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ティプトロニックS
1350
万円
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メーカー
ミッション
オートマ
グレード
ティプトロニックS
ボディタイプ
外装色
ポーラシルバー
年式
1995 年型
走行距離
22310km
乗車定員
4 名
サイズ
長 424 cm 幅 173 cm 高 130 cm
エンジン形式
排気量
3600 cc
馬力
285
トルク
34.0
車検
令和6年12月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
ディーラー
内装色
グレー
燃料区分
ガソリン
幌色

「ポルシェ911」のデビューにあたり、当時のポルシェ社の社長であり「911」開発計画の最高責任者であったフェリー・ポルシェは「ポルシェの哲学である『最も純粋なカタチでのドライビング』を基調に、それまでの「356カレラ」に匹敵する高い性能を備え、より高い居住性と実用性を備えたクルマとして設計した」と説明している。フェリー・ポルシェが目指したのは、より高いパフォーマンスと優れたコンフォート性能であった。それを達成するために空冷水平対向6気筒エンジンが開発され、全く異なるサスペンションシステムを備える、ポルシェ初のモノコックボディが誕生した。「911」は「356」とは異なり「VWビートル」からの完全なる決別を表明した形をとりながらエンジン搭載位置は、ポルシェの哲学に従いトラクションに優れるリア・エンジンが採用されていた。19639月に発表された「ポルシェ901(初めて世に出た911は、はじめは開発コード番号901を車名に使用したが、プジョーから3ケタの真ん中が0になる番号は、商標登録してあるというクレームにより、後に911と改名される)」は、マクファーソン・ストラット式をフロントに、ダブルジョイントのセミ・トレーリングアーム式をリア・サスペンションに用い、前後ともにコイルスプリングでは無く、トーションバーを採用、ステアリング・システムはラック&ピニオン式、ブレーキ・システムは4輪ディスクブレーキとされ、そのボディ・デザインは、フェリー・ポルシェの長男であり、フェルディナント・ポルシェの孫にあたるブッツィーとよばれるフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェが担当していた。「911」は、ブッツィーにとって、ほぼ同時期に発表された「カレラ904GTS」とともに、最初にデザインしたクルマだといわれている。「ポルシェ911」は、フェリー・ポルシェのもとに、フェルディナント・ピエヒ、ハンス・メツガー、ヘルムート・ボット、ペーター・ファルク、フェルディナントブッツィーポルシェといった、類い稀なる才能をもつ技術者達の結集により、創出されたモデルとなっている。この主要スタッフの誰もが、一流のプロフェッショナルであるとともに、エンスージャストであったという事が、誕生した「ポルシェ911」をスポーツカーとして成功に導いていく大きな要因となっていた。それから「911」は、様々な時代の変化に晒されながらも、エンジン排気量をアップしながら常にトップレベルの性能を維持しながら、排ガス規制やオイルショックを乗り越え、1980年に初めて採算割れとなってしまった会社の危機を救い、フルモデルチェンジの危機を乗り越え生産され続けてきた。長きにわたる「911」の歴史も、1980年代終盤になるとエクステリア・デザインの印象を変えずに、大きくモダナイズされた新たな「911」として「964」型にモデルチェンジが行われる。およそ85%が完全なる新設計とされた「964」型は、サスペンション形式はそのままに、コイルスプリングが採用され、4WDシステム、パワーステアリング、格納式リアスポイラーや「ティプトロニック」とよばれるトルコンATなど、大きな進化を「911」にもたらした。しかし1988年、ブラックマンデーにより世界的に経済不振に見舞われた事で「964」型は、生産されていた6年間で63762台しか生産されず、ポルシェは創業以来、最も経営的に苦しい時代を迎えてしまう。