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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
外装色
ライトアイボリー
年式
1968 年型
走行距離
96250km
乗車定員
4 名
サイズ
長 416 cm 幅 161 cm 高 130 cm
エンジン形式
排気量
1991 cc
馬力
130
トルク
17.8
車検
令和6年6月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
中古並行輸入
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

ポルシェ初の6気筒エンジンの開発は、1959年に設計が始まり、2の排気量から目標出力を130馬力に定め、より大きなボディをもつ新型車両に搭載しても「356」を上回る動力性能を目指したものとなる。タイプ745というプロジェクトナンバーが与えられたこのエンジンはボア×ストローク80mm×66mmという、著しくオーバースクエアなディメンジョンをもち1991ccの排気量をもっていた。水平対向6気筒のこのエンジンは、クランクシャフト上下にバルブ駆動用のカムシャフトを、それぞれレイアウトしタペットとプッシュロッドを使ってバルブを駆動するOHV式を採用する独創的な構造となっていた。空冷用の冷却ファンを並列に2基備え、サイドドラフトキャブレターにより120馬力/6500rpm17.0kgmのトルクを発揮するにとどまった。複雑な構造と性能的にも満たされないタイプ745エンジンに見切りをつけたポルシェは196112月、レーシングエンジン設計担当のハンス・メツガーを加え新型となるタイプ821エンジンの設計をはじめる。シンプルにSOHC方式の水平対向に改められ、高い耐久性と先々の排気量拡大を想定しながら、新設計の鍛造クランクシャフトが採用され、ウェットサンプ式のこのエンジンは19639月に発表された「ポルシェ901」に搭載された。エンジン出力は110馬力程度だった事から、更なる性能アップの為にメツガーは、フェリー・ポルシェの甥にあたるフェルディナント・ピエヒを迎え、カムシャフト駆動用チェーンのテンショナーをスプリング式から油圧式に変更し、スキッドパッドでの走行試験の結果から、ドライサンプシステム採用に至った。新たに901/01という型式名を与えられた新型6気筒エンジンは、シリンダーライナーに鋳鉄、アルミフィンをもつアルミ製アウター材と組み合わされた2つの金属によるバイメタルを意味する「バイラル」構造が用いられた。ソレックス製トリプルスロート・ダウンドラフトキャブレターにより9.0の圧縮比からDIN規格のネット値で130馬力/6100rpmを発揮し、SAE方式のグロス値では148馬力を発揮することとなった。19643月のジュネーブショーでの展示を経て、8月に最終量産型の試作を始めると、プジョーから「車名の中央に0を持つ三桁の数字は登録済み」とクレームを受け、10月に「911」と改名するに至り、現在のポルシェの存在からは考えられない幕開けとなった。初期型「911」は1967年式まで、大きな変更を受けずに生産され「0シリーズ」とよばれている。それ以前のモデルとなる「356SC」の影響を強く残した味わいをもち、2130馬力エンジン搭載により130km/h以上での高速クルーズでも高いスタビリティを見せた。ダッシュボード下にウッドパネルを張り込み4本スポークのウッドステアリングが採用され「911」特有の5連メーターは、メッキのリムにグリーンのレタリングが施された「356」由来のデザインとなっている。ハンドリングは、急なスロットルオフは直進安定性に影響を与え、タイトコーナーではオーバーステア傾向に注意が必要とされた。1968年式となる「Aシリーズ」からは、130馬力の標準モデルを「911L」とし、廉価版グレートとして「911T」がラインナップされる。また1967年からラインナップに加わった160馬力を誇る、高性能バージョン「911S」も継承され「T」「L」「S」の3モデル体制が構築されていた。今回入荷した1968年式「911L」の、車名に付く「L」は「Luxury(ラグジュアリー)」の頭文字とされ、それまでの標準モデルとはいえ、コストダウンと軽量化の為、鋳鉄製シリンダー採用や、装備を省かれた「T」グレードとの差別化を図ったとされる。1968年式の「Aシリーズ」は「911」登場時からのプレーンなフェンダーをもつ最終年式となり、翌年の1969年式の「Bシリーズ」からはフェンダーアーチにフレアが施されたことから、本当の意味でのナローボディをもつ最終モデルともいえる存在となっている。今回入荷した車両は1968年式「911L」となり空冷SOHC水平対向6気筒で、901/05型とよばれるエンジン型式をもつ。ボア・ストローク80.0mm×66.0mm1991ccの排気量と9.0の圧縮比から130馬力/5800rpm17.8kgm/4200rpmのトルクを発揮する。「911」最初期モデルでは、トリプルチョークのソレックス製40PI型キャブレターを装備した901/01型エンジンが採用されていたが、3000rpm付近でのエンジンの息つきや、ナーバスな始動性、整備性などの点から、トリプルチョークのウェーバー製IDA3C/3C1キャブレターに換装された901/05型エンジンになったといわれている。このエンジンは、ソレックス・キャブレターを装備したエンジンとスペックでは変わらないが、より洗練されたエンジンの回転感が味わえる。組み合わされるギアボックスは、902/1型とよばれる5MTとなる。2速から5速までが通常のHパターンを構成する5速ギアボックスで、強いセンタースプリングに抗するように、一番左側のスロットに手前に1速、向かい合う前方にリバースが位置する。