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シルバースピリット
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メーカー
ロールスロイス
ミッション
コラムオートマ
グレード
シルバースピリット
ボディタイプ
外装色
ホワイト
年式
1990 年型
走行距離
6400km
乗車定員
5 名
サイズ
長 528 cm 幅 189 cm 高 148 cm
エンジン形式
排気量
6747 cc
馬力
トルク
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
並行輸入
内装色
マグノリア
燃料区分
ガソリン
幌色

1906年にイギリスで創業したロールスロイス社は、198010月のパリサロンで「シルバースピリット」をデビューさせた。その前モデルとなる「シルバーシャドー」が登場した際、それ以前の「シルバークラウド」からロールスロイス社としては、空前ともいえる大改革が実施された。セパレート・シャーシに背の高いコーチビルド・ボディを構築するという、戦前以来の旧式な設計から、モノコックボディ構造とし自動車高調整付きの全輪独立懸架、全輪油圧ディスクブレーキなどを一気に採用した。更に「シルバーシャドー」は、その後15年間に及ぶ長い生産期間を通してボディデザインは、ほとんど変更されなかったにもかかわらず、細部は実に2000箇所以上にわたる、小改良が続けられてきた。乗り比べれば明らかに新型の方が優れているという事は、ロールスロイス社の伝統である「The Best Car in the World」も決して完全では無く、常に改善の余地が残されていたという事でもある。「シルバースピリット」のエクステリアはパルテノン・グリルの丈が低められ、ヘッドライトが当時のメルセデス風の矩型横長になり低められたウエストラインとともに、全体に姿勢を低く、長く見せる方向となっている。ガラス面積は「シルバーシャドー」から30%拡大され、ドアの窓には初めて曲面ガラスが用いられた。このボディデザインは、元来ロールスロイス社の設計者だったが、芸術的天分を認められデザイン部門を統括するようになったフリッツ・フェラーを中心とした社内デザインとなっている。搭載されるエンジンはオールアルミ製90°V8気筒OHVとなりボア・ストローク104.1mm×99.1mm6750ccの排気量となっている。1959年デビューのロールスロイス製V8エンジンがベースとなるもので、当時6230ccあった排気量を1977年にストローク・アップにより拡大し、現在の排気量となる。基本設計はそのまま変える事無く、ハンドビルドにより造り続けられたエンジンとなっている。「シルバースピリット」登場時は2基のSUキャブレターにより燃料供給されていたが、1987年からボッシュ製の機械式となるKジェトロニック燃料噴射装置に変更された。このエンジンは地球40周分の耐久性を持つと言われる程、長期にわたり使われる事を想定された造りとなる。「必要にして充分」といわれるエンジン出力は、ロールスロイス社としては伝統的に公表しない主義となっているが圧縮比9.0をもつヨーロッパ仕様のインジェクション・モデルで238馬力という説がある。組み合わされるトランスミッションは「フェラーリ400i」にも使用されていたGM3速トルコン式ATの「GMハイドラマチック」となっている。足回りは、フロント・ダブルウィッシュボーン+コイルスプリング+スタビライザー、リア・セミトレーリングアーム+コイルスプリング+自動車高調整装置となっている。また198910月のフランクフルトショーで「シルバースピリット」に進化した事で、0.01秒で車体のロールを自動制御する「オートライド」機能の付いた自動可変ダンパーが装備され、走りの安定感がより高まった。ブレーキは11インチ径の、前ベンチレーテッドディスク、後ソリッドディスクを装備。キャリパーはフロントにシングルポッドキャリパーを2つずつ、リアに2ポッドキャリパーをひとつ備える。複雑な3系統油圧ラインをもつロールスロイスのブレーキは、第1系統(倍力装置による)でフロントの前方側キャリパーとリアキャリパーを、第2系統(倍力装置による)でフロントの後方キャリパー、そして第3系統(単独マスターシリンダー)でリアの油圧の一部を受け持つ。