サイズ
長 449.0 cm 幅 192.0 cm 高 121.0 cm
15.955 km 時 クラッチ交換、18.013 km 時 タイミングベルト交換済、内外装、機関等
状態の良い車両入庫致しました。
フェラーリ360モデナは、ミッドシップV8シリーズの成功作といわれたF355の後継車として1999年3月のジュネーブショーでデビュー。車名の「360」はエンジン排気量となる3