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190E 2.3-16
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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
190E 2.3-16
ボディタイプ
外装色
スモークシルバーメタリック
年式
1986 年型
走行距離
3850km
乗車定員
4 名
サイズ
長 443 cm 幅 170 cm 高 136 cm
エンジン形式
排気量
2297 cc
馬力
175
トルク
22.9
車検
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
並行輸入
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

車両には、SEC TYPE ボンネットが、換装されておりますが、ノーマルフロントフード、グリル等ございます。


5ナンバーで乗れるメルセデス」として198212月に正式発表されたW201型とよばれる「メルセデスベンツ190E」。車名の「190」は搭載するエンジンが1995ccだった事から本来「200」としたかったところだが、コンパクトクラスとよばれたW123型に「200」が存在した為「190」と名付けられ、末尾の「E」は燃料噴射装置をあらわしている。上級車種の大型サルーンW126型の「Sクラス」を思わせる、そのボディデザインはメルセデスベンツ社内デザイナーのイタリア人、ブルーノ・サッコ主導によるものとされ、Cd0.33を誇る空力を考慮されたデザインとなっている。また「190E」のボディデザインは、後に発表されるW124型の初代「Eクラス」にも反映された。目新しい装備としてはシングルブレードによるワイパーが挙げられる。アーム自体が伸縮するダブルリンクを持ちウィンドシールドの86%を払拭出来、悪天候でも視界が確保される様配慮されている。またコンセプトカーC111に採用されていたサスペンション技術の革命といわれたリアのマルチリンクサスペンションシステムが採用され、このモデル以降の定番となった。高級車メーカーとして存在していたメルセデスベンツが小さなボディサイズの中に、品質、安全性、操縦性、乗り心地、それに名状し難いメルセデス独特のフィーリングまで、全て大型のメルセデスに勝るとも劣らない形で再現してみせた「190E」は、多大なるインパクトを自動車の世界にもたらした一台となった。その「190E」に19839月のフランクフルトショーにおいて、ディーゼルエンジン搭載の「190D」とともに追加されたモデルが「190E 2.3-16」となる。これはベースモデルとなる「190E」が2SOHCエンジンを用いるに対し、W123型の「230E」に搭載されていた2.3SOHCエンジンをツインカムヘッドとするのみならず、4バルブ化した上で搭載したモデル。このエンジンのDOHC4バルブヘッドは、モータースポーツ界では有名な、英国・コスワース社による設計といわれている。メルセデスベンツがコスワース社に依頼したのは「コスキャスト(コスワースキャスティング)」というアルミ鋳造技術と高性能4バルブの生産ノウハウが必要だったのではないかと考えられている。コスワース社は1958年にロータス・カーズで働くマイク・コスティンとキース・ダックワースの2人により創業されたレーシングエンジン製作会社で、両名の姓を組み合わせた社名となる。フォード社による資金援助を受けながらロータス、シボレー、ヴォクソール(オペル)などにエンジン供給を行なってきた。中でもF2用の4気筒「FVA(Four Valve type A)」とよばれるエンジンや、それを2基組み合わせ通算154勝という驚異的な成績を残した3F1用のV8エンジン「DFV(Double Four Valve)」は、自動車史に名を残すものとなる。その2基のエンジンは、ともに4バルブヘッドをもち、それぞれバルブ挟み角40°(FVA)32°(DFV)と小さく設計されていて、DOHCヘッドを小さく設計しながら燃焼スピードを上げられるペントルーフ型燃焼室をもっている。これらのエンジン設計のノウハウが「190E 2.3-16」のDOHC16バルブヘッドにも活かされている「190E 2.3-16」はエアロパーツを備えベースモデルより25mm低い車高をもつ、当時のメルセデスベンツでは異質ともいえるスポーツモデルとなっている。当初このモデルで、WRC(世界ラリー選手権)への参戦を目論んでいたが「アウディ・クワトロ」の登場により、DTM(ドイツツーリングカー選手権)への参戦を目指す事となった。これはメルセデスベンツが、1955年のル・マンでの大事故以来、30年以上離れていたモータースポーツの世界に正式復帰する事を意味していた。またデビュー前に、このクルマの実力を世に知らしめる為に、南イタリアのナルド・サーキットにおいて、3つの速度世界記録と、12の国際記録を樹立するというデモンストレーションが行われた。1983821日の朝までの9日間に、5km201時間40分以内に走破し、平均速度247.939km/hを記録した。真夏の南イタリアは、日中、外気温40、車内温度は50にも達する中、6000rpmのフルスロットルで走り続け、高い耐久性と高速安定性能をアピールした。更に1984年には、より安全に生まれかわった「ニュルブルクリンク・サーキット」のオープニングセレモニーとして「190E 2.3-16」を使ったワンメイクレースが行われた。ジェームス・ハント、ニキ・ラウダ、スターリング・モス、ジョン・サーティーズ、デニス・ハルムなど綺羅星の如き広い世代のF1ドライバーが参戦する中、当時ブラジルの新星とよばれたアイルトン・セナが、最後尾スタートからのラウダとの争いを制して圧倒的な勝利をおさめ、その実力を印象付ける伝説のはじまりともいえるレースとなった。「190E 2.3-16」に搭載されるエンジンは、水冷直列4気筒DOHC16バルブとなり、M102型とよばれるもので、ボア・ストロークは95.5mm×80.25mm2299ccの排気量をもつ。10.5と高めの圧縮比とボッシュKEジェトロニック燃料噴射装置(機械/電子式)を備え、最高出力185馬力/6000rpm、最大トルク24.5kgm/4500rpm(キャタライザー装備の日本仕様は圧縮比9.7とされ、175馬力/5800rpm22.9kgm/4750rpmとなっている)を発揮する。燃料噴射装置のインダクションチューブがエンジンブロックに結合される部分で、4バルブのうち2つのインテークバルブにあわせ二又に分かれていたり、レーシングカー並みに、うねりをもったエグゾースト・マニホールドが装備され、当時のメルセデスベンツ用エンジンとしては、明らかに異質な成り立ちをもつ。組み合わされるトランスミッションは、ゲトラグ製5MTとなり、1速が左列手前にくるレーシングパターンとなっている。またリア・デフにはロッキングファクター32%となるLSDが装備される。足回りはフロント・マクファーソンストラット式、リアはマルチリンク式となり、それぞれにスタビライザーが装備される。またリアサスには、油圧による自動車高調整装置が付く。ブレーキはフロント・ベンチレーテッドディスク、リア・ソリッドディスクを備えABSが装備されている。ホイールは4輪とも7J×15サイズのアルミホイールに205/55VR15サイズのタイヤが組み合わされている。エクステリアは、専用となる前後バンパーと一体型エアダムから、太いタイヤをカバーするホイールアーチフレア、サイドはフロントウィング・モールディング、ウエストライン下部のドアモールディング、更にリアサイドモールディングとつながる。トランクリッド後端に付くウィングタイプのリア・スポイラーを含め数々の機能的なエアロパーツがベースモデルとの違いをみせる。フル装備されたエアロシステムによりCd0.32を誇り、フロントで45%、リアで40%の揚力低減がはかられ高い高速安定性を発揮する。インテリアは、黒を基調としながらベースモデルの「190E」に準じたレイアウトとなっている。異なる点は本革製の400mm径のステアリングホイールとシフトノブ、フルスケール260km/hまでのスピードメーターと7000rpmからレッドゾーンとなるタコメーター。またセンターコンソールの1DINタイプのオーディオの下には、電圧計と油圧計、そしてデジタル式ストップウォッチからなる3連メーターが専用装備される。定員4名となるシートはサイドサポートが大型化されたバケットシートとなり、レカロ社との共同開発によるものとなっている。全長×全幅×全高は4430mm×1710mm×1365mm、ホイールベース2665mm、トレッド前1445mm、後1430mm、車両重量1310kg。燃料タンク容量は70、最小回転半径5.0m、新車時ディーラー価格866万円(5MT)910万円(4AT)となっている(1986)。生産台数は当初DTMのホモロゲーションを取得する為、年間5000台を目指していたが、最終的に19487台が生産され、580台が正規輸入されたといわれている。メーカー公表性能値は、0100km/h加速7.8秒、最高速度232km/hとなる。カーグラフィック誌による実測データは0100km/h加速7.6秒、01km加速27.7秒、0400m加速14.9秒、最高速度225.7km/hとなっている。低めに構えた車高とエアロパーツを備えたエクステリアは、同時代のメルセデスベンツらしくない、スポーツセダンとして精悍な佇まいを感じさせる。ドアを開けるとサイドサポートが張り出したシートが目に入る。ドライビングポジションを確かめると、ステアリングホイールはやや大きく、シフトレバーのストロークは少し大きく感じるかもしれない。それでも黒一色のインテリアからはメルセデスベンツらしく高品質さがうかがえる。コンパクトなボディサイズをもち、しっかりとしたステアリングやペダル類の操作感、硬めながらもしなやかな足回りは、高い精度をもってつくられた完成度の高さが味わえる。タウンスピードにおいては、それほど印象に残らないエンジンも、3000rpm4000rpmと回転を上げるにつれ、コスワースの設計によるDOHC16バルブの高性能ユニットらしい咆哮とともに、強烈に存在を主張しはじめる。4500rpmを超えてからは、あらゆるストレスから一気に解き放たれた様に、まるで視野が狭くなる様にパワー感を強め加速するとともに、一段と甲高い印象的なサウンドを放つ。「常にエンジンよりシャーシの方が速い」というメルセデスベンツのポリシーと高い安全性は、このスポーツモデルでも貫かれ、いかなる状況においても容易く破綻する事は無く高いドライバビリティを持つ。リアサスのマルチリンク・サスは巧妙にリアタイヤを路面にコンタクトし続け、ハイパワーに対応したブレーキシステムは、ワインディングロードでハイペースを維持してもフェードの兆しを見せず、速度が上がる程にジワリとした効きをしめすように感じられる。久しぶりにスポーツモデルを発表した40年前のメルセデスベンツのドライビングを楽しんで欲しいというシンプルな思いは「190E 2.3-16」に凝縮されていて、走らせるほどに味わう事が出来るだろう。「最善か無か」というゴットリープ・ダイムラーのモットーをクルマ造りの哲学としていた時代のメルセデスベンツが開発した「190E」。高品質で高精度、安全性にこだわりコストはその次という中で作られた高い走行安定性をもつ、初めての軽量、コンパクトなセダンがあったからこそ、走らせる楽しみをもつスポーツモデルへの発展を考えられたのかもしれない。現代のスポーツサルーンはコンフォート性能はじめセーフティ機能を含め、様々な方面に電気デバイスで武装することでプレミアム感と車重を増してしまっている。「190E 2.3-16」の様に気持ち良く吹け上がるエンジンをクラッチとマニュアルギアボックスを操作して、ダイレクトな走行感覚を堪能できるスポーツ・セダンはなかなか存在しない。それがメルセデスのボディとコスワースによるエンジンの組み合わせという事を考えれば、それはとても贅沢なモデルともいえるかもしれない