これらは航空機用ブレーキからの考え方で、航空機用エンジンに携わったロールスロイスならではと言えるかもしれない。ABSは第1と第2系統のブレーキラインに作用する。タイヤサイズは前後ともに235/70HR15(6J×15)となっている。インテリアはダッシュボードやコントロール類の配置はロールスロイスの文法に則った典型的なものとなる。極めて良質なコノリーレザーとウォールナットの計器盤、くるぶしまで埋まりそうな毛足の長いウィルトン・カーペットによる室内はロールスロイスならではの重厚にして豪奢な味わいをもつ。時計と外気温度計がデジタル表示となった事から「100mphで走行中、一番やかましいノイズは時計の刻む音」というロールスロイスの静粛性を表現した有名なセリフも通らなくなっている。細いリムを持つ大径のステアリングごしに見えるスピードメーターは240km/hまで刻まれ、燃料計を含む4つの小型メーターをひとつにまとめたコンビメーターが右側に配置される。「シルバースピリット」からは、その2つのメーターの間にギアポジションを含むインフォメーションパネルが備わる。ロールスロイスの伝統に従いタコメーターは装備されない。3ATのセレクターはステアリングコラム右側にある細身のレバーでP-R-N-D-I-Lのポジションとなる。Iのポジションを選択すると12速のみの変速となる為、市街地を走る時に有効となり、微妙なスピード調整が容易に出来る。フロントシートは電動調整式となり、ドライビングポジションは、誰でも背筋を伸ばしてアゴを引いた正しい姿勢を取らざるを得ないシート形状となっている。ロールスロイスの後席の居住性は、前席に劣らず快適感を備えた数少ない車種となる。全長×全幅×全高は5270mm×1890mm×1490mm、ホイールベースは3060mm、トレッド前後とも1540mm。車両重量は2245kg、燃料タンク容量は107。新車時ディーラー価格2550万円(1990)。「シルバースピリットⅡ」の生産台数は1152台となり、そのうち左ハンドル車は735台となる。性能値は、0100km/h加速11.1秒、最高速度は202km/hという記録が残っている。ロールスロイスがどれほど、静粛性にこだわっているかを確認するには高速道路を100km/hで巡航するのが良いかもしれない。その状態で2速にシフトダウンしてもノイズレベルは、ほとんど変わらない。事実上、無音といってもいい程の静粛性は、窓まわりの工作の良さを物語る。120km/hあたりからドアミラーの軽い風切り音が聞こえ始めるのは、エンジン音が低いため。3AT100km/h時のエンジン回転数は2130rpm2速に落としても3200rpmにすぎない。スロットルペダルを床まで踏み込んで、キックダウンを促しても、遥か後方で低い底力のある排気音が、微かに聞こえるだけとなる。ATはパフォーマンスより静粛性とスムーズネスを重視しているので、キックダウンは思いきり踏み込まないと効いてくれない。乗り心地はそれまでの「シルバーシャドー」はソフト過ぎると感じられるものだったが、「シルバースピリット」はそれに比べると遥かにフラットといえるものになっている。高い静粛性と快適で穏やかな乗り心地は、どこまでも走って行けそうだ。街中でも意外に取り回しが楽なのは、特徴的に高い運転席からの視界は理想的ともよべる程良いもので、運転操作に肉体的な力をほとんど要さないからだろう。ステアリングは以前のロールスロイス各車よりレスポンスも良く確実とはなったが、ワインディングロードを右に左にと忙しく振り回せる類のクルマではないので、あくまでもステアリングは静かに滑らかに操作し、タイヤを鳴らすような、はしたない走り方はするべきでは無い。SUVが多く走る現代において、サルーンとしては高めの車高と高めのドライビングポジションとなる「シルバースピリット」でも、それほど目立つ大きさとは言えなくなった。それでも「シルバースピリット」を走らせれば、それを造り上げたロールスロイス伝統のクルー工場のベテラン達によるクラフトマンシップを充分に感じられると思う。長く乗り継いでもらえるようにタップリと時間をかけて少しずつ作られた空間に囲まれていると、いわれのない優越感に包まれ、ついつい自然とゆとりのある走り方をしてしまう。またそうする事で新たに見えてくる事があるのかもしれない…