サイズ
長 386.0 cm 幅 156.0 cm 高 110.0 cm
︎アルピーヌ創始者である、ジャン・レデレは父親がルノー・ディーラーを経営していた事もあり、始めにルノー4CVをチューンナップしてモータースポーツに参戦した。好成績を挙げるのに伴って、ルノー・レース部門から援助を受けて、4CVの床板と鋼管を組み合わせたフレームに、軽いFRPのクーペボディを架装したアルピーヌA106が完成する。その後、ベースの4CVがドーフィンに代わると、独自の鋼管バックボーンフレームを採用、A108が製作された。この構造を進化させ、1963年A110がデビューする。A110は進化をする度にモータースポーツで活躍し、1971年ラリー・モンテカルロでは1〜3位を独占、ERCからWRCに格上げされた1973年、その初代マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得する。A106/A108/A110ともにボディデザインは、ジョバンニ・ミケロッティによるもの。A110は発売当初956ccだったエンジンを、すぐに1108ccとし、1964年には同排気量のゴルディーニ製(イタリア北部、エミリアロマーニャ生まれの、アメディ・ゴルディーニ。ルマンやF1などモータースポーツで活躍したチューナーで、1969年ルノー傘下に入る。)エンジンを追加する。その後OHVのまま1300cc、1600ccと排気量をアップするとともに、1977年まで生産された。︎A110 1600Sは1970年にデビューする、A110シリーズは、この年、それまで設定されていたカブリオレとGT4を無くして、全モデルベルリネッタボディとなる。エンジンはルノー16TSのオールアルミ製OHV4気筒型をベース(807-25型)に、1565ccで2基のツインチョークウェーバー45DCOEによりチューンナップされ、最高出力138馬力/6000rpm、最大トルク15.6kgm/5000rpmとなる。また、1600Sの最終製造年となる1973年モデルのみ、ホモロゲの関係でルノー17TSの1605cc/140馬力エンジン(844-32型)と5速M/T(364型)が搭載された。特筆すべきは、DOHC型と言われても信じてしまう程、レスポンスに優れたOHV型エンジン。クロスフロー化され半球型燃焼室をもち、高回転域では剃刀のような切れ味を持っている、しかもルノー・ユニット特有の柔軟性は何ひとつ犠牲にされていないと言われている。トランスミッションはオーバードライブレシオをもつマニュアル5速(353型)で、ステアリングはラック&ピニオン型。サスペンションは前ダブルウィッシュボーン+コイル、後スウィングアクスル+セミトレーリングアーム+コイル。ブレーキは4輪ディスクブレーキで、タイヤサイズは165HR-13(5J)車両重量はメーカー公表値635kgとされるが、実質780kgくらいあり、前後重量配分は40:60で、RR方式のレイアウトを持つクルマとしては、良好な比率を持ち運動性能の高さが窺える。A110のコックピットはとても狭い。乗り込んでドアを閉める時に肩や肘をぶつけるのではないかとさえ思う。右隣にはパッセンジャーシートが寄り添い、反対側のドアパネルにも簡単に手が届く。しかしシートに着いたドライバーには、何ひとつ負担はかからず両手、両足を伸ばして理想的なドラポジがとれる。またとても良く出来たそのシートは、自分の身体から型をとって作られた様なフィット感が得られる。FRPボディには、無駄な贅肉を一切感じる事無く、ドライビングに集中出来、一体感を味わえるのが、A110の最大のアピールポイント。︎A110は硬めながら、荒々しさの無い快適な乗り心地を持つ。何処か華奢なイメージのあるアルピーヌA110だが、完調な個体に接する事が出来れば、そのしっかりした作りに驚かされるはず。ステアリングから右に手を移動すると、そこにシフトノブがあり、とても連携しやすい。そのステアリングを少し動かしただけでも、丸い鼻先はスッと進路を変更し短いホイールベースは、その挙動を瞬間的にターンインに繋げてくれる。リア寄りの重量配分が信じられない程、ドライバーの意志どおりのラインを辿り、曲る事をクルマが好んでいる様に感じられる。あらゆる部分で、他のライトウェイトスポーツのレベルを超越しているA110こそ、このカテゴリーのベンチマークと呼ばれるべきクルマ。性能はメーカー公表値で最高速度215km/h、0→100km/h加速7.8秒、カーグラフィック実測値は0→400m加速16.7秒、0→1000m加速30.9秒となっている。A110の生産台数は、ロータスエランとほぼ等しい12000台くらいと思われる。