サイズ
長 508.0 cm 幅 190.0 cm 高 147.0 cm
︎BMW社初となるハイブリッド車として「アクティブハイブリッド7」がデビューしたのは2009年、そのベースとなったのは、5世代目7シリーズとなるF01型とよばれるモデルとなる。W205型メルセデスCクラスのデザイナーでもある、カリム・ハビブによるボディデザインが採用されていた。先代となる4世代目7シリーズのクリス・バングルのアクの強いボディデザインに比べると、コンサバティブな方向に改められたモダンなボディデザインとなっている。そのラインナップの中からV8ツインターボを搭載する「750i」をベースに、メルセデスベンツ社と共同開発したモーターとバッテリーを搭載しマイルドハイブリッドモデルとして登場したのがF04型とよばれる、先代「アクティブハイブリッド7」だった。そして2012年9月のフランクフルトショーにおいて7シリーズのマイナーチェンジに合わせて、その進化型となる「アクティブハイブリッド7」がデビューした。その外観からわかりやすい変更点は、新たに採用されたLEDヘッドライト。ライトリングもLED化され、ロービームとして機能する。またフロント下部のグリル形状やリアランプも形状変更された。また安全機能も充実し①衝突回避・被害低減ブレーキ②車線逸脱警告③アクティブクルーズコントロール④前車接近警告の4機能からなる「ドライビング・アシスト・プラス」が盛り込まれた。搭載されるハイブリッドシステムも大きく様変わりし、先代のマイルドハイブリッドシステムからフルハイブリッド(ストロングハイブリッド)システムへと進化した。このパワーユニットは2011年、東京モーターショーで発表された「アクティブハイブリッド5」に搭載されていたものと同じものを採用している。先代の「アクティブハイブリッド7」のマイルドハイブリッドシステムを初代、「アクティブハイブリッドX6」に搭載された、BMW、メルセデスベンツ、GMの3社により開発された2モーターシステムが2世代目となり、BMW社としては3世代目となるハイブリッドシステム。初代はいかにもBMW社らしいパフォーマンス志向となっていたのに対し、3世代目のシステムは性能を維持しつつ燃費向上を狙ったものとなっている。このハイブリッドシステムは、8速ATともどもギアボックスメーカーのZF社が開発、及び供給するものとなっている。BMW社が採用しているZF製8速ATと同寸法のギアボックスユニット内にハイブリッドのメカニズムを納めたもので「アウディA6ハイブリッド」にも採用されている。55馬力と21.4kgmのトルクを発生するモーター1基と2つのクラッチを用いるパラレル方式となっている。フルハイブリッドとなる事で、先代では出来なかったモーターのみによる走行が可能となり、最長4km、その時の最高速度は60km/hまでとなっている。搭載されるエンジンは、先代のN63B型4.4ℓV8ツインターボから、「740i」に搭載されるN55B型3ℓ直6ターボに変更された。ボア・ストローク84mm×89.6mmをもつ、2979ccの、このエンジンは、DOHC24バルブヘッドをもち、10.0の圧縮比から320馬力/5800rpmと45.9kgm/1300〜4500rpmのトルクを発揮する。「740i」の326馬力からは微減となるがツインスクロール・ターボ、高精度ダイレクトイグニッション、バルブトロニック、吸排気ともに可変バルブタイミングとなるダブルVANOSを備える直噴エンジン。このエンジンとモーターによるシステム合計で354馬力/51kgmは発揮するハイブリッドシステムとなっている。「アクティブハイブリッド5」と同じユニットとなるが120kg重い車重に合わせてECUやターボチャージャーのチューニングにより高性能化されている。JC08モードで14.2km/ℓを公表し、同時期のハイブリッドの老舗が生産する「レクサスLS600h」の396馬力で11.6km/ℓの性能を鑑みれば、「アクティブハイブリッド7」がプレミアムラグジュアリーセダンの中でいかに優れたものであるのか、BMWの狙いどおりの仕上がりといえるだろう。足回りは、前・ダブルウィッシュボーン式+コイルスプリング、後・インテグラルアーム式+エアスプリングでセルフ・レベリング機能が装備される。前後ともにスタビライザーが備わる。ブレーキは前後ベンチレーテッドディスクを採用。タイヤサイズは前245/45R19、後275/40R19となっている。インテリアはフラッグシップだからといって、とりわけラグジュアリーな意匠や雰囲気にする事無く、BMW車に乗った事があるオーナーであれば全く違和感無く、すぐに走り出す事が出来る。