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ザガードビアルベーロ
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メーカー
フィアット
ミッション
マニュアル
グレード
ザガードビアルベーロ
ボディタイプ
外装色
レッド
年式
1959 年型
走行距離
不明
乗車定員
2 名
サイズ
長 445 cm 幅 136 cm 高 112 cm
エンジン形式
排気量
747 cc
馬力
57
トルク
車検
令和6年9月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
中古並行輸入
内装色
ベージュ
燃料区分
ガソリン
幌色

「アバルト750レコルトモンツァ・ザガートビアルベーロ」は、それまで数々のレースで良い成績をおさめ、アバルト社の名前をイタリア国内に知らしめた「750ザガート」の後継車といえるモデルとなる。車名にある「アバルト750」が示すとおり成功作となった「750ザガート」のシャーシを基本としながら、「レコルトモンツァ」と「ビアルベーロ」がこのモデルのキーワードとなる。アバルト社は自動車の性能向上が著しかった当時、世界中の自動車メーカーが挑んでいた速度記録への挑戦を開始していた。一瞬だけの最高速度とは異なり、数時間連続しての平均速度を競うもので、高い高速耐久性とエンジンパワーのみならず、総合性能が問われるハイレベルなチャレンジとなる。この速度記録の為にアバルト社は新しいエンジンを製作する事になり、実績のある「750ザガート」のOHVエンジンをベースに、DOHC化しパフォーマンスアップを考えた。この「DOHC」が車名にある「ビアルベーロ」となり「ビ」は「複数」をあらわし「アルベーロ」は「カムシャフト」すなわち「ツインカム=DOHC」を表現するイタリア語となっている。「750ザガート」のエンジンは、フィアット600のエンジンをベースとしながら排気量を拡大し、フェラーリV12エンジンの設計で知られるジョアッキーノ・コロンボに依頼して設計されたクランクシャフトを採用していた。そこでDOHC化にともない、再びコロンボを設計者として招き、DOHCヘッドの設計を依頼することとなった。こうして完成したのがティーポ221型とよばれる「DOHC=ビアルベーロ・ユニット」となる。このティーポ221型エンジンを搭載した流麗なシングルシーターのレコードカーは、ピニンファリーナデザインとなり、エンジンパワーを最大限活かす為、空気抵抗を極端に低減させたフォルムと軽量化が施されていた。そして19578月、F1イタリアグランプリに現在も使用されるモンツァ・サーキットのオーバルコース(こちらは現在は使用されていない)を使っての速度記録への挑戦が行われた。その結果、500750ccのクラスHというカテゴリーで3時間で平均197.826km/hという世界記録が樹立される事となった。これが「レコルト=レコード=記録」となり、このモンツァで獲得した世界記録にちなんで「レコルトモンツァ」が車名に引用されている。アバルト社のビアルベーロ・ユニットを搭載した「750ザガート」の後継車「750レコルトモンツァ・ザガートビアルベーロ」は1958年のパリサロンでデビューをはたし、次なる挑戦を始める事となる。「750レコルトモンツァ」のボディは引き続きミラノのカロッツェリア・ザガートが担当したが「750ザガート」の特徴となっていたダブルバブルルーフとそれにシンクロしたエンジンフードのツインスクープは採用されなかった。そのかわり柔らかなルーフラインから続く丸い形状のリアデザインをもち、こちらも魅力的なフォルムとなっている。「750ザガート」同様にアルミ製のハンドメイドとなるボディは軽量で空気抵抗を低く抑えたものとなり、パワーアップしたビアルベーロ・ユニットのパワーを存分に発揮できるものとなっている。「アバルト750レコルトモンツァ・ザガートビアルベーロ」搭載されるティーポ221型エンジンは、水冷DOHC4気筒でボア・ストロークは61mm×64mmとなり、747ccの排気量と9.7の圧縮比をもつ。2本のカムシャフトは二段掛けの複列ローラーチェーンで駆動され、エンジンブロックを車体後部から見て、向かって左側の手前にチェーンテンショナーの突起を備える。