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2.4
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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
2.4
ボディタイプ
外装色
ホワイト
年式
1973 年型
走行距離
不明
乗車定員
4 名
サイズ
長 427 cm 幅 162 cm 高 128 cm
エンジン形式
排気量
2341 cc
馬力
140
トルク
20.5
車検
令和6年9月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
中古並行輸入
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

「ポルシェ911」がタイプ「901」という車名で912日に始まったフランクフルトショーでデビューした1963年。スポーツカーの世界では多くのクルマが戦後からの第二世代というべき新型へのモデルチェンジを果たしつつある時期であった。イギリスでは「トライアンフTR-4」「MG-B」「ジャガーEタイプ」「ロータス・エラン」などが登場し、イタリアではアルファロメオ が「ジュリア・スプリントGT」をデビューさせ、フェラーリは「250LM」と2+2ボディをもつ「330GT」という2台を発表していた。フランスからは史上初の市販型ミッドシップGT「ルネ-ボネ・ジェット」が登場、ドイツではメルセデスベンツが「300SL/190SL」に代わり「230SL」を発表。日本では一足先に発売された「フェアレディ1500」に続き「ホンダS500」が市販開始となった。まさにスポーツカー百花繚乱の時代、と言えるかもしれない。日本での「ポルシェ911」のお披露目は1965515日に東京プリンスホテルで行われ、デビューしたばかりの新型4気筒搭載モデル「912」を伴ってという形になった。初期型「911」は1967年式まで、大きな変更を受けずに生産され「0シリーズ」とよばれている。それ以前のモデルとなる「356SC」の影響と味わいをもちながら2130馬力の空冷フラット6エンジン搭載により130km/h以上での高速クルーズでも高いスタビリティを見せた。しかし、急なスロットルオフは直進安定性に影響を与え、タイトコーナーではオーバーステア傾向に注意が必要とされた。1968年からの「Aシリーズ」からは、高価となってしまった130馬力の標準モデル「911E」の廉価版として「911T」がラインナップされる。車名の「T」は「ツーリング」の頭文字とされコストダウンの為シリンダーヘッドはアルミとスチールによるバイラル構造では無く、鋳鉄製とされた。8.6という低めの圧縮比(標準型911E9.0)をもち、おとなしいバルブタイミングにより、110馬力となったが、バルブ径とポート径は160馬力を発揮する「911S」と同サイズとなる大きなものを採用した。これは「911T」の簡素な軽量ボディを、ポルシェがレースのホモロゲに使用する事を目論んでいたからといわれている。また2時代のピーキーだといわれた「911」のラインナップの中では「911T」の、比較的穏やかなエンジン特性は低速トルクも豊かで扱いやすく、日常使いにアドバンテージを持っていた。1969年から「Bシリーズ」となった「911」はロングホイールベース化と燃料噴射装置の導入という、大きな変更が施される事となった。フロアパンとエンジン/ギアボックスの搭載位置はそのままに、ハーフシャフトのジョイント容量を増やし後退角を付けサスペンションアームを延長して、ホイールベースを従来の2211mmから57 mm延長、2268mmとしオーバーステアなどシビアな操縦性を改善する為のものとなる。同時により太いタイヤを装着出来るように、前後フェンダーに僅かなフレアがつけられた。また、リアヘビーを是正する方向で、クランクケースがマグネシウム合金化され「911S」ではアルミ製エンジンフードが採用された。燃料噴射装置については「カレラ6」などレーシングカーからの経験により、ボッシュ製6プランジャー式メカニカル・インジェクションが用いられる。これはアメリカでのエミッションコントロール(70年にマスキー法が可決される)対策でもあった。