サイズ
長 454.0 cm 幅 190.0 cm 高 129.0 cm
[オプション装備]
ラバオレンジ・アルミニュウムペダル・フロアマット・ライトデザインパッケージ・ラバオレンジロールゲージ・90L燃料タンク・スポーツクロノパッケージ・セラミックコンポジットブレーキ・フロントリフトシステム・フロントウィンドグレーティント・LEDメインブラックヘッドライト・バックモニターカメラ・ETC
ポルシェにおける「RS」とは、1950年代からモータースポーツ直系のモデルだけに与えられ「レン・シュポルト=レーシング・スポーツ」を意味するその2文字は、ラインナップにおいて頂点に君臨するハイエンド・ロードモデルを示す称号となっている。「911」において「RS」のはじまりは、1972年の秋に、ナローボディ時代の最後を飾る1973年モデルとして登場した、当時のグループ4ホモロゲーション用モデル「カレラRS」となる。この「RS」と「GT3」の称号が重ねて最初に用いられたのは、はじめて水冷エンジンが搭載された「996型911」最終期となる2003年の「911GT3RS」からとなっている。一足先にデビューしたベース・モデルにあたる「GT3」でも充分レーシーな成り立ちを持つにも関わらず「996GT3RS」は、ロールケージを装着した上で更なる軽量化が施され、エンジンは共通ながら、10mm低められた佇まいを持つ。ピックアップの鋭いエンジンや硬質感たっぷりの乗り心地、圧倒的なトラクションで前に押し出されていく感覚、キャララ・ホワイトのみのボディカラーに、ブルー、またはレッドの大胆なボディサイドのレタリングと、同色で仕立てられたホイールにより「ナナサンのカレラRS」彷彿とさせる強いインパクトを残し約700台が生産された。この流れは後継車となる「997型」にも引き継がれ、以降「GT3RS」というモデルは「ポルシェ911」のNAエンジン搭載による究極進化モデルとして、代が替わる毎に存在し続けることとなる。今回入荷した「991型GT3RS」は、2015年3月に開幕したジュネーブ・ショーで発表されたモデルで「GT3RS」としては5世代目となる。当時のポルシェが「考えうる最高のモータースポーツテクノロジーを詰め込んだ」と発表したこのモデルは、2003年に販売されたスーパーポルシェ「カレラGT」がもつニュルブルクリンク・ノルドシュライフェのラップタイム、7分29秒を大きく上回る7分20秒を記録する程の高い性能を誇る。それを可能としたのは、パワートレインの改良はもちろん、エアロダイナミクスの最適化と徹底した軽量化、その上で電子デバイスの活躍によるドライバビリティの向上によるものとなっている。ターボ・モデルから譲り受けたアルミとスチールによる軽量モノコックボディは、ルーフはアルミ素材からマグネシウム合金に置き換えられ、エンジンリッド及びトランクリッド等にはカーボンファイバーを多用することで「GT3」より10kgの軽量化が図られるとともに、低重心化にも成功している。その上、低く構えたフロントリップ・スポイラーや大型リア・ウィングなどの専用パーツにより、エアロダイナミクスはレーシングカーに近いレベルにまで仕上げられている。カーボンファイバー製のフロントフェンダー上部に備わる「エア・エキゾーストベント」は、フロントアクスルのダウンフォースを増大させる働きもつ。Cd値は「GT3」「GT3RS」ともに同じ0.33と発表されているが、ダウンフォース発生量は「GT3RS」の方が圧倒的に多く300km/h時で、フロント110kg、リア220kg以上となっている。ワイドなカーボンファイバー製リアフェンダー上のエアインテークは「ターボ」の場合インタークーラー用として機能するが「GT3RS」ではエンジン吸気用とされ、通常のリアリッドからの吸気と比べ、高効率となり高速域ではラム圧効果を狙ったものとなっている。リアとサイドウィンドウはポリカーボネート製となり、リア・クォーターウィンドウは特に薄い素材が用いられている。テールエンドのオーナメントだけでなく、ノーズに貼られるポルシェのエンブレムまでステッカーとされるほど徹底した軽量化へのこだわりを見ることが出来る。ボディ・カラーは「キャララ・ホワイト」と「GTシルバー・メタリック」が標準色となり、オプションで「ラバ(溶岩)・オレンジ」が設定されていた。