジン形式
排気量
4943 cc
馬力
380
トルク
48.0
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
並行輸入
内装色
ベージュ
燃料区分
ガソリン
幌色

エンジンをコックピット背後に置くフェラーリ初のロードモデル、ベルリネッタ・ボクサーは、それまでのどのフェラーリよりも長く生産されていた。その後継車に、フェラーリ神話の中でも最も成功したスポーツモデルの名前となる「テスタロッサ」が与えられた。イタリア語で「テスタ=頭」「ロッサ=赤」をそれぞれ意味する。かつての「250テスタロッサ」の3V12エンジンのカムカバーが赤く塗られていた事にちなんだこの名前は、その名前を引き継ぐのに相応しい実力を持った当時のフラッグシップとなり、そのエンジンのカムカバーもまた赤く結晶塗装が施されている。主要なメカニカル・コンポーネンツのレイアウトはBBからの流用とされたが、BB設計時に弱かった空力性能を新設されたピニンファリーナ社の風洞設備を活用し、大きく向上させCd0.36に加え、リフトに関してもフロント0.01、リア0.1という数値を実現し、その性能に磨きをかけた。「テスタロッサ」のデビューは1984年パリサロン、そのボディデザインは古くからフェラーリ・ロードモデルを手掛けてきたカロッツェリア・ピニンファリーナ社によるもの。「ディーノ」「デイトナ」「BB」と、そのデザインに手腕を振るったレオナルド・フィオラバンディの作品となる。BBの抑揚の効いたクラシカルなデザインに対し、世代交代とも言うべきモダンでウェッジの効いた、新しい時代を感じさせるデザインでの登場となった。特徴的な5本の水平フィンに覆われた、大型のサイド・エアスクープはリアにマウントされたラジエーターに空気を送る為のもの。フロント・ラジエーターだったBBでは、その熱によりコックピット環境に影響を与え、ラゲッジスペースの確保もままならなかった。「テスタロッサ」ではラジエーターを移設することで、フロントに180のラゲッジスペースを確保するとともに、熱に影響されないコックピット環境に改めコンフォート性を充実することに成功している。フロントエアダムに残されたエアダクトは、オートマチックエアコンのコンデンサーとフロントブレーキ冷却用として活用されている。「テスタロッサ」のシャーシはそれまでのフェラーリ同様に、長らく用いられてきたクロモリ鋼管による、チューブラー構造のフレームにより、高い剛性と軽さを確保している。ボディパネルはアルミ製となり、製造はスカリエッティ社で行われる。搭載されるエンジンはコックドベルトにより駆動される、基本的にはBBから引き継がれたF113A型とよばれるオールアルミ製180°V12気筒DOHCエンジン。「テスタロッサ」に搭載するにあたり、新調されたのは各気筒4バルブ化されたシリンダーヘッドとなり48バルブ・エンジンに進化した。排気バルブには、ガスタービンのブレードなどに使用される高熱に強いニッケル合金「ニモニック」が採用されている。燃料供給は片バンクずつ2つのボッシュ製Kジェトロニックが用いられる。(今回、入荷した車両は87年式となっておりKジェトロニックにECUと各センサー、空燃比調整用のプレッシャーアクチュエーター、燃圧を安定・維持させるプレッシャーレギュレーター等を追加した、KEジェトロニックを装備している。これによりエンジン調整がKジェトロニックモデルより容易になっている。またエンジン型式もF113B型となる。)点火装置は、高精度のマレリ・マイクロプレックスが装備されていた。ボア・ストロークは82mm×78mmでシリンダーにはニカシル・コーティングが施されている。総排気量4943ccで圧縮比9.2と数値的にはBBと共通となるが、軽量化技術の進化にともないエンジン単体で20kgの軽量化が実現されている。最高出力390馬力/6800rpm、最大トルク50kg/4500rpmを発揮し、BBより50馬力と4kgmの性能アップがはかられた。パワーアップにともない、クラッチディスク径は1インチアップして9.5インチと大径化された。BBと同様、エンジンの下にフェラーリ自製の5速トランスミッションとLSD付きディファレンシャルを配置する、2階建てパワートレイン方式となっている。これは「ロードモデルには全く関心を持たない」といわれた創業者エンツォ・フェラーリの指示のもと実現したパワートレインレイアウトとなっている。70年代を通じてF1黄金期を飾ったフェラーリF1312シリーズと同じ型式のパワーユニットを、デイトナ後継の12気筒ミッドシップモデルに搭載するよう、エンツォが開発陣に指令を出した事が話の始まりとなっている。運動性能確保の為、ショートホイールベースは欠かせない条件のもと、居住性にもエンツォは妥協を許さなかった。エンジン単体で全長70cm、クラッチハウジングまで含めれば1mを超す12気筒を、普通に縦置きすればホイールベースは自ずと長くなってしまう。これらの条件を同時にクリアするのは、困難を極めた。この難題に取り組んだのは「308シリーズ」から「テスタロッサ」の時代まで車両開発を担当したエンジンスペシャリスト、トリノ工科大卒のジュリアーノ・デ・アンジェリスと、フェラーリ社創業開始前からエンツォのもとで働くチーフ・エンジニア、アンジェロ・ベレイを中心としたチームだった。様々なネガ要素をやり繰りする中、やっとの思いで誕生した2階建てパワートレインレイアウト。長距離、長時間のテスト走行が繰り返されながら、何とか手懐けられ365BBからF512Mに至る180°V型ミッドシップシリーズの要となった。マラネロ工場で手組みにより作られるこのパワートレインは、サスペンションユニットとブレーキユニット、マフラーとともにサブフレームに組み込まれ、テスタロッサ本体のチューブラーフレームにボルトで剛結されている。