サイズ
長 380.0 cm 幅 172.0 cm 高 113.0 cm
︎ロータス社の創業者であるコーリン・チャップマンは、1947年に大学生でありながら、ガールフレンドであるヘイゼル・ウィリアムズの実家のガレージで、1928年式オースチン・セブンをレーシングカーに改造する事から「ロータス」と命名された車が誕生する。「ロータス」というワードは英語で「蓮」を意味し、チャップマンの傾倒していた仏教思想上「俗世の苦しみから解放され、夢がかなう実」とされる「蓮」にちなんだもの。ロータス社は数多く存在した、英国のバックヤードビルダーと呼ばれる自動車メーカーの中で、その規模やF1での成功を含め、まさしく「夢をかなえた」メーカーと言えるかもしれない。創業者であるコーリン・チャップマンが1982年に54歳の若さでこの世を去った後、ロータス社はゼネラルモータース(GM)の傘下となる。イタリアのカロッツェリア、イタル・デザインによる、ウェッジの効いたロータス・エスプリは、ジャガーXJR15のデザインを手がけた、ピーター・スティーブンスによりリニューアルされ、新生ロータスをアピールした。同時にロータスとしては初のFFとなる2世代目エランを発表するも、思った様に売り上げを伸ばせず経営状況は改善されなかった。1993年、ブガッティ社を復活させた、イタリアの実業家ロマーノ・アルティオーリは、何よりロータスの技術力に魅せられ買収を決意し、大規模な人員削減も無しにロータス社立て直しに臨んだ。この時に誕生したのが「エリーゼ」だ。デザイナーはロータスに在籍していたジュリアン・トムソン、車体設計は当時まだ32歳のエンジニアだったリチャード・ラックハム。この2人が中心となり誕生した「エリーゼ」は1995年フランクフルトショーでデビューする。卓越したシャーシ特性を持つハイドロ・アルミニウム社製のアルミ・バスタブフレームは、航空機用の接着剤で貼り合わせる事により剛性を高めながら、単体重量わずか68kgを達成していた。軽量化はブレーキディスクにまで及び、市販車としては初となるアルミ製ブレーキディスクローターを装備していた。軽量化で高性能にこだわる、いかにもロータス社らしい成り立ちの「エリーゼ」はロータスの系譜を書き換えたクルマとなった。「エリーゼ」の車名はロマーノ・アルティオーリの孫娘の名前から引用され、それはロータス社の歴代ロードカーの「E」から始まる流儀にもならったものとなっている。「エリーゼ」は発売当初、ローバー製エンジンを搭載していたが、フェイスリフトをしながら、トヨタ製エンジンを搭載するようになり、装備を充実させつつ性能アップをはかり進化を続ける事となる。2011年3月のジュネーブショーで正式に発表された「エリーゼ・フェイズⅢ」は、それまで独立していたウィンカーレンズをレッドライトユニットに内蔵し、ボディ各部を小変更する事で、エアロダイナミクスを改善したモデルとなった。ベーシックグレードには、トヨタ製1.6ℓとなる1ZR-FAE型を、ハイパフォーマンスグレードにはトヨタ製1.8ℓの2ZR-FE型にスーパーチャージャーを付けたモデルを設定していた。その中で2017年からラインナップされた「エリーゼスポーツ220Ⅱ」とよばれるモデルをベースに、2020年に日本限定特別仕様車として40台販売されたのが「スペシャルカラーエディション」となる。ボディカラーは全8色の設定、それぞれ5台づつ用意され、ブラックパックとよばれる黒色の軽量鋳造アルミホイールが装備される。またボディ同色特別インテリアカラーパックと特別カラーステッチも装備され、ボディカラーとシンクロしたコックピットの空調ダイヤル周りやシフトゲート周囲の装飾、及びシートのステッチにアクセントとして彩りを添えている。エアコン・フロアマット・クラリオン製オーディオを装備しての新車時価格は699万6000円。