このシフトパターンは2.4モデルに新型のギアボックスが採用されるまで用いられることになる。1速から2速の変速にはクランク状にギアレバーを動かすイメージとなるが、1速にシフトした後、手を離すと自然とセンタリングスプリングにより、ギアレバーは右側に押し出されることで、2速へのシフトアップはそのまま前方に押し出すだけで完了する。続く3速へのシフトアップは、ギアレバーを再び手前に引き戻すだけとなり、はじめに1速のポジションにギアレバーをセットすれば、後は縦方向の前後に一往復するだけで123速とシフトアップが可能となる。2速から1速へのシフトダウン時は、シフトレバーをクランク状に動かさざるを得ないが、事前に1速ギアの入り口にあてがっておけばポルシェ・シンクロの働きにより、吸い込まれる様に簡単にシフトを完了することが出来るものとなっている。足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+トーションバー、リア・トレーリングアーム式+トーションバーとなる。ブレーキは前後ともにソリッド・ディスクが装備される。ホイールは5.5J×15インチサイズのスチール製となり、センターにポルシェのエンブレムがエンボス加工されメッキが施された美しいキャップが備わる。組み合わされるタイヤは本来165HR15サイズとなるが、今回入荷した車両には185/70VR15サイズのミシュランXWXが装備されている。インテリアは空冷エンジン搭載の「911」を通して採用されるメータークラスターを持ち、1968年式の「Aシリーズ」からは、それまでの「356」のイメージを継承したメッキリムにグリーンのレタリングをもつデザインから、以降続く、黒い盤面に白いレタリングを持つVDO製メーターが備わる。細身の革巻きとなる4本スポークのステアリングを通して中央には大径の8000rpm迄刻まれたレブカウンターが置かれ、そのレッドラインは6800rpmとされ、右側には250km/hまで刻まれたスピードメーターが備わる。「911」伝統となるキーシリンダーはステアリングポストの左側に位置し、黒基調となるインテリアは整然としていて、ダッシュボード下部には目立たないようにエアコンの吹き出し口が装備されている。レザーで覆われたシートは座り心地は硬めとなるが、しっかりとドライバーの身体を支えてくれるホールド感をもつ。細目に立ちあがるピラー類により、全方向とも視界は開けたものとなり、室内のタイト感やボディサイズ感も併せて「ポルシェを着る」と表現される程、ドライバーに馴染みやすく、狭い場所での取り回しのしやすさも「911」のアドバンテージとなっている。ウィンドシールドをとおしてドライバーズ・シートから見えるヘッドライトの峰は「911」ならではと言える、格別な眺めと言えるものとなる。全長×全幅×全高は、4163mm×1610mm×1320mm、ホイールベース2211mm、トレッド前1367mm、後1335mm、燃料タンク容量62で、最小回転半径5.35m、車両重量は1095kgとなる。1968年式「911L」を含む1965年〜1968年までのショートホイールベースを持ち130馬力の2フラット6エンジンを搭載する「911クーペ」の生産台数は10904台となっている。メーカー公表性能値は0400m加速16.7秒、最高速度210km/hとなっている。ポルシェは「911」を開発するにあたり「356カレラ2」の動力性能を目標にしていたという説がある。例えば130馬力というエンジン出力は「356カレラ2」と一致する部分となっている。ドアを開けて「911」に乗り込むと、明らかに「356」より低いシートポジションとなり、それぞれが搭載する4気筒と6気筒のエンジンの感触の差は歴然としている。6気筒となる「911」からは4気筒と比べ、そのスムーズな回転感と俊敏なレスポンスも味わう事が出来る。その上ギアボックスは5段化される事で、パワーバンドを有効に活用出来、ワインディングロードでの走りやすさも際立っている。最高速度が「356カレラ2」の200km/hから10km/h伸びているのは「911」の方がエアロダイナミクスに優れたボディデザインとなっているからだろう。設計年次の新旧は様々なところに及び、新しい程ドライバーに優しく、よりイージーでスムーズな味付けが可能となる。これが技術の進化といえるのかもしれないが、クルマを走らせる事に喜びを見出すドライバー達が必ずしも新しいモデルをチョイスするとは限らないところがクルマ趣味の楽しいところといえるかもしれない。今回入荷した1968年式「911L」は、2211mmという登場初期から続いてきたショートホイールベース・モデルの最終型となる。翌年の1969年式の「Bシリーズ」からは、57mm延長されたホイールベースをもち、よりスタビリティ重視のコントロールしやすい方向にシフトした「911」となる。ナローボディの「911」ならではの端正な佇まいと軽快極まる操縦感覚はショートホイールベース・モデルならではとなっている。低中速コーナーでは、ステアリングを切る分だけノーズが内側に入り、まるでアンダーステアを感じさせない素早い反応を見せるハンドリング性能が楽しめる。空冷SOHC水平対向6気筒エンジンは、オルガンタイプのスロットルを踏むと同時にレブカウンターの針を軽々と跳ね上げる抜群のレスポンスをもつエンジンの切れ味と併せて、ライトウェイトスポーツ的な魅力に溢れた「911」となっている。このテイストが好みとなるドライバーにとっては、何物にも変え難い「911」となるだろう。年式をおうごとにツーリングカー的要素を強めていく「911」のラインナップの中にあってソフィスティケートされた部分の少ないソリッドなスポーツカー感覚を味わえるショートホイールベースの「911」は、シリーズの中でも個性際立つモデルとなっている。