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メーカー
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
外装色
ホワイト
年式
1981 年型
走行距離
134.700km
乗車定員
4 名
サイズ
長 430 cm 幅 165 cm 高 135 cm
エンジン形式
排気量
2994 cc
馬力
180
トルク
27.0
車検
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

1963年、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(ブッツィ・ポルシェの愛称でよばれるフェルディナント・ポルシェの孫)のデザインにより、その歴史をスタートした「ポルシェ911」。この時1963年のフランクフルトショーでデビューした「901」という車名をもつプロトタイプに続き、翌年から量産される「0シリーズ」から「ポルシェ911」と車名を改称して、伝説の「ナナサンのカレラ」といわれる1973年型「カレラRS」も含まれる「Fシリーズ」の時代までが「ナロー・モデル」とよばれる世代となる。1974年になると、当時、最大の輸出国であるアメリカ合衆国の、連邦自動車安全基準(FMVSS)の新しい衝突基準に対応して、前後に大型の5マイル・バンパー(フロント側5mph=8.5km/h、リア側3mph =4.8km/hの速度で衝突に際しヘッドライト、テールライトを含む灯火類と給油装置に損傷を与えない様、ショックを吸収出来るバンパー)と呼ばれるモダンなデザインのバンパーが取り付けられ、それにあわせて前後フェンダーもリデザインされたモデル「Gシリーズ」が発表される。この「Gシリーズ」以降1989年に「911」シリーズが、タイプ964型にフルモデル・チェンジするまでの、長きに渡って用いられたこのバンパーを装備するモデルが「ビック・バンパー」の愛称でよばれた世代となる。「911」の5マイルバンパーは、ヨーロッパ仕様ではシンプルな収縮式となるが、北米仕様では油圧ダンパーを内蔵し、衝撃を吸収する仕組みとなる為、重量も嵩み走行性能にも影響を与えるものとなる。「Gシリーズ」登場時、搭載されていたエンジンは2.7ℓであったが、排ガス規制により「ポルシェ911」らしい性能に翳りが見え始めると、再びアドバンテージを取り戻す為に1978年、新型3.0ℓエンジンを搭載した「911SC(Lシリーズ)」を発表する。この、搭載エンジン変更にともないタイプ名もそれまでの901型から930型とされ、3ℓエンジンは「カミソリのような鋭さをもつエンジン」と高く評価されていた。この「911SC」が生産さた時代、ポルシェ社の社長だったエルンスト・フールマンがポルシェ社では初めてとなる赤字転落の責任をとり任期を一年残して辞任、ポルシェ社オーナーのポルシェ・ファミリーと「928」の存在をめぐり、考え方の違いも原因のひとつであったといわれている。フールマンは「928」を、主力モデルの「911」の後任と考え、ポルシェファミリーは「928」を後任とするには、ボディが大きく高級過ぎると考えていた。「928」は、新たな顧客を引き込み一日に20台生産され、このクラスのモデルの販売台数としてみれば最大規模となっていた。しかし一日に40台生産されていた「911」の生産台数を覆えす程では無く「911」の真の後継車とは言いがたい状況の中で、ポルシェは共通性を持たない車種の並行生産が強いられ生産効率を上げることを出来ずにいた。後を継いで1981年から87年までポルシェ社長を務めたペーター・シュッツは、フェリー・ポルシェに直々に任命されたアメリカ系ドイツ人で、キャタピラー社でディーゼルエンジンのエンジニアを務めていた人物。ポルシェファミリーの意向をくんで、ポルシェ社の経営再建を図る中で「911」の高いブランド性にいち早く注目し「911」の後継車として「928/924」によるFRポルシェを主力とする路線から「911」を中心とする商品展開に軌道修正を行った。それを形にしたはじめの一台が1981年フランクフルトショーで発表となる「911ターボ・カブリオレ・スタディ」とされている。このモデルは、前後フェンダーがフレアした「ターボ・ボディ」が採用されていたが「911」をベースに新たに「4WD」と「カブリオレ」が提案された。