「911T」だけはウェーバーキャブレターが装備され、標準モデルとなる「911E」と「911S」にはインジェクションが装備された。またエミッションコントロールへの対策は排気量アップにも及び、1970年の「Cシリーズ」からはボアを4mm広げることでエンジン排気量を2.2とし、クラッチ径も10mmアップされ「911T」のブレーキはソリッドディスクからベンチレーテッドディスクとされた。1972年の「Eシリーズ」からは更なる排気量アップが施されフラット6のエンジン排気量は2.4となった。これはストロークを66mmから70.4mmに延長したことによるもので、あわせてクランクケース形状の見直し、コンロッド及びコンロッド・ベアリングの寸法変更が行われ、従来「911S」のみに採用されていたアルミ鍛造ピストンが、全モデルに採用されるようになった。また排気量アップに伴い各モデルとも大幅に圧縮比が下げられ、排ガス中の窒素酸化物を軽減させるとともに、当時ヨーロッパで進む鉛公害に対する無鉛ガソリン化の動きにも歩調を合わせたかたちとなった。圧縮比は「911T」「911E」はともに1.1下げられ、それぞれ7.58.0に「911S」に至っては1.3も引き下げられ8.5となり2.2エンジン時代の「911T」の8.6を下回る数値となってしまった。しかし、今まで不足気味だと指摘されていた低速トルクは、排気量アップとロングストローク化により改善が見られ、ドライバビリティの向上につながっている。2.4エンジンに組み合わされる5速ギアボックスは新型となる915型とされ、従来の、H型の左側手前に1速を配するレーシングパターンから、H型右側前方にトップギアをもつ通常パターンに変更された。これにより渋滞時の使い勝手は低速トルクアップと合わせて、大幅に改善されたことになる。また、右後輪軸の後ろにあったオイルタンクは、後輪軸前に移す事でリア荷重をより車体中央に集め、同時にホイールベースも3mm伸ばされ2271mmとされた。オイルフィラーはこの年式に限り右ドア後方に設置されたが、ガソリンフィラーと間違えられる事と、北米市場でのサイドインパクト対策により、1973年の「Fシリーズ」からエンジンルーム内に戻されている。この「Fシリーズ」からヘッドライト下にレイアウトされるホーングリルやウィンカー周りがメッキ仕上げからブラックフィニッシュに変更されたが、その他の仕様は「Eシリーズ」から継承されたものとなっている。今回入荷した車両は1973年型「911T」となり空冷SOHC水平対向6気筒でボア・ストローク84.0mm×70.4mmから2341ccの排気量をもつ。ボッシュKジェトロニック燃料噴射装置と7.5の圧縮比から140馬力/5600rpm20.5kgm/4000rpmのトルクを発揮する。組み合わされるトランスミッションは、72年型(Eシリーズ)から新たに採用された14速でHパターンとなる915型とよばれる5MTと、2ペダルで、自動クラッチの装備された925型とよばれる4速「スポルト・マチック」が設定されていた。これは60年代にポルシェとザックスが共同開発した、ギアレバーに触れるとクラッチが切れてギアチェンジが可能となる、セミオートマチックシステムで、フォルクスワーゲン・ビートルにも採用されたものとなる。足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+トーションバー、リア・トレーリングアーム式+トーションバーとなっている。ブレーキは前後ともにベンチレーテッド・ディスクが装備されるが、サーボの備えは無く、それなりの踏力は必要とされるタイプとなる。高い信頼性をもち、その踏力に応じて斬進的に確実な効きを示すものとなっている。ホイールとタイヤサイズは、本来6J×15サイズのアルミ鍛造によるフックス製の純正ホイールに185/70VR15サイズが組み合わされるところだが、今回入荷した車両には195/60R15 88Hサイズが装備されている。インテリアは現代まで続く「ポルシェ911」にも通じるメータークラスターを持ち、ステアリングを通して中央に大径のレブカウンターが配置される。レブカウンターのレッドラインは63006600rpmをに置かれ、その右側には250km/hまで刻まれたスピードメーターが配置される。空冷時代のポルシェ・エンジンは精密機械に例えられ、オイルの管理はとても重要となる為、レブカウンターの左側には油圧、油温、油量と3つのメーターによりオイルの情報が正確に伝えられる。