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メーカー
Porsche
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
外装色
年式
1973 年型
走行距離
不明
乗車定員
サイズ
長 cm 幅 cm 高 cm
エンジン形式
排気量
2400 cc
馬力
トルク
車検
ハンドル
駆動区分
輸入区分
中古並行輸入
内装色
燃料区分
ガソリン
幌色

Porsche 911T Targa 1973

7月後半入荷予定

ポルシェ社によるはじめての量産モデル「356」は、1965年までに78千台が生産され「カブリオレ」や「スピードスター」など魅力的なオープンモデルを常にラインナップしながら、メインマーケットとなる北米での不動の人気を博した。オープンモデルは屋根が無い事で軽量化と低重心化を図る事が出来、風を浴びて走れる事と、ボディ構造上エンジンやエキゾーストの音がより明確にキャビンに侵入する事により、スピード感を得やすくスポーツカーにとっては理想的なボディ形状のひとつとなっている。ポルシェ社のロードモデルはスポーツカーである以上、サーキットを意識したクーペボディのホモロゲーション・モデルや、ボディ剛性を考慮したハイパフォーマンスモデルに人気が集中する一方で、オープンモデルの需要もけして侮る事が出来ない程、高いものとなっている。「356」の後継車となる「911」のチーフデザイナーであるブッツィーの愛称で知られる、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェは「911」開発初期の段階から、需要の見込めるオープンモデルを視野に入れてデザインを進めていた。「356」の時とは異なり「911」には、ベースモデルや流用パーツが無いため、設計の自由度は高いが、達成すべき動力性能も高く設定されていた。ブッツィーの思いはことのほか早期に現実のものとなり、市販型「911」クーペの生産が開始されるのと同時期の1965年秋のフランクフルトショーでは「911」のオープンモデルのプロトタイプが公開された。「セーフティカブリオレ」のスローガンのもと、オープンモデルの危険性について議論の高まりをみせていたアメリカ市場を考慮したこのオープンモデルは、約20cm幅の太いBピラーをロールバー状に残すデザインで開発された。安全性を充分に担保した上で、取り外し可能なトップとソフトな樹脂製リアウィンドウ(1969年以降のモデルのリアウィンドウは耐熱のガラス製パノラマウィンドウに変更され、風を受けてドライブ出来るオープンモデルとしての楽しみは半減してしまう)により、手軽にオープンエア・モータリングが楽しめるモデルとして誕生した。新たに「タルガ」と名付けられたこのオープンモデルは1967年モデルとして販売が開始され、1973年迄「911」の各グレードでオーダーすることが可能となり、全生産数のうち約10%が「タルガ」ボディで販売されたといわれている。「タルガ」という車名は、イタリアのシチリア島で1906年から開催されている公道レース「タルガ・フローリオ」が起源となっている。このレースは、シチリア島の玄関口ともいえるパレルモに住む、海運事業で成功した実業家イグナツィオ・フローリオの次男ヴィンツェンツォ・フローリオが創始者とされている。父親の事業を兄のイグナツィオ・ジュニアが引き継いで業績を上げたおかげで、ヴィンツェンツィオは、自身の興味の赴くままに自動車レースに夢中になった。1900年前後にヨーロッパで盛り上がりを見せる、都市間ロードレースに参加するまでになったヴィンツェンツィオは、最新のレース車両を手に入れて上位の成績を残す事も珍しくなかった。ヴィンツェンツィオは自身がスポンサーとなりイタリア本土のブレシアを中心とした「コッパ・フローリオ(フローリオ・カップ)」というレースを開催することで「ル・オート」誌のエディター、アンリ・デスグランジェと出逢う。そしてアンリは地元のシチリア島で、国際格式に添ったロードレースを開催することをヴィンツェンツィオに提案する。シチリア島の道をくまなく調査したヴィンツェンツィオは、パレルモの東方、マドニエ山脈と海岸線を結び、チェルダ、カンポフェリーチェ、コレッサーノ、ペトラリアを巡る1147kmの、後にグランド・マドニエと呼ばれる難攻不落のコースを設定するに至る。