「4WD」はフロアパンの再設計が必要な為、販売は見送られ、開発を続けられる中「カブリオレ」は1982年から「911SCカブリオレ」として市販に移される事となる。ペーター・シュッツを社長とした事で、ポルシェ社は引き続きその伝統的なポリシーを継続し、以前と同様にスポーツカーとしての「911」を造り続けながら、モータースポーツに積極的に関わり続ける事となる。1978年に登場した「911SC」は、前年まで製造されていた「911カレラ3.0」のリアホイールアーチ部分の広がったボディを継承するが、登場時のエンジンパワーは「911カレラ3.0」の200馬力には届かず180馬力とされていた。このエンジンパワーは1980年式になって188馬力まで向上。翌年の1981年になるとバルブタイミングが「911カレラ3.0」用に戻され、圧縮比が8.6から9.8に高められ、トップエンドのパンチも改良され204馬力を発揮する。ここにきてようやく「911カレラ3.0」のエンジンパワーを凌ぎ、車名の「911SC」の意味する「Super Carerra」に相応しい性能を得たこととなる。今回入荷した1981年式「911SC」は、大がかりなモディファイが行われ、エクステリアはナロー・モデル終盤の佇まいが再現されている。ヘッドライトリム、及びドアミラーもそれに合わせてメッキタイプに変更されている。4輪に純正サイズとなる、16インチのレトロなフックスホイールが組み合わされるとともに、インテリアはフロント2脚にレザー製バケットシート、ステアリングはナルディ製皮巻き3スポーク・ステアリングと、足元のチェッカーフラッグ柄のシザルマットでまとめられ、レーシーな雰囲気に仕上げられている。ホワイトカラーのボディと軽量バンパーにより当時のホモロゲモデルを見ている様な、気分の上がるレーシングスタイルと言えるだろう。この車両は、ディーラー輸入による日本仕様となる為、排ガス規制をクリアし圧縮比が8.5に下げられたことで180馬力/27kgmのパワーとトルクを発揮するモデルとなる。また、「911SC」のエクステリアでの変更点として、この1981年式からフロントフェンダーのドアの切り欠きに近い部分に、新たにサイドマーカー・ランプが付けられている。ディーラー販売による日本仕様の「ポルシェ911SC」は、ベースモデルの「911SC」と、足回りをグレードアップした「911SCS」の2グレードでの販売が行われていた。1981年式の「ポルシェ911SC」が搭載するエンジンは、空冷水平対向6気筒となりボア×ストローク95.0mm×70.4mmから2994ccの排気量を得る。改良されたボッシュKジェトロ燃料噴射装置とヨーロッパ仕様では9.8の圧縮比から204馬力/5500rpm27kgm/4300rpmを発揮、日本仕様では8.5の圧縮比とされ、最高出力180馬力/5500rpmと最大トルク27kgm/4200rpmとなっている。このエンジンに用いられるボア・ストローク値はレーシングモデルでは、1973年の「カレラRSR3.0」や「934ターボ」「962C」などに搭載されるエンジンと共通となり、ロードモデルでは「930ターボ3.0」と共通の、黄金比率ともいえる数値をもち、官能的な回転感とレスポンスが特徴となっている。Kジェトロニックは電子制御では無く、ほぼ機械式となるので、完璧に調整が施されたこの3ℓエンジンは他のフラット6と比べると別格といわれている。組み合わされるトランスミッションは、ポルシェシンクロをもつ915型ミッションとなり、1速から4速でH型を形成し5速は一番右の列にリバースと向かいあうタイプとなる。足回りはフロント・マクファーソンストラット式、リア・セミトレーリングアーム式となり、ボーゲ製オイルダンパーを装備、「911SCS」ではビルシュタイン製ガスダンパーが装備される。前後ともにトーションバースプリングをもち、スタビライザーを備える。Ate製対向ピストンをもつキャリパーを備えるブレーキは、前後ベンチレーテッドディスクが組み合わされている。「911SC」のホイールは15インチのATS製のワンピースのアルミ製となり、フロント6J、リア7Jを備え、185/70VR15215/60VR15サイズのタイヤとそれぞれ組み合わされている。「911SCS」では「911」の定番ともいえるFUCHS社製16インチ・アルミ鍛造ホイールが装備され、組み合わされるタイヤも205/55VR16225/50VR16サイズとなっている。 インテリアは長時間ドライブし続けても疲れにくい「911」ならではの、ヘッドレストとバックレストが一体となったハイバックシートを備える。