足回りは、フロント・リアともにダブルウィッシュボーン式となり共にスタビライザーを備える。またフロントに1本、リアに2本ずつのコニ製ショックアブソーバーが採用されている。ブレーキは、フロントに309mm、リアに310mmのベンチレーテッドディスクを装備し、それぞれATE4ポッドキャリパーが備わる。ホイールはクロモドラ製となりフロント8J×16インチ、リア10J×16インチのセンターロック式となり、組み合わされるタイヤサイズはフロント225/50VR16、リア255/50VR16となっている。インテリアはエクステリアと並びBBから大きく変化したエリアとなる。伝統のコノリーレザーに覆われた、モダンなコックピットは、スポーツカーらしくスパルタンなつくりとなっていたBBから、ラグジュアリー方向にシフトしグランツーリスモともよべるものになったといえるだろう。ホールド性の高いシート背後には、カバンなどを置けるラゲッジスペースが新設されリアウィンドウがヘッドレストから、より後方に配置されるようになったので、室内空間にゆとりが感じられる。またフロントボンネットの下にも180のトランクスペースが新設されている。スポーティーなMOMO3スポークステアリングのむこうにはメータークラスターが備わり、大径の320km/hまで刻まれたのスピードメーターと、6750rpmから波線表示となる1rpmまでのタコメーターがおさまる。2つのメーターの間には小径の油圧と水温計、更にシフトレバー前方にも油温と燃料計、デジタル時計が配置されている。メーター類のレタリングはオレンジ色となり、全てヴェリア製となっている。ゲートを刻まれた丸いノブをもつシフトレバーが備わるセンターコンソールは、空調系のノブやバースイッチが配置され、スマートなデザインと色使いにより新しさを感じられるものとなっている。パーキングブレーキレバーは、ドライビングシートの外側、ドア寄りに配置されフライオフ式が採用されている。全長×全幅×全高は4485mm×1876mm×1130mm、ホイールベース2550mm、トレッド前1518mm、後1660mm、車両重量1506kg。前後重量配分40:60、燃料タンク容量115、生産台数7177台。新車時ディーラー価格は2430万円となる。メーカー公表性能値は、0100km/h加速5.8秒、01000m加速24.1秒、最高速度290km/hとなっている。カーグラフィック誌による実測データは日本仕様(380馬力/48kgm)による1986年計測のデータで、0100km/h加速6.0秒、0400m加速13.8秒、01000m加速24.8秒。最高速度は275.2km/hとなっている。「テスタロッサ」のドアを開く為のドアハンドルは、ボディ表面に見当たらない、ホンの少しでも空力を良くしたかった為だろうか。ドアにあるキーホールの丁度その下あたり、サイドフィン上部の内側に付けられている。広いサイドシルをこえて初めてドライバーズシートに腰を下ろすと、その目線の低さに驚くかもしれない。これが多くのフェラーリの着座位置となり、その直系となるF1マシンをイメージさせるところとなっている。キーを差し込みスターターを回すとフェラーリならではのクゥーッというスターターの連続音に続いて、エンジンが始動し低い唸りのアイドリングが始まる。インジェクション装備となったフェラーリ12気筒の始動は劇的に確実で、手間のかからないものとなった。中央よりに配置されたABCペダルの、クラッチペダルは軽めとなり、丸いシフトノブをゲートに沿って1番左の列の手前、1速に入れゆっくりクラッチをエンゲージすればアイドリングのままでもスタート出来る。5エンジンの低速トルクは充分となっている。フェラーリのギアボックスが温まるまでは2速は抵抗があって入らないので、1速から3速につないで、焦らずに11のエンジンオイルが機能するまで暖気運転をするのが良いと思う。スピードが少しでも出ていれば、ノンパワーのステアリングも適度な重さとなる。エンジン回転数を上げずに走らせていると、エンジン音は低く重たいものに感じられる。それが3500rpmを過ぎるあたりから、徐々に力強さを漲らせた音に変化する。そして5000rpmを超える頃には音質が揃いながら澄んだ音色になり始める。そこからレッドゾーンに差し掛かるまで、この世のモノとは思えないミュージックとよばれる程の音が味わえる。「テスタロッサ」のエンジン音は誰をも魅了する自動車界の世界遺産といえる。この音を聴く為に全てのパーツが存在し、速さやデザインはその音に含まれる要素となってしまうかもしれない。しかしスポーツカーメーカーが製造するだけあってワインディングロードにおいての楽しみも疎かになってはいない。低いポジションで幅広いボディを持つスーパースポーツは、視界が良くないイメージがある。その中でも長くデザインを担当してきたピニンファリーナ社のデザインは前方はもちろん、斜め後方や後、またミラーによる確認がしやすく外から見ているより、思いの外走らせやすく感じられるようになっている。ステアリングレシオはそれ程クイックでは無いが、全ての操作系はフェラーリ伝統の頑強なクロモリフレームに直結していて剛性感あふれるフェラーリならではの味わいを持っている。強力なダンピングを駆使して走り抜けるワインディングロードでは2速と3速を使い分け12気筒のミュージックを存分に響かせ、堪能する事が出来る。クルマ好きの悦楽の極みのひとときとなる事だろう。「フェラーリ・テスタロッサ」はこの後も「512TR」「F512M」と結果的に「ベルリネッタ・ボクサー」より更に長期にわたり生産されたモデルとなった。その間カリスマ創業者を失い、その後をルカ・モンテゼーモロが引き継ぐまでの不安な空気の中、フェラーリの看板を支え続けた。エンツォ・フェラーリが自らの指示により理想を具体的に形にした「テスタロッサ」は今に続くフェラーリの中で最もフェラーリらしいモデルと言えるかもしれない。