装備されるメーター類はともにVDO製となっている。「911」伝統となるキーシリンダーはステアリングポストの左側に位置し、黒基調となるインテリアは整然として見える。細目に立ちあがるピラー類により、全方向とも視界は開けたものとなり、室内のタイト感やボディサイズ感も併せて「ポルシェを着る」と表現される程、ドライバーに馴染みやすくスポーツカーの定番といわれる由縁となる。ウィンドシールドをとおしてドライバーズ・シートから見えるヘッドライトの峰は「911」ならではと言える、格別な眺めと言えるものになっている。全長×全幅×全高は4163mm×1610mm×1320mm、ホイールベース2271mm、トレッド前1360mm、後1342mm、車両重量は1110kgとなる。燃料タンク容量は62で、最小回転半径は5.35mとなり、新車時ディーラー販売価格は、スタンダードの「911T」が425万円、アルミホイール、パワーウィンドウを含む「911Tデラックス」で485万円となっている。1973年式「911T」の生産台数は3838台となっている。メーカー公表性能値は「911T」の最高速度は205km/hとなり、同年式、同排気量の「911E」は220km/h911S」は230km/hとなっている。1972年から新たに採用された915型ギアボックスは、従来の1速がHパターンの左側手前にあるレーシングパターンから、標準的な14速でHパターンとなるギアレバーをもち、2.4化されたエンジンは、それまでのポルシェ各モデルに比べ驚く程の柔軟性を持つことにより、市街地での運転をはるかに容易なものとしている。低速時でも1速を多用する場面は少なく、1速は発進専用とし60km/hまでの市街地においても、3速どこらか4速さえ使えるくらい低速トルクは強化されている。クラッチ、ギアボックスは作動も軽くスムーズで四方に開けた視界によりドライバーへの負担が軽いのもポルシェならではといえるだろう。これは市街地のみならず、長距離を高速移動する場合にも当てはまる。高速でのスタビリティもリア・エンジンのわりには高く、ステアリングを軽く保持するだけで、横風の影響も少なく直進することが出来る。但しウェットな路面では軽い前輪がアクアプレーニングを起こすことを念頭に置き、潜在的な弱点として注意を要するに越したことはない。ハンドリングは多くのドライバーが体験する通常のコーナリングにおいては、ニュートラルと感じられるだろう。あまりにも安定しすぎるのでオーバースピードでコーナーに侵入した時に、スロットルを急に閉じる、或はブレーキを踏むと、急に荷重の減少した後輪は突如グリップを失う。咄嗟にカウンターステアを切り、同時に適度にスロットルを開けリアを安定させるのがスピンを防ぐ方法となるが、鋭い反射神経、的確な判断と経験が必要になるといわれている。ポルシェ「911」ならではの挙動であり、様々なアドバンテージを持つリア・エンジン車ゆえの唯一の弱点ともいえるものであり「911」登場時から数々の対策が施されている。このことからポルシェほど「スロー・イン、ファースト・アウト」の原則に従い、しっかりとコーナー手前で、効き味鋭く信頼性の高いブレーキでスピードを抑え、適度なスロットル開度を保ってコーナーを回り、出口に向かってフルパワーをかけるのが最も安全確実となる。クイックで軽く、極めて正確なステアリングは軽いキックバックはあるが路面感覚を確実に伝えてくれるものとなっている。変わりゆく時代の流れの中で空力付加物を一切もたないプレーンな「911T」のボディスタイルは「911」誕生時の、シンプルでソリッドな不変の魅力をたたえるものとなっている。オートマチックトランスミッションの高性能化や多様化の中でスタンダードとなるマニュアルトランスミッションは、ダイレクトな3ペダルとマニュアルシフトを操り、レスポンスの良いエンジンによる、ドライバー自身が走らせる楽しみを思い出させてくれるものとなる。中でも「911T」は、その実用性の高さとアンダーパワーゆえの安全マージンを併せもつことで「911」デビューには、最良の選択肢のひとつとなっている。クラッシックとよばれる時代の「ポルシェ911」は、そのサイズ感と同様にライトウェイト感覚で走らせる事が出来、高いスピードに頼る事なく、しっかりとスポーツカーをドライブしている味わいを感じられる貴重な存在と言えるだろう。