このシートにレザー巻きの3スポークステアリングを装備。そのステアリングを通して正面に配される、ひときわ大きなレブカウンターを含む、メータークラスター内の5連メーターのレイアウトは、ナロー時代の「911」から継承された見慣れたものとなり、メーター類は全てVDO製が採用されている。そして床から生えるオルガンタイプのアクセル・ブレーキ・クラッチのペダルの操作感は独特なものとなるが、レーシングカーのペダルもオルガンタイプが多く用いられる事からもわかるように、慣れてしまえば素早い操作にはこの方が向いている事に気付かされる。シートの間にあるコンソールからドライバーに向けて伸びるシフトレバーの後方には、ヒーター用の赤いレバーがフロアから生えている。リアシートは完全なプラス2シートとなり、大人が長時間座れるものとはなっていない。荷物用、あるいは子供用だが、あるだけで便利なスペースともいえるものとなる。全長×全幅×全高は4300mm×1650mm×1350mm、ホイールベースは2270mm、トレッド前1360mm、後1365mm、燃料タンク容量80ℓ、車両重量は1160kgとなり、この後継モデルの「ポルシェ・カレラ3.2」より50kg軽い。新車時価格は「911SC」が990万円、「911SCS」が1080万円となっている(1981年当時)。メーカー公表性能値は、ヨーロッパ仕様の「911SC」で0100km/h加速6.5秒、最高速度235km/hとなる。カーグラフィック誌による実測値は、日本仕様の「911SCS」で、レインコンディションの中0100km/h加速7.1秒、0400m加速15.3秒、01km加速28.4秒となり、悪いコンディションの中で、同時にテストを行った発表されたばかりの「アウディ・クワトロ」より高い加速性能を記録した。今となっては、かなりコンパクトに感じられる「911SC」のドアを開けて、適度にタイトなキャビンに身体をおさめ、硬い音を発して隙もなく締まるドアにより、強固なシェルターに囲まれたような一体感を味わう。エンジンが動いてなくても「911」ならではの独特な世界が感じられる瞬間となる。ドライバーからの視界は細めのピラーによりどの方向にも開け、前方に伸びるフェンダーラインは「911」に乗っている事を実感させてくれる。キーを捻りエンジンを始動させると後方からサウンドが届く。クラッチを踏んで、温まれば“冷えたバターを熱いナイフで切る”と比喩される、多くのファンを持つポルシェシンクロの915型ギアボックスで1速を選び慎重にクラッチをエンゲージすると、苦もなく走り出す事が出来る。1500rpm以下のボトムエンドのトルクが厚い日本仕様の180馬力エンジンは、クラッチを労った日常的なアイドリング・プラスのスタートが比較的容易となる。2速、3速とシフトアップしていくとエンジン回転に応じてグングンと爽快にスピードをあげていく。「911SC」に搭載されるエンジンは、官能的な回転感をもつとともに、当時の国産ツインカムなど足元にも及ばない、レスポンスをみせ回転上昇のみならず、回転落ちも早い。それ故、美味しいエンジン回転域をキープして走るには、的確なギアを最適なタイミングでチョイスしなくてはならなくなる。ドライビングに慣れてきて、これが出来るようになると「911SC」ならではの達成感が味わえる。軽めの車重と、レスポンスの良いキレ味のあるエンジン、ポルシェシンクロの伝統のタッチを持つミッション。この組み合わせで走らせる「911SC」の味わいは1970年代の空冷「911」の集大成といえるもので、ナローの時代から続く「911」をスポーツカーらしく軽快に走らせることの出来る最後の世代と言えるのかもしれない。また、それを踏まえて今回入荷した車両に施された、ボディ内外のカスタマイズも「911SC」がもつ、本来の性格を更に引き立てるものとなっている。日本仕様のエンジンパワーである180馬力が、数値上、全く控えめに思えてしまう程パワフルなエンジンは、5速のまま踏み込んでもスピードメーターの針をとんでもない数字の所まで引っ張る実力をもつ。また官能的な回転感をもつエンジンは、4速、2000rpmあたりで緩やかな速度で流していても、後方から届くエンジンの低いサウンドで、その存在感をしっかりと示し、路面からのバイブレーションや、ゆるいカーブでのステアリングの感覚など、その全てがドライバーに向けられる刺激となる。この「911SC」のドライビング感覚に浸る事が出来れば、最新型の「911」が横に並んでも全く気にする事無く、ただ大きく重いクルマに思えてしまうのかもしれない…