ブレシアのコッパ・フローリオのカップ()に対してタルガ()を、その勝利の象徴として始まった「タルガ・フローリオ」は、2回の世界大戦中を除き1973年迄、67年間で57回のレースが開催された。記念すべき第1回大会は190655日の日曜日に開催され、10台がエントリーしてグランド・マドニエを3周することで競われた。早朝から3分のインターバルを置き、次々にスタートをして445kmの長丁場で競われ6台が完走した。レースを制したのはアレッサンドロ・カーノがドライブする「イターラ」で、9時間3222秒で走りきり平均速度は46.5km/hを記録した。ポルシェ社は、このレースの1956年・第40回大会に「550Aスパイダー」で初挑戦し、優勝したのをはじめとして1966年〜1970年迄の5連勝を含む、11回の総合優勝を果たし無敵の強さを誇った。それゆえに「タルガ」は、ポルシェ社とモータースポーツとの深い関わりを表現するのに相応しいネーミングとして採用されている。その「タルガ・フローリオ」の最終開催となる1973年・第57回大会にもポルシェ社はマティーニ・カラーを纏ったワークス3エンジン搭載の「カレラRSR」を2台エントリーしていた。アルファロメオ は3・フラット12エンジン搭載の「ティーポ33TT12」を、この年メイクス・チャンピオンシップ・リーダーだったフェラーリは3台の「312P」を3台持ち込んでいた。またラリーカーとして注目を浴びていたムナーリ/アンドリュー組による「ランチア・ストラトス」のエントリーも話題を呼ぶ中で行われた予選では、172kmのピッコロ・マドニエを33385というタイムで、トップで走り切ったのはメルツァリオ/ヴァッカレラ組の「フェラーリ312P」。レネップ/ミュラー組の「ポルシェ・カレラRSR」は、間にアルファロメオ2台、フェラーリ1台をはさみトップから314秒遅れで5位に終わる。この上位5台のうち1台のアルファロメオは、予選タイムを出した後にコースアウトし決勝を欠場することとなる。翌日、決勝レースでは、スタート開始の朝9時には70万人の観衆でコース周辺は溢れていた。ピッコロ・マドニエを11(792km)で競われる決勝は、20秒のインターバルを置いて予選上位から順番にスタートがきられた。序盤でフェラーリは、路端の石にヒットして1台が、パンクが原因でドライブシャフトを壊してもう1台がリタイア。勝利はアルファロメオ に傾きかけたと思われる中「ティーポ33TT12」は、周回遅れの「ランチア・フルビア」をパスする際に石で出来た標識にヒットしリタイア。これで上位の12気筒レーサーは消え去り、レネップの駆るマティーニ・カラーの「カレラRSR」がトップを快走する。2位の「ストラトス」に追い上げられながらも、最終的には5分近く引き離して6時間54199で、平均速度113.78km/hを記録して優勝する。今回入荷した「911Tタルガ」が生産された年に開催された、最後のタルガ()は、イタリアン・レッドではなく、ジャーマンシルバーに与えられ、その歴史に幕を閉じた。 初期型「911」は、1967年式まで「0シリーズ」とよばれ、大きな変更を受けずに生産される。それ以前のモデルとなる「356SC」の影響と味わいをもちながら2130馬力の空冷フラット6エンジン搭載により130km/h以上での高速クルーズでも、より高いスタビリティを発揮した。1968年の「Aシリーズ」からは、高価となってしまった130馬力の標準モデル「911E」の廉価版として「911T」がラインナップされる。車名の「T」は「ツーリング」の頭文字とされコストダウンの為シリンダーヘッドはアルミとスチールによるバイラル構造では無く、鋳鉄製とされた。8.6という低めの圧縮比(標準型911E9.0)が採用され、おとなしいバルブタイミングにより、110馬力と控え目の出力表示となるが、バルブ径とポート径は160馬力を発揮する「911S」と同サイズの大きなものが採用されていた。これは「911T」の簡素で軽量なボディを、ポルシェがレースのホモロゲーションに活用する事を目論んでいたからといわれている。「911T」の、比較的穏やかなエンジン特性は低速トルクも豊かで扱いやすく、日常使いにアドバンテージを持つと評価された。1969年「Bシリーズ」となった「911」はロングホイールベース化と燃料噴射装置の導入が施される事となった。