その奥には、いかにも抜けの良さそうなエキゾースト・マニホールドが見えて、出来る事ならブロックの右側にキャブレターを配し、クロスフローにしたい所だったが、ラジエーターシェラウドとウォーターポンプに遮られ出来なかった。それでも諦めきれず2本のカムシャフトの間にインレットポートを備え2基のダウンドラフトウェーバー32DCL3を配置している。最高出力は57馬力/7000rpm、最大トルクは7kgm/5000rpmを発揮する。このビアルベーロ・ユニットは当時、生産が需要に追いつかず、生産された「750レコルトモンツァ」の35%の台数にしか搭載出来なかった、とても貴重な存在となっている。残り65%の車両には、OHVとなるモノアルベーロ(シングルカムシャフト)・ユニットが搭載され出荷される事となった。ビアルベーロ・ユニットと組み合わされるトランスミッションは4速マニュアルトランスミッションとなっている。足回りは「750ザガート」と共通、という事はフィアット600の型式を流用したものとなる。前は独立ウィッシュボーン+横置きリーフスプリング、後ろはスウィングアーム+コイルスプリング+油圧ダンパーを備え、ブレーキは4輪ドラム式となっている。タイヤサイズは前後とも5.30-12となる。インテリアは細身で大径のアバルトオリジナル3スポークステアリングが装備され、それを通して正面にメータークラスターが置かれている。そこにはアバルトの名前が入った数字のレタリングが美しい、イェーガー製のタコメーターを中心に、右にスピード、左に水温・燃料・オイルのコンビメーターが配置される。左右シートに挟まれたシフトレバー後方には、スターターとチョークのコンビレバーがあるのは、「750ザガート」と共通となっている。ボディサイズは全長×全幅×全高が、3470mm×1350mm×1140mmとなり、ホイールベースは2000mm、トレッド前1150mm、後1160mm。車両重量は570kgとなっている。公表性能値は、最高速度が「750ザガート」の150km/hから30km/h高くなり、180km/hとなっている。1958年に発表された「750レコルトモンツァ・ザガートビアルベーロ」は「750ザガート」の後を追う様に様々なレースに参戦した。1959年イタリア国内のモンツァ12時間耐久レースは勿論、海を渡り北米のセブリング12時間レースや、その2週間後のデイトナ・スピードウェイでのクラス優勝など、好成績をおさめイタリアのみならず、全世界にアバルト社の名前を知らしめる事となった。「750レコルトモンツァ」は軽量ボディとビアルベーロ・ユニットの高性能化により、各国のレースシーンで活躍を見せた訳だが、このツインカムという新しいアイテムにより、アバルト社は更なる進化を見せていく。750ccの排気量は850ccを経て、1963年には1000ccに拡大され「1000ビアルベーロGT」にまで続く。そしてこのモデルまで採用され続けているのが、「フィアット600」のシャーシ。元はフィアット社のダンテ・ジアコーザ技師が開発した633cc20馬力足らずのエンジンを搭載する車用だったはずのシャーシ。開発時点でどれだけの発展を見込んだクオリティで設計されていたのだろうか?「750ザガート」から「1000ビアルベーロGT」までホイールベース、前後トレッドは不変のままで、エンジンパワーは「フィアット600」から「1000ビアルベーロGT」まで、なんと5倍にもアップされている。その上、その進化の過程で数々のレースに参戦しクラス上位の成績を残し続けたというのは、恐るべき事実。ダンテ・ジアコーザ技師とアバルト社の、まさに偉業と言えるだろう。現在の「アバルト500」のオプションパーツの中にハイパフォーマンス・エキゾースト・システムが存在する。そのパーツに「レコルトモンツァ」と命名しノスタルジックに創業当時、アバルト社がエキゾーストシステムの製造販売をしていた頃を偲ばせるが、クルマにとっての「音」、「サウンド」はとても重要だと最近特に思う。「速さ」や「フォルム」と同じ様に個性、そのクルマを表現するものと充分なりうる。アバルト社が世に送り出したクルマ達は、小さくてもどれも全く隙のない個性の塊の様な、存在感溢れるクルマばかりであった。