︎「991型GT3RS」に搭載されるエンジンは水冷水平対向6気筒DOHC24バルブで、ボア×ストローク102.0mm×81.5mmから3996ccの排気量を得る。ベースとなる「GT3」用3.8ℓエンジンからストローク量を4mm伸ばし、可変バルブタイミングシステムを備える直噴式で、圧縮比12.8は「GT3」用エンジンと共通となっている。最高出力500馬力/8250rpm、最大トルク46.9kgm/6250rpmを発揮、それぞれ「GT3」からは25馬力/2.1kgm強化されている。ストロークが延長された事で、最高許容回転数が「GT3」の9000rpmから少しだけ下がり8800rpmとなる。それでも単室気筒容量が666ccにも達するユニットであることを考慮すれば驚異的な許容回転数を誇ると言えるだろう。新設計されたクランクシャフトは、船舶やF1用にしか用いない再溶解を繰り返した、高純度スチールが採用され、組み合わされるコンロッドは設計変更により143.0mmから140.8mmに短縮されるなど、ポルシェが培ったピュア・レーシングカー並の技術が用いられたユニットとなっている。組み合わされるトランスミッションは、7段PDK(ポルシェ・ドッペル・クップルングといわれるデュアル・クラッチ式自動変速システム)のみとなり「GT3」用と同じギア比が採用されるが、ファイナルは3.97から4.19へと低められ、リア・デフには電子制御式LSDが備わる。自動変速以外にステアリング裏の左右パドルを引くことでも任意にギアを上げ下げ出来る。また左右同時にパドル引いて保持している間、ニュートラルが維持される機能も付く。︎足回りはフロント・マクファーソンストラット式/コイル、リア・マルチリンク式/コイルとなる。ダンパーはPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)という電子制御式となり減衰力を自動調整出来るものが装備される。またリア・タイヤにはアクティブ・ステア機構が備わり同位相・逆位相それぞれ車速に応じて最大1.5度ステアすることで驚くほどスムーズなコーナリングが可能となっている。ブレーキはフロント6ポッド、リア4ポッドのモノブロック・キャリパーが備わり、フローティング・マウントによる380mm径のスチール製ドリルド・ベンチレーテッド・ディスクと組み合わされる。またPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)はオプション装備が可能となり、今回入荷した車両にも装備されている。タイヤ・サイズはフロント265/35ZR20、リア325/30ZR21となり前後それぞれ9J、12Jのセンターロック式の鍛造ホイールと組み合わされている。インテリアは、太めのアルカンタラ製360mm径の3スポークステアリングを通して、ドライバー正面には、1万回転まで刻まれた大径のレブ・カウンターがレイアウトされている。8500rpmからゼブラゾーン、8800rpmからレッドゾーンとなり、その左側には350km/h迄刻まれたスピードメーターが備わる。運転席、助手席ともに「918スパイダー」に由来するカーボン・ファイバー製の軽量なフルバケット・シートが採用されている。後席は省かれ、ボルト固定式のロール・ケージが装備される。軽量化にこだわりスパルタンな仕立てに感じられるが、ナビゲーションシステムやオートエアコンが備わる為、ロードカーとしての配慮も窺わせる。センターコンソールのPDKセレクターの手前には2列に並ぶスイッチ類がレイアウトされ、左側が奥からPDKの変速特性切替、ダンパー制御プログラム切替、ESCオフ、ESC+TRCオフが並ぶ。右側は奥から排気モード切替、フロント・リフト、そしてピットスピード・スイッチ(40〜90km/hの間で任意に速度設定出来る)が並ぶ。ドア・オープナーはストラップ製となり、シートベルト、ステアリングやシートのステッチと併せてボディカラーと同色のアクセントとされている。スポーツクロノ・パッケージが標準装備される為、GPSを利用したラップタイムの自動計測から、車速、横G、前後G、減速など多数のパラメーター・データをスマートフォンに転送可能なトラック・プレシジョン・アプリも備わる。