ビジネスライクでつまらないと感じられるかもしれないが、各部の動的・静的質感は極めて高くフラッグシップとして同クラス・他車に対して見劣りする様な印象は見受けられない。ハイブリッド車とはいってもドライバー自身が常にこのクルマを動かしているという感覚を実感出来るものとなっている。エンジン音はけしてうるさくは無い音量となるが、ハッキリと耳に届き、ペダルとステアリングにインフォメーションとよべる範疇の振動が伝わる。現代の技術を持ってすれば抑える事は可能となるが、あえてそれを残すところがBMW社らしいところ。ステアリングを通して見えるメーターパネルは液晶パネルではなくアナログ式の、左に、航続可能距離を示すメーターを含む260km/hまでの大径スピードメーターが、右にはハイブリッド車らしくバッテリーのチャージメーターを含む6500rpmからイエローとなる7500rpmまでの大径タコメーターが備わる。メーターリングの下部は欠けていて、含まれる下部のメーター部分は液晶表示となっている。静かにハイブリッド車である事を演出されている部分となる。シフトレバーはBMW車で馴染みのある、パーキングブレーキがPボタンの「R-N-D」の表示から、左に倒すとマニュアル操作が可能となる。シートは全ての調整が電動式となり、長距離でのドライブでも疲れにくい身体の負担が少ない造りとなっている。トランクはリチウムイオンバッテリー搭載の為本来の460ℓから360ℓに減少している。全長×全幅×全高は5090mm×1900mm×1475mm、ホイールベース3070mm、車両重量2080kgとなり、前後重量配分は48.5:51.5となる。フロントエンジンでありながら少しでもリアのトラクションを確保したいBMW社の考えが垣間見える。燃料タンク容量は80ℓ、新車時価格は1198万円となる、メーカー公表性能値は、0→100km/h加速5.7秒となり「アクティブハイブリッド5」の5.9秒を凌ぐものとなる。︎他のBMW車と同様「アクティブハイブリッド7」もドライブモード切り替えが可能となっている。「ECO PRO」「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」と4つのモードから走りのテイストを選択出来る。デフォルトは「コンフォート」となり市街地走行も早めにシフトアップしダンパーの減衰力も適度となる設定。BMW車のイメージ通りに走らせたければ「スポーツ」モードを選べば、エンジン回転数は高めとなりステアリングの操作力、足回りもスポーティなものとなる。「スポーツ+」モードは「スポーツ」モードに加えDSC(ダイナミック・セーフティ・コントロール=横滑り防止装置)をカットする事を含むので、公道よりサーキット向けといえるかもしれない。「ECO PRO」モードでは低燃費、省電力に特化しエンジンやコンフォート機能に制約のかかるモードとなる。「アクティブハイブリッド7」のエンジンと電気モーターによるパワーユニットはベースとなる「740i」の充分なパフォーマンスに、電気モーターの性能が加わる事で更に低速トルクが増強され、力強く滑らかな走りを体感することが出来る。2つのクラッチのやりとりによる振動もあまり気にならず、細やかな制御がなされていることがわかる。また80km/h以上でのアクセル・オフによる「コースティング」機能が備わり、積極的にエンジン停止によりエネルギーを回生するモードに入る事で、バッテリーに電気が貯められる。2トンある車重により「アクティブハイブリッド3」の様に軽快とはいえないが、プレミアムラグジュアリーセダンとしては、ハイブリッドシステムによる厚いトルクにより中間加速も鋭く、8速ATによるきめ細かなギア選択により、高速道路においても歯痒い思いをする場面に遭遇することは少ない。ハンドリング面においてはスポーツセダンをつくり慣れたBMW社らしく、ボディの大きさをあまり感じさせない回頭性を味わえる。3、5シリーズ同様、ステアリングを切るとフロントがイン側に引きつけられる様にコーナーに入っていく。フロントだけで曲がろうとするのでは無く、ボディ全体がコーナーに沿う様についてきて乗員はロールをあまり強く意識することは無い。「アクティブハイブリッド7」は他の7シリーズに採用されるインテグレーテッド・アクティブステアリング(=4WS)が装備されなくても、BMW車らしい世界を味わう事が出来る。ハイブリッドであっても、これほどまでにステアリングを握るドライバーに楽しさを提供できるラグジュアリーセダンはBMW社ならではといえるものになっている。