それでもポルシェは開発の手を緩める事はなく、ブランニューモデルの「ボクスター」や、全くの新設計となる「996」型デビューの時まで、登場から30年を迎える空冷エンジンを搭載したモデルの高い性能を維持するべく「911」の集大成として、新たに「993」型を19939月のフランクフルトショーで発表した。「911」のイメージを色濃く残していた「964」型のエクステリアデザインに対し「993」型では「911」の特徴となる丸目のヘッドライトをスラントさせ、そこからつながるフェンダーの峰が低くされるとともに、前後のバンパーは完全にボディと一体化された。グリーンハウスのフォルムは「911」のイメージのまま継承されるが、フロントウィンドウで3mm、サイドウィンドウで7mm、外側に出される事でフラッシュサーフェス化がはかられ、拡幅されたリアフェンダーは「911」らしい丸みを表現しながらも、よりモダナイズされた印象に生まれ変わった。このボディデザインはBMWで「Z1」のエクステリアデザインを担当し「968」や「ボクスター」のデザインでも知られるハーム・ラガーイによるものとなる。開発をまとめたのは「964」型でも手腕を発揮したウルリッヒ・ベッツが担当、ベッツはGMのボブ・ラッツや、フォルクスワーゲン・グループを率いたフェルディナント・ピエヒと並び称される筋金入りのカーガイで、2000年にはアストンマーティンのCEOとなる人物。ハーム・ラガーイとウルリッヒ・ベッツは、デザイナーと開発者という形でBMW在籍時代に「Z1」を作り上げ、後にポルシェに移籍して同じチームで活躍、「フェリー・ポルシェが80歳を迎えるバースデー・プレゼント」として1989年にプロトタイプモデルの「ポルシェ・パナメリカーナ」を開発、同年のフランクフルトショーで発表した。「ポルシェ959」にも似たフロント・デザインをもつ「993」型となるがヘッドランプ回りやリアフェンダーの造形に「パナメリカーナ」の面影も垣間見える。「964」型から約8割のパーツがリニューアルされた「993」型は、ワイパーブレードの回転軸の位置変更により、払拭能力を上げるとともに、時代の進化にあわせてCd0.33へと空力特性を向上させ、より高速走行へ向けての対策が施された。また、避けて通る事の出来ない環境問題に対しても、ボディ塗装を水性塗料(メタリック系は除く)に置き換えたり、エアコンのフロンレス化や、プラスチックパーツにはリサイクル可能なマテリアルを採用、コンフォート性や動力性能面以外にも配慮されたモデルとなっている。993」型「911」が搭載するエンジンは、空冷水平対向6気筒SOHC12バルブとなり「964」型が投入された時に新開発されたユニットの進化型となり、ボア×ストローク100.0mm×76.4mmから3600ccの排気量を得る。11.3の圧縮比とボッシュ・モトロニック燃料噴射装置、ツインイグニッションシステムを装備して、最高出力272馬力/6100rpm、最大トルク33.7kgm/5000rpmを発揮する。「964」型から22馬力と2.1kgmのアドバンテージをもつ、このエンジンはコンロッド、ピストン、バルブなどムービングパーツの軽量化が図られ「911」としては、初めてバルブ系に油圧ラッシュアジャスターが採用されている。定期的なバルブクリアランス調整を必要とせず、メンテナンスフリー化を進めながら、メカニカルノイズを低減し、澄んだエンジンサウンドと「911」らしいエンジンレスポンスを両立したものとなる。また、これまでリアエンドに横向きにレイアウトされたひとつのメインマフラーに頼ってきた「911」だったが「993」型では、排ガスと騒音対策にも重きを置いて排気を2系統に分け、左右それぞれ2つの触媒とマフラーを装備している。組み合わされるトランスミッションはゲトラグ製6MTと、ZF製電子制御式トルコン4ATの「ティプトロニック」となる。今回入荷した「911カレラ ティプトロニックS」では、1995年型からの改良により「ティプトロニック」が「D」レンジでのシフトプログラミングがアップデートされるとともに、シフトノブによる任意のギアチェンジに加えて、ステアリング上についた「+/-」のスイッチでのギアチェンジが可能となっている。