ステアリングポスト左側には歴代「911」各モデルと同様にキーシリンダーが備わる。︎全長×全幅×全高は4545mm×1900mm×1290mm、ホイールベース2457mm、トレッド前1587mm、後1557mm、前後重量配分は38:62で、車両重量は1420kgとなっている。「GT3RS」の新車時販売価格は2530万円、ベースモデルの「GT3」は1912万円となっている。メーカー公表性能値は0→100km/h加速3.3秒、0→200km/h加速10.9秒、0→400m加速11.2秒、最高速度310km/hとなる。ベースモデルの「ポルシェGT3」と比べ0→100km/h加速で0.2秒速く、最高速度は逆に5km/h落ちる。ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェのラップタイムでは「GT3RS」の方が5秒速い。︎生まれながらにしてスポーツカーである「ポルシェ911」は、そこに置いてあるだけで周りの世界から切り離された様な、独特の存在感を醸しだしている。その上「GT3」であれば、低く蹲りリアにそびえるウィング・スポイラーなどから、一際、その速さを想像させる存在となる。「GT3RS」は、その本籍をサーキットと思わせる程、ロードモデルとはかけ離れたオーラを発散させている様にも見える。ターボ・ボディの為、拡幅されたフェンダー内に「GT3」から更にフロント・トレッドを36mm広げられることでフロント・タイヤの張り出し感とエアベントが迫力ある造形を見せる。リアフェンダー上のインテーク、別体の支柱に支えられた大型ウィングと、21インチ化され拡幅されたリアタイヤ…その圧倒的なアピアランスは、全く日常からは隔絶した存在感となる。左側のドアを開け、他のポルシェと同じ様に左手でキーを捻り、リアに搭載された特別な4ℓ・フラット6エンジンに火を入れる。この瞬間からエンジン音は、キャビンに響きわたり容赦なく秘めたるパワーを感じさせる。センターコンソールのPDKセレクターでDレンジを選択し、ゆっくりとアクセルを開けていけば、自動でクラッチがエンゲージされ、むずかる様に動きはじめる。スムーズさに欠ける低速での動きと、ガシャガシャと鳴り響く騒音に急かされながら、水温が上がるまで低速を維持する。そうするうちに重めのステアリングやペダルの操作にも慣れはじめ、電子制御ダンパーのPASMによる乗り心地が、想像より悪くない事に気付く。広い通りに出た所でアクセルを深めに開けてみると、生き生きとした反応をエンジンが示しはじめる。直噴4ℓ・フラット6は回転を上げる事で輝きを見せ、その吹け上がりとレスポンスの素晴らしさに度肝を抜かれてしまう。低回転時の不揃いな脈動は回転を上げる事でシンクロし、スムーズさを取り戻しながら6000rpmから上は吸い込まれる様にレッドゾーン迄回りきる。この時、リアタイヤから感じられるトラクションは「911」以外では、絶対に味わう事の出来ないものとなり、ラインナップ中でも、一際、強烈な印象をもつモデルとなる。速度を上げる程に、路面に吸い付くようにフラットになる走行感覚も独特なもので、優れた空力特性によりエアロダイナミクスが有効に働いていることを実感出来る。ワインディングに差し掛かると、思いのほかコーナーを滑らかに攻略出来、良く曲がることにも驚かされるだろう。これはリアアクスルに備わる、アクティブ・ステア機構が黒子となり働いている効果のあらわれでもある。電子制御によりサポートを受けていても、手のひらを通して感じられる異様なまでの豊富なインフォメーションと剛性感の高さは、ノーマル・カレラとは全く別物となる。いかにアクセルを開け続けていられるか、ドライバーに挙動変化のリニアリティを繊細に伝えるのもポルシェの高い技術であり、間髪入れずに応えるエンジンレスポンスもまたしかり。クラッチ操作が省かれたと思う寂しさなんて全く感じさせる余裕を与えず、ダイレクトに繋がるPDKは、レーシングカー用のシーケンシャル・シフトを思わせながら、チタン製エキゾースト・システムが発する高回転時のサウンドは、何度も聴いてみたくなる強い印象をドライバーに残す。「GT3RS」は、ドライブする度に少しずつ親密さを高めながら、常に新たなハードルを越えていく楽しさを味わう事の出来る、生粋のドライバーズカーとなっている。