Porsche 911 Turbo
50 Years
世界限定 1974台 [オプション装備] ヘリテージデザイン 50 Years Turbo / チルトスライド式電動サンルーフ / レーンキープアシスト / アダプティブクルーズコントロール
︎1973年9月のフランクフルトショーにポルシェが展示した1台のプロトタイプ。フロントとリアのフェンダーは大きく膨らみ、そのフェンダーいっぱいに太いダンロップ製タイヤを装備。フロントバンパーは深いエアダムと一体となり、エンジンフードは巨大なウィングと一体化されて、深いホイールリムから固められた足回りとレーシーな雰囲気に溢れている。このエクステリアデザインは、後に発表される希少な1974年型「カレラRS3.0」と同様に見えるが、そのシルバーに塗られたボディには見慣れた「Carrera」ではなく、特徴的な「Turbo」のストライプが付けられていた。インテリアでは、一体式のフルバケットシートが装備され、そのシート中央部分とドアトリム部分は、同様にグリーンのタータンチェック生地で覆われた豪華な仕立てとされていた。搭載されるエンジンは、空冷3ℓ・フラット6エンジンにターボチャージャーを装備し、最高出力280馬力、最高速度280km/hを公表していた。これが現代迄続く「ポルシェ911ターボ」の原点となり、このプロトタイプはフランクフルトで発表された後、同年10月に開催された第20回東京モーターショーでも展示されている。「ターボチャージャー」とは、排気エネルギーでタービンを回し、同軸上に配したコンプレッサーで吸気を加圧して、エンジン出力をアップさせるというシステムで、その歴史は古い。そのアイデアは、チューリッヒにあるスルザー・ブラザーズ社に籍を置いたアルフレッド・ビュッヒによるもので、1905年に特許が成立するが、実働機での成功には至らなかった。1918年になるとフランスのタービン技師オーギュスト・ラトーにより航空機エンジンにおいてターボ・エンジンの実用化に成功する。以降、1940年代に至るまでに一般化され、航空機エンジンで完成されたターボ過給技術は、第二次世界大戦後には自動車の世界にも応用される事となる。ポルシェは1969年にこのターボ技術に着目すると、独自に「911」と「914」に試作した2ℓ・ターボエンジンを搭載しテストを繰り返した。その2年後の1971年にはCan-Am用の空冷フラット12気筒・ターボエンジンの開発が始まり、そのエンジンを搭載した「917/10K」が翌年のチャンピオンを獲得。その成功を受け、世界メイクス選手権の獲得を狙って「カレラRSRターボ」を開発するとともに、市販モデルとして「911ターボ」の開発が並行して進められた。「911ターボ」の発表に先立ち1台の「カレラRSRターボ」が、1974年3月24日に行われたル・マン・テストデイに送り込まれると、思い切り広げられたリア・フェンダーと車幅いっぱいの巨大なリア・ウィングで注目を集めた。もちろんこの特別な「RSR」のトピックは、リアに搭載された2.14ℓ・空冷フラット6・ターボ過給エンジンで、500馬力を発揮する上に軽量化にも配慮されていた。北米Can-Amシリーズで成功をおさめたターボ技術を導入し、レギュレーションで定められたターボ係数1.4を掛けて3ℓに収まる様に、空冷フラット6エンジンの排気量は2142ccへとダウン。KKK製ターボチャージャーの最大過給圧は最大1.3〜1.4barと定められた。1974年は「マトラMS670」や「アルファロメオ TT12」といった強豪エンデュランス・レーシングモデルがエントリーする中、同じプロトタイプ・レーシングカーにカテゴライズされた「カレラRSRターボ」は、4月の「モンツァ1000km」でレース・デビューを飾り5位に入賞。続く「スパ1000km」では3位、更に「ニュルブルクリンク1000km」では6位と好成績を連発する。そして迎えた「ル・マン」決勝レースでは、2台の「カレラRSRターボ」がエントリーするが、ゼッケン21番を付けた1台はエンジン・トラブルによりリタイア。7番グリットからスタートしたレネップ/ミューラー組のゼッケン22番を付けたもう1台は、大方の予想を裏切って「マトラ」を抑え一時はトップを快走、しかし日曜日の昼前に5速ギアを失うギア・ボックストラブルによりペースを落としていまう。それでも最終的には2位入賞という結果を残した。ここからポルシェは「911」の新たなトップモデルとしての登場する「911ターボ」の発表に拍車をかける。量産型「911ターボ」が発表される前に1台の「ロードゴーイング・ポルシェ・ターボ」のルーツといわれるモデルが完成する。それが「911ターボNo.1(ドイツ語表記ではNr.1)」とよばれるモデル。