また、エンジンにも手が加えられピストン、コンロッドが軽量化されるとともに、足回りのアライメントやブレーキパッドの材質も変更を受けた。そして1996年モデルの「993」型では、1995年に登場した「993カレラRS」に採用された「ヴァリオラム」とよばれる可変エアインテーク・システムと、バルブの大径化(吸気側4950mm、排気側42.543.5mm)、カムシャフト及び点火系のモディファイにより285馬力/6100rpm34.7kgm/5250rpmにパワーアップされる。このエンジンは、特に2500rpm4500rpmの間でトルクが太らされ2000rpmからでも鋭くなったレスポンスとトルク感の変化が感じられる。更に5000rpmに到達すると劇的にサウンドが変化し、爽快にレッドゾーンまで回りきり、まさに空冷水平対向エンジンの最終進化型とよべる完成度をもつ内容となる。足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+コイルスプリング+スタビライザー、リア・マルチリンク式+コイルスプリング+スタビライザーとなっている。LSAとよばれるこのマルチリンク式の足回りは、軽量(Light)、安定(Stable)、敏速(Agile)の頭文字を取ったもので、当時、ポルシェが開発中であった大型4ドアモデル「989」用に採用予定だったシステム。5本のアルミ製サスペンションアームで支持されたリアタイヤは、特にコーナリング中での安定感を向上させるとともに、アルミ製サブ・フレームを介してボディに結合されている為、硬めでも快適性を損なう事なく、ニュートラルな挙動を維持出来るようになっている。これにより「911」特有のアクセルオフ時の荷重変化によるリバースステアに対しても寛容性の広さをもつ。定評のあるブレーキシステムは、前後共にベンチレーテッド・ドリルド・ディスク(304×32mm、後299×24mmサイズ)を装備、ブレンボ製4ピストン・モノブロックキャリパーと組み合わされる。ABS-5とよばれる当時最新のボッシュ製ABSを装備することで、1.2Gの減速を可能とし耐フェード性も高い。100km/hから静止までの時間は僅か2.7秒、160km/hからは4.1秒、そして200km/hからでも5.3秒という高い制動力を持つ。タイヤサイズはフロント205/50ZR17、リア255/40ZR17となり、それぞれ7J9Jのホイールと組み合わされている。インテリアは「911」登場時から踏襲された基本的なレイアウトにかわりなく「964」型からも大きな変化が感じられないデザインとなる。「993」型の特徴とすれば、フルサイズのエアバッグが内蔵されながらも、コンパクトなおさまりを見せる4本スポーク・ステアリングでBMW、オペルとの共同開発されたものとなっている。そのステアリングを通してドライバー正面には大径のレブカウンター、その右にはスピードメーターを含む、5連メーターが見慣れたクラスターにおさまる。「ティプトロニック」モデルでは「964」型と同様に、スピードメーター内にギアポジション・インジケーターがレイアウトされている。メーター類は全てVDO製となり、瞬時に視認しやすいレタリングとなっている。ステアリングポスト左側にはイグニッションキーが備わり、ハイバッグ・タイプのレカロ製シートの形状も「911」ならではのイメージとなるが「993」型では新たにデザインされたものが採用されている。ドライバーズシートからの視界は、細く立てられたピラー類により良好となるが、これまでの「911」の特徴であったフロントフェンダーの峰は、低くスラントした形状となる為、ウィンドウスクリーン越しの眺めは大きく変化したと言えるかもしれない。ペダル類の配置は変わる事なく「911」伝統の床からはえるオルガン式となり、ドアを閉める時の硬質な「キンッ!」という響きもそのまま継承されている。全長×全幅×全高は、4525mm×1730mm×1300mm、ホイールベース2270mm、トレッド前1405mm、後1445mm、車両重量1390kg(ティプトロニック)、燃料タンク容量74.5、最小回転半径5.9mとなっている。