ホイールベースを従来のものから57 mm延長し、2268mmとすることでオーバーステアなどシビアな操縦性を改善する方向とされ、同時により太いタイヤを装着出来るように、ボディの前後フェンダーには僅かなフレアがつけられた。クランクケースがマグネシウム合金化され「911S」ではアルミ製エンジンフードが採用された。燃料噴射装置については「カレラ6」などレーシングカーからの経験により、ボッシュ製6プランジャー式メカニカル・インジェクションが用いられる。これはアメリカでの厳しい排ガス規制にむけた対策でもあった。「911T」だけはウェーバーキャブレターが装備され、標準モデルとなる「911E」と「911S」にはインジェクションが装備された。1970年の「Cシリーズ」からはボアを4mm広げることでエンジン排気量を2.2とし、クラッチ径も10mm拡大するとともに「911T」のブレーキは、ソリッドディスクからベンチレーテッドディスクに格上げされた。1972年の「Eシリーズ」からは更なる排気量アップが施されフラット6エンジンの排気量は2.4化された。これはストロークを66mmから70.4mmに延長したことによるもので、従来は不足気味だと指摘されることの多かった低速トルクを増強させる結果となる。あわせてクランクケース形状の見直し、コンロッド及びコンロッド・ベアリングの寸法変更が行われ、従来「911S」のみに用いられていたアルミ鍛造ピストンが、全モデルに採用された。圧縮比は「911T」「911E」はともに1.1下げられ、それぞれ7.58.0に「911S」に至っては1.3も引き下げられ8.5となり2.2エンジン時代の「911T」の8.6をも下回る数値となってしまう。1968年からラインナップされてきた「911T」は、それぞれの年代で「クーペ」と「タルガ」ボディで生産され、今回入荷した1973年型、2.4エンジン搭載の「911T」が最終モデルとなっている。時は流れて、2017年、フランクフルトショーに於いて「991-2」型に「911カレラT」として突如「T=ツーリング」を車名にもつ「911」が追加設定され復活を遂げる。これは純粋なスポーツカーファン向けのコンセプトをテーマに、かつての「911T」同様に装備を軽減し、MTLSDを備えた上で20kg軽量化が図られたモデルとなる。オリジナルの「911T」の精神を継承しながらも、異なるのはラインナップ中、廉価モデルとはならずにポルシェ社では贅肉を落としたよりスポーティな911として仕立てているところ。この流れは「718ケイマン/ボクスター」「マカン」にも波及拡大し生産される。今回入荷した1973年型「911Tタルガ」に搭載されるエンジンは、空冷SOHC水平対向6気筒でボア×ストローク84.0mm×70.4mmから2341ccの排気量を得る。ボッシュKジェトロニック燃料噴射装置を備え、7.5の圧縮比から130馬力/5600rpm20.0kgm/4000rpmのトルクを発揮する。組み合わされる5速マニュアルギアボックスは新型の915型とされ、従来の、左側手前に1速を配するレーシングパターンから、右側前方にトップギアをもつ通常のHパターンに変更されている。これにより1速と2速がクランクするのでは無く直線で結ばれることにより、渋滞や低速時の使い勝手は低速トルクアップと合わせて、大幅に改善されたことになる。足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+トーションバー、リア・トレーリングアーム式+トーションバーとなっている。ブレーキは前後ともにベンチレーテッド・ディスクが装備されるが、サーボの備えは無く、それなりの踏力は必要とされるタイプとなっている。このブレーキは高い信頼性をもち、その踏力に応じて斬進的に確実な効きを示すものとなる。ホイールとタイヤサイズは、6J×15サイズのアルミ鍛造によるフックス製のホイールに、185/70VR15サイズが組み合わされる。インテリアは現代まで続く「ポルシェ911」にも通じるメータークラスターを持ちながら、絶品の握り具合をもつ細身の皮巻きステアリングを通して中央には大径のレブカウンターがレイアウトされている。レブカウンターのレッドラインは63006600rpmに置かれ、その右側には250km/hまで刻まれたスピードメーターが配される。空冷時代のポルシェ社製エンジンは、精密機械に例えられオイルの管理はとても重要となる為、レブカウンターの左側には油圧、油温、油量と3つのメーターによりオイルの情報が正確に伝えられる。