パワートレインは「エリーゼスポーツ220Ⅱ」に準じたものとなり、搭載されるエンジンは水冷直列4気筒DOHCでボア・ストローク、80.5mm×88.3mmとなる1798ccの排気量をもつトヨタ製2ZR-FE型に、アメリカのマグナソン社製R900型スーパーチャージャーを装備し、ロータス製ECIでコントロールされたものとなる。性能は最高出力220馬力/6800rpm、最大トルク25.4kgm/6800rpmとなっている。扱いやすさと信頼性にトヨタを感じられるが、エンジンフィールとそのパフォーマンスは、しっかりとロータスらしいものとなっていて、シャーシ性能のみならず、ロータスの技術力の高さを感じさせるものとなる。足回りは、前後ダブルウィッシュボーン/コイル式となりビルシュタイン製ダンパーとアイバッハ製スプリングで構成されたものとなる。ブレーキはフロントにAPレーシング製2ポット対抗キャリパー、リアにブレンボ製シングルポットキャリパーを装備し、ディスクは四輪ドリルドベンチレーテッドディスクとなっている。タイヤサイズは前後異径となる、前175/55R16、後225/45R17サイズが装備されている。それまでタイヤの銘柄はヨコハマ製アドバン・ネオバA048LTSが採用されていたが、2019年モデル以降、新たにアドバンV105が採用されることとなりコンフォート寄りの味付けとされている。ロータスらしく、低い着座位置はカートに乗っている様に地面に近い。そのポジションに座るだけで他の車と見える世界がまるで異なって見える。リクライニング機構の付かない軽量バケットシートは前後スライドのみとなるが、ノンパワーの小径ステアリングを保持しやすい自然なドライビングポジションをとる事が出来る。正面のメータークラスターにはシンプルに大径の針式スピードとタコメーターが配置される。シフトレバーは、メカニカルなスケルトン式が採用され、シフトチェンジのたびにロッドの動きが確認出来るマニアックな造りとなっている。そのシフトフィールはコクコクとキマリ、マニュアルシフトの楽しさを改めて感じられるものとなる。全長×全幅×全高は3800mm×1720mm×1130mm、ホイールベース2300mm、トレッド前1455mm、後1505mmとなっている。車両重量は924kgとなり、初代エリーゼから200kg近く重くなっているとはいえ充分軽量。燃料タンク容量は40ℓ。︎メーカー公表性能値は0→100km/h加速4.6秒、最高速度234km/hとなっている。20年以上、生産され続けてきた「エリーゼ」の最終進化型となる「エリーゼスポーツ220Ⅱ」をベースとする「スペシャルカラーエディション」となるが、「エリーゼ」の完成形と呼ぶのに相応しいロータスとなっている。ただのスポーツ系の車種と一線を画す低いドラポジでスロットルを開けた瞬間に、思った通りに動けるレスポンスと一体感は、このクルマじゃないと絶対に味わえないモノとなる。また軽快でありながらも、高速でのスタビリティは高くハイスピードでのクルージングもリラックスしたドライビングが可能となる。見た目、薄く軽量なバケットシートの快適性の高さはその乗り心地を含めて想像を超えたもの。創業者コーリン・チャップマンの「直線で速いクルマを作りたいならパワーアップすれば良い。何処でも速いクルマを作りたいなら軽くすれば良い」という言葉を具体化したともいえる生産初期モデルから、熟成を重ねる事で洗練されながらも、高性能車として他では味わえない個性をしっかり確立したものとなっている。そこには他メーカーの新型車の開発まで請け負う、ロータスの高い技術力により磨き続けられた性能を感じることが出来る。ロータスに接すると、クルマはとても多くのパーツから成り立つモノで、改めてそれらひとつひとつのクオリティと、それをまとめ上げるチューニングの大切さが思い知らされる。そして軽さは高性能に直接結びつくが、それだけでは無く今の時代に相応しいエコでもある。まさに「夢のなかう実=ロータス」である。