新車時価格は「993」型登場時の6MTモデルで1065万円、ティプトロニック搭載モデルは100万円高額となる1165万円だった。1994年から1995年までの「993カレラ2/4」クーペモデルは20604台が生産された。メーカー公表性能値は、0100km加速6.6(6MTモデルは5.6)、最高速度265km/h(6MTモデルは270km/h)。カーグラフィック誌による実測テストでは、6MTモデルによるもので0100km/h加速5.0秒、0400m加速13.4秒、01km加速24.5秒、最高速度262km/hであった。「ヴァリオラム」が採用されたモデルでは、それぞれ5.2秒、13.5秒、24.5秒、263.2km/hとほぼ互角のタイムが計測されている。「ヴァリオラム」搭載モデルのメーカー公表性能値は0100km/h加速5.3秒、最高速度275km/h(6MTモデル)となる為、実測テストの結果は、計測時の気温やタイヤの差が考えられる。964」型から継承されたドアを開けてシートに腰を下ろし、ドアを閉めると「キンッ!」という音とともに回りの世界から切り離されたような密閉感に包まれる。よく言われる金庫の中の様なと表される「911」だけの空間が味わえる。左手でイグニッションキーを回してエンジンをスタートさせると、背後からのサウンドとともにエンジンが目を覚ます。雑音が排除されたといわれてもイメージ通りの空冷サウンドと「911」らしいレスポンスに変わりはない。それでも「964」型と同じく「Gモデル」の時代に比べれば、遥かに洗練されたモダンな印象となるのだろう。「Dレンジ」を選んで走り出してみると、大きな質量が十二分にリアアクスルに掛かるリアエンジン方式がもたらすトラクションの快感が味わえる。スロットルを僅かに開ける瞬間、シートに支えされた腰に低い位置から強力に押し出される感覚と、それに続く加速感は「911」ならではのものとなる。その上で「Gモデル」から「964」へ進化した以上に「993」型のリア・マルチリンク・サスペンションは高い安定感と良好な乗り心地を感じさせてくれる。ヤグラの様に立体的に構築された大型サブフレームに繋がれた、多数のサスペンション・アームにより支えられたハブキャリアは、対地キャンバーやトー角を理想的に維持し続け、硬度が調節されたラバーブッシュの弾性変化を利用してホイール・アライメントが管理されている。このリア・サスペンションの進化が「911」にもたらしたのは、桁違いともいえる程の安定感を伴ってワインディングロードを存分に楽しむことを可能とした事。そのリアへの荷重を常に気にしていた注意力を、むしろフロントタイヤの接地感へ向けて走る必要性を感じるかもしれない。高速コーナーのあるサーキットに於いては最終的にリアオーバーハングの大きな質量が影響力を表出し、最終的にはリアのグリップ状態に神経を注ぐ場面もあるにせよ、公道上ではまさにオンザレールの安心感を味わう事が可能となっている。また、このリア・サスペンションにあわせる様に「964」型から進化したパワーステアリングの応答性が、ドライビングの楽しさに拍車をかける。ステアリングギアレシオを速めるとともにパワーアシスト量を増やし、エアバックの小型・軽量化や、アルミ製部品の採用によりファイン・チューニングが施されたことで「993」型の走りを軽快で鋭いものとしている。「ポルシェ911」は「993」型がデビューするまで、登場から30年間、実用スポーツカーの鏡として存在してきた。他メーカーのスポーツモデルに負けない、絶対的な速さやコーナリングの楽しみ、それとあわせて普段使いしやすいコンフォート性能の高さも常に両立させてきた。登場時から進化を続けてきた特徴的な空冷水平対向エンジンを搭載した最終進化型として「993」型は「911」シリーズの白眉の存在となる。動力性能はもちろん、静粛性や乗り心地まで含めた総合的な評価で、歴代の空冷エンジン搭載モデルを遥かに凌駕する存在となっている。その上で、いかに走らせやすくはなっていても「911」らしさは全く薄れておらず、「911」を「911」らしく速く走らせるには高い集中力が要求される。その点では昔と少しも変わりなく、誰でも同じ様に走らせられるナマクラではないところがスポーツカーの面白さ、と言えるのかもしれない