装備されるメーター類は、視認しやすいVDO製となっている。この「Eシリーズ」では、それまで継承されてきたシート形状にヘッドレストが装備されるクラッシックなスタイルとなるが、翌年からの「Gシリーズ」では、シートバックとヘッドレストが一体化されたハイバック型シートへと移行される。一方「911」伝統となるステアリングポストの左側に位置するキーシリンダーは、モデルチェンジが繰り返されても継承される事となる。細目に立ちあがるピラー類と「タルガ」ボディならではのラウンドしたリアウィンドウにより、全方向とも視界は開けたものとなっている。取り外しが出来るタルガトップは、折り畳む事でコンパクトになりフロントのトランクに手軽に収納可能となる。1人のチカラで簡単に脱着出来るトップは個性的なデザインだけに留まらず、オープンエアの世界にいつでも足を踏み入れる事を可能とする。そして室内のタイト感やボディサイズも併せて「ポルシェを着る」と表現される程、ドライバーには馴染みやすく、スポーツカーの定番といわれるところと耐候性は、クーペモデルと差異は無い。ウィンドシールドをとおしてドライバーズ・シートから見えるヘッドライトの峰は「911」ならではと言える、格別な眺めと言えるものになっている。全長×全幅×全高は、4163mm×1610mm×1320mm、ホイールベース2271mm、トレッド前1360mm、後1342mm、車両重量は1110kgとなる。燃料タンク容量は62で、最小回転半径は5.35mとなる。新車時ディーラー価格は、クーペモデルの「911T」が425万円、アルミホイール、パワーウィンドウを含む「911Tデラックス」で485万円となる。1973年式「911Tタルガ」の生産台数は2292台となる。メーカー公表性能値は「911Tタルガ」の最高速度は209km/hとなっている。ナローボディの「ポルシェ911」は、現代の車列の中ではとても小さく、それでもスポーツカーとして純度の高い高密度な存在感を持っている。今回入荷した1973年型では防錆処理も施され、過ぎてきた年月を感じさせないしっかり感をいまだ維持している。かつてイタルデザインを立ち上げたイタリアのカーデザイナー、ジョルジェット・ジュジャーロは、1972年型の「911タルガ」を新車で購入している。きっかけは、当時フォルクスワーゲン本社に足を運んでフェルディナント・ピエヒと直で仕事をする中で、ある日「乗ってみないか?」と誘われた事だという。走り出して僅か数メートルでグッときて買う事をジュジャーロだったが、そのモデルははじめから「タルガ」と決めていたという。クーペとカブリオレの融合した完璧で個性的なデザインから、自身が風を浴びながら走行するシーンを、すぐに想像出来たと言われている。その時の「タルガ」のボディカラーも今回入荷した車両と同じく黒だった。ドアを開けてドライバーズシートに腰を下ろし、ドアを閉めた瞬間から外界と隔絶されるような感覚を覚える密閉感は「タルガ」ボディであっても、他の「911」と変わらない。床から生えたクラッチを踏んで左側前方になる1速にギアを送り、クラッチをエンゲージしてみる。低速トルクが厚く感じられる「911T」のエンジンは他のモデルに比べスタートは容易に感じられる。クラッチのデリケートな「911」なので意識して、アイドリングより少し回転を上げ、そっと繋いで動き出し、完全に繋がった段階でアクセルを開け始めるのが「911」の乗り方とされている。エンジンパワーの数値より格段に強力なトルク感で容易に速度を増していく感覚は、RRの「911」ならではといえるだろう。そしてパワーだけで無く、その速度感とバランスのとれたステアリングやブレーキのダイレクトなフィーリングはスポーツカーとは何なのかを語っている様に感じられる。その上で「タルガ」ボディは、容易にトップをハズす事でオープンエア・モータリングを楽しむ事が出来る。かつてジュジャーロが想像した世界がいつでもそこにある。普段使いのタウンスピードから、高速での長距離移動、またワインディングロードでのスポーツドライビングを含め、いかなる場面でも高いドライバビリティを発揮する「911」は、長くつき合える1台となっている。オープントップにより魅力的な空冷エンジンサウンドをBGMに風と戯れる事をも手に入れ、いにしえのロードレースに想いを馳せるのも、スポーツカー好きにとっては充実した大切な時間となるだろう…