このモデルは1974年8月29日にルイーゼ・ピエヒ(ポルシェ創業者フェルディナント・ポルシェの長女でアマチュア・レーシングドライバーでもあった。90歳になるまで911をドライブしていたといわれる人物)の70歳の誕生日プレゼントとして贈られたスペシャルな1台。シルバーに塗られたボディは、ビックバンパーが初めて装備されたGシリーズをベースとしリア・エンジンリッドにウィングは装備されるが、ワイドなフェンダーは採用されていない。インテリアは毛足の長い豪華な赤いカーペットと、赤のタータンチェック柄をドアトリムとシート中央部分に採用、エクステリアではそのチェック柄が用いられた「PORSCHE」ストライプがボディサイドにレイアウトされている。搭載されるエンジンは2.7ℓ・フラット6にターボチャージャーを装備し240馬力を発揮する。しかし低速域でのトルクが薄く扱い易さに欠ける事を理由に、量産型「911ターボ」では3ℓ化されたエンジンが採用される事となる。この「911ターボNo.1」のハイパワーなターボ・チューニング・エンジンとプレミアムなインテリアの組み合わせは、今に続く「911ターボ」のキャラクターを想像させる1台となっている。1974年10月パリ・サロンで発表された量産型「911ターボ」は、車名を「930ターボ」とし、KKK製3LDZ型ターボチャージャーを採用することで260馬力を発揮、300km/h迄の速度計を必要とする程のパフォーマンスを備え、高級感のあるインテリアと充実した装備によりフラッグシップモデルとしても注目されヒット作となった。0→100km/h加速5.2秒、0→1000m加速24.0秒、最高速度250km/h以上という圧倒的な動力性能を誇り、1976年からのツーリングカー選手権の新たなレギュレーションがFIAから通達されると「930ターボ」は、この新レギュレーション用のホモロゲーション・モデルとしての役割も担う。こうして誕生したレーシングモデル「934」と「935」は、様々なレースシーンで大活躍。1976年から3年連続で世界メイクス選手権を獲得したポルシェは、その高いターボ技術をアピールした。その後もロードカー、ラリーカー、レーシングモデルのみならず、今世紀に入ってからも「カイエン」から始まるSUVモデル、スーパーセダンの「パナメーラ」等までポルシェは、数々のターボモデルを展開し続けてきた。中でもル・マン24時間耐久レースで24回もの勝利を挙げ、そのうち17回はターボ・エンジン搭載モデルで制したポルシェこそ「ターボのパイオニア」と言えるメーカーとして存在感を示してきた。そのポルシェが2024年「ポルシェ930ターボ」の発表を“ポルシェ・ターボ”の起源と位置付け、ル・マン24時間耐久レースが開催された翌日の2024年6月17日に、ドイツ・シュトゥットガルト郊外のポルシェ・ミュージアムを拠点に「Beyond Performance-50 Years of Porsche Turbo」というイベントを開催。これまで販売してきた代表的なプロダクト・ターボ・モデルをはじめ、1982年のル・マンで優勝したグループCカー「956」のデモ走行を披露した。そして同年8月、米国カリフォルニアで開催されたモントレー・カーウィークに於いてワールドプレミアされたモデルが、今回入荷した「Porsche 911 Turbo 50」となる。「930ターボ」の発表年に合わせて1974台が限定生産されたこのモデルのボディには、1973年にプロトタイプとして発表された「911ターボ」に用いられた特徴的なストライプが再現されている。リア・エンジンカバーグリルにはターボチャージャーのアイコンと「1974-2024」という年号があしらわれた「Turbo 50」専用エンブレムが備わる。またインテリアには初期モデルへのオマージュとしてアイコニックな「マッケンジー・タータン」とよばれるチェック柄がシート座面とドアトリム、ダッシュボードに採用され1970年代を想わせるクラシカルな仕上がりを見せている。シートのヘッドレスト部分には「Turbo 50」のロゴを刺繍で再現し、グローブボックス上には「Turbo 50」のロゴとリミテッドエディションのナンバーが刻まれたアルミニウム製の記念プレートが配される。ドアキックプレートはブラックブラッシュアルミニウム仕上げとされ「Turbo 50」のロゴを用いたイルミネーションがレイアウトされるなど、特別な仕上がりの一台となっている。今回入荷した「Porsche 911 Turbo 50」のベースとなったモデルは、水冷エンジン搭載となった「911」の4世代目となる「992」型とよばれるシリーズの、トップモデル「ポルシェ911ターボS」となる。2018年11月のロサンジェルス・ショーで発表された「992型・911」は、2019年3月のジュネーブショーで「カブリオレ」が公開され、コロナ禍の2020年3月に「ターボS」が、続いて7月には「ターボ」が発表された。ベースモデルの「カレラ」に比べ拡幅されたフェンダーとウィング型「可変リア・スポイラー」をもつのは代々の「ターボ」モデルと同様となるが、リア・フェンダー上にインテークが開けられているのも大きな特徴となっている。一定以上のスピードになるとフロントバンパー下部に備わる「アクティブ・フロントスポイラー」と対になり展開する「可変リアスポイラー」は「ポルシェ・アクティブ・エアロ・ダイナミクス」により強力なダウンフォースを発生し、その効果は50〜60km/hの速度帯からでも、車体が安定することが確認出来るといわれている。2015年9月に発表された先代「991」型の後期モデルから、ベースモデルの「カレラ/カレラS」が搭載するエンジンはツインターボ化され、NAのフラット6エンジン搭載モデルは「GT3」系のみとなり「992」型のラインナップもそれを踏襲している。「カレラ/カレラS」に搭載されるターボ・エンジンは、燃費向上を狙ったダウンサイジング・ターボ・エンジンであり、敢えて「ターボ」を名乗る7世代目の「992型・911ターボ」が搭載するエンジンは、初代「930ターボ」から引き継がれる高出力を目的とするもので全く異なる。3世代目の「993型・911ターボ」から4WD化されたとはいえ、その出力から考えれば「911ターボ」の圧倒的に短いホイールベースは、ライバルと目される他のスーパースポーツ等に比べると、濃厚な一体感をドライバーにもたらす。リアフェンダー上に設けられたインテークでは無く、リアウィング前方のリアリッド経由で吸気を行う事により、爆発的なパワーを誇るターボ・チューニング・エンジンは、微妙なコントロールも受け付けるリニアなパワー・デリバリーも可能とし、ドライブモードには新たにウェットモードを備える。強化されたエンジンパワーに対して更にその上を行く、高いブレーキ性能もポルシェならではといえるものとなり高い信頼性を備える。この最強パワー・ユニットと、コンフォート性能に優れたエクスクルーシブなインテリアの組み合わせは歴代「ポルシェ・ターボ」がもつ特別なものと言えるだろう。限定生産でレーシーな味わいが特徴となる「GT3」とは、速さに対するアプローチが異なる「ターボ」モデルだが、半世紀に渡り高い需要に裏付けされた、そのハイパフォーマンスとオールマイティぶりは、このモデルならではの特徴となっている。ポルシェのラインナップに於いて「ターボ」とは、そのシステムを意味するネーミングであるだけでは無く、そのモデルが究極のエンジニアリングやテクノロジーを注ぎ込まれた最高峰にポジショニングされる事を表したネーミングともなっている。︎「Porsche 911 Turbo 50」が搭載するエンジンは、水冷・水平対向DOHC6気筒となりボア×ストローク102.0mm×76.4mmから3745ccの排気量を得る。8.7の圧縮比と、ボルグワーナー製・可変ジオメトリー(VTG)式ターボチャージャーを2基備え、最高出力650馬力/6750rpm、と、最大トルク71.4kgm/2500〜4000rpmを発揮する。VTG式ターボチャージャーは「997型・911ターボ」から採用され、エンジン回転数に応じて排気ガスの流量を変化させることで低回転域でも充分なトルクを発生させる事を可能とした技術となる。初代「930ターボ」の弱点とされたターボによるパワーデリバリーのタイムラグはもはや一切感じない。しかも先代モデルから採用されたダイナミック・ブーストによりエンジン側のスロットルは開いたまま維持される為、負圧になりにくい特性をもつ。これに加えて吸気冷却システムが完全に新設計された上で、電動ウェストゲートとエミッション特性にも優れたピエゾインジェクターを新たに装備している。新開発となるこのインジェクターは、高圧で燃料をシリンダーに噴射することで、シリンダー中心に対して横方向の混合気の渦(スワール)を生成する。この卓越した燃焼技術により燃焼速度が高まり、アイドリングプラスの極低回転域からトップエンド迄、全域にわたりまさに精密機械の如く、スムーズに回るエンジン特性を得ることを可能とした。併せてどの回転域においてもトルクが腑抜けになる帯域が無く、軽く踏んでも、また深く踏み込んでも即座にエンジンはレスポンスし、ドライバーが望むパワーを即座にデリバリーする。すこぶるトルキーでパワフルである事を別にすれば、ターボチャージャーを装備している過給エンジンである事を、全く意識させることなく繊細さをも備えたエンジンとなっている。組み合わされるトランスミッションは8段PDK(ポルシェ・ドッペルクップルングというポルシェ開発によるデュアル・クラッチ式AT)となり、PTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)という4WDシステムにより効率良くトルクを配分し4輪を駆動する。このPTMは、フロントに最大約51kgmものトルクを配分することが可能となっている。足回りはフロントはマクファーソン・ストラット/コイルスプリング、リアはマルチリンク式/コイルスプリングで構成され、走行モードや路面状況に応じて電子制御により、ショックアブソーバーの減衰力を調整できるPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)を装備する。加えてポルシェが開発した先進的なシャーシ制御システムであるPDCC(ポルシェ・ダイナミック・シャーシ・コントロール=電子制御スタビライザー)も、標準装備する事でスタビリティと、ロードホールディング性能を誇る。また4輪操舵システムを装備し、低速時には前後輪は逆位相に、高速時やスポーツドライビング時は同位相にステアすることでコンフォート性能とダイナミック性能をサポートしている。ブレーキは、PCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)とよばれる420mm径のドリルド・セラミック・コンポジット・ディスクをフロントに装備。これは同サイズの鋳鉄製ディスクに比べ50%軽量化されるとともに、高い熱容量と放熱性をあわせもつ。組み合わされるキャリパーは、10ピストンをもつ曙ブレーキ製となり制動性能を確実なものとしている。リアは390mm径のディスクと4ピストン・キャリパーが装備される。ホイールはフロントに20インチ径、リアは21インチ径となる異径サイズが「911ターボ」として初めて採用された。今回入荷した「Porsche 911 Turbo50」の「ヘリテイジデザイン・パッケージ」では、ベースとなるエクステリアカラーが「アベンチュリングリーン」となり、センターロック式の「スポーツクラッシック・ホイール」が採用され、ブリリアントシルバーとサテン仕上げによるホワイトで塗り分けられたものが装備されている。組み合わされるタイヤはフロント・255/35ZR20 97Y、リア・315/30ZR21 105Yとなっている。︎インテリアは「930型(Gシリーズ)」をモチーフにデザインされた水平基調のダッシュボードがレイアウトされ、そこに「GTスポーツステアリングホイール」とよばれる3スポークタイプのステアリングが装備される。そのステアリングの先には、初代「930ターボ」と同様に5連メーターが備わる。左右2つずつのメーターはもはや映像として映し出され、中央に位置する大径のタコメーターだけはアナログ式として唯一残される。7000〜8000rpmをレッドゾーンとして表示するタコメーターの左側には、スピードメーターが投影され、そのスケールは350km/hとなっている。ステアリングの中央右下のドライブモード選択ダイヤルではウェット、ノーマル、スポーツ、スポーツプラスが選べるほか、ダイヤル中央のボタンを押す事でフル・ブースト状態を約20秒間維持出来る「スポーツ・レスポンス・スイッチ」が備わる。ダッシュボード中央には10.9インチのPCM(ポルシェ・コミュニケーション・マネージメント)タッチスクリーンが装備され、ナビやオーディオ、ドライブモード選択、スマートフォンとの接続など、様々な操作が可能となっている。他の「911」シリーズ同様に、センターコンソールにはバイワイヤー式の小型シフトセレクターが残されている。今回入荷した「Porsche 911 Turbo 50」では初期モデルへのオマージュとしてアイコニックな「マッケンジー・タータン」がインテリアの随所に再現され、スペシャルなモデルである事をアピールしている。「カレラ/カレラS」とは異なる18wayの電動調節機能を内蔵したアダプティブ・スポーツシート・プラスが装備され、スポーツ走行に於いても、長時間のドライブでも素晴らしいコンフォート性能を発揮する。そしてヘッドレストには「Turbo 50」のロゴの刺繍が施される。またセンターコンソールの収納ボックスにはレザーにエンボス加工された「Porsche Exclusive Manufaktur」のロゴが備わる。リア・シートは他の「911」同様に、あくまでも+2の役割しかもたされず、50:50の分割可倒機構が備わり、背もたれを倒す事で容量264ℓのラゲッジスペースがうまれる。「ポルシェ・ターボ」のインテリアは、初代「930ターボ」の頃から、ただスパルタンなだけでは無く、どこか高級なGTに通じる文脈を感じさせるものとなっていた。その内装をベースに特別に仕立てられた「Porsche 911 Turbo 50」のインテリアは、忘れる事の出来ない印象的な空間となっている。全長×全幅×全高は4535mm×1900mm×1303mm、ホイールベース2450mm、トレッド前1583mm、後1600mm、前後重量配分は38:62、車両重量1640kg。燃料タンク容量67ℓで、最小回転半径は5.2m、ベースモデルの「911ターボS」の新車時価格は2892万円、「Porsche 911 Turbo 50」の新車時ディーラー価格は3642万円となっている。︎メーカー公表性能値は、0→100km/h加速は2.7秒、0→200km/h加速は8.9秒、最高速度は330km/hとなっている。︎初代「930ターボ」の時代から「911」の「ターボ」モデルは特別な存在だった。ターボチャージャーで過給された強大なトルクを受けとめるべく広げられた前後のトレッドと、幅広のタイヤ。それを覆う為に拡幅されたフェンダーにより、ベースモデルに比べ120mm以上幅広いボディとされた。その造形は艶かしく、併せてエンジンフードと一体化された大型リア・ウィングは、ノーマルの「911」とは圧倒的に差別化されたものだった。ドライバーズシートに腰を下ろしたオーナーはドアを閉めてドアミラー越しに、このリアフェンダーの存在感に気持ちを高めていたことだろう。水冷エンジンを搭載した「911」の時代になると、パワーアップされたエンジンにより、ベースモデルのフェンダーも拡幅される事で、オーバーフェンダーの存在感はやや曖昧なものとなる。水冷エンジン搭載の「911ターボ」のアイデンティティは、リアフェンダー上に開けられたエアインテークと、継承されたエンジンフードと一体化となるウィングにかわり、これこそが現代の「911ターボ」の証となっている。ドアノブに手をかけるたびに目線はこのインテークを意識しドライバーの気持ちは高まりをみせる。ドライバーズシートに腰を下ろし、それまでの「911」と同様に左手でキースイッチを捻ると、爆発的にエンジンが始動する。「D」レンジを選択してそっとアクセルを踏み込めば、強力なパワーを秘めたエンジンであっても従順に動き出してくれる。この極低速域での柔軟性の高さも、このエンジンの特徴で、6速1000rpmで速度50km/hプラスでも、何の苦もなく滑らかに走行することが可能となる。ここからスロットルペダルを無造作に踏み込んでも、エンジンはフレキシブルさを維持しながらスムーズな加速を可能とする。トップエンドの逞しさだけでなく、ボトムエンドでの扱いやすさを疎かにしないところは初代「930ターボ」から引き継がれた「ターボ」モデルの特徴となり、この柔軟性に加え「ポルシェ」ならではのエンジン・レスポンスの素晴らしさも特筆すべきものとなっている。それは径の大きなターボチャージャーが装備されている事を忘れさせる程の良好なレスポンスを見せ、回転が上がればトルクはターボらしく分厚くなるため、ドライバーは、緻密にエンジンと連携がとれる。これにより速度とパワーの調節は容易になるとともに、大味なエンジンに感じることは全く無く、大パワーのターボ車とは思えない程、繊細に感じられるエンジンでもある。このエンジンのキャラクターに対して、効き、タッチともに秀逸なブレーキが備わるのはポルシェならではといえるもので、ドライバーはクルマとの濃密な一体感を味わう事が可能となる。たとえ雨などにより路面の状態が悪い状況下であっても、大パワーのクルマを手中に納めていられるのは、何より楽しく感じられる事となる。この楽しさに安心感を加えてくれるのが、PTMによる4WDシステムと、新たにドライブモードに加わったウェット・モードかもしれない。僅か2500rpmから80kgm以上のトルクを発揮するこのモデルは、その気になればいつでも他を圧倒する程の怒涛の速さを披露するのは言うまでもない。その迫力は半端なく、アクセルを踏み込んでいるドライバー自身でさえ、身体が猛烈な勢いでバックレストに押しつけられるのが体感出来る。その状況でもタイヤが空転したり、スライドすることで直進を乱される気配は皆無。圧倒的な迫力で真っ直ぐ加速し続けられるのは、現代の4WDシステムと空力装備、そして電子制御デバイス等によるものと想像される。加えて「911」ならではのリアエンジン・リアドライブからうみだされる強大なトラクションが加わる事が、初代「930ターボ」から続く「ターボ」モデルの異次元ともいえるパフォーマンスの源といえるのかもしれない。誰もが快適に移動出来る実用性を確保しながら、ドライバーの気持ちを熱くさせる奥深いパフォーマンスを秘め、いつでもその幅広い使用状況に応じられる「911ターボ」のキャラクターは、半世紀にわたり多くのファンに愛され続けてきた。それを一台のモデルの中に色濃く集約した特別なモデルが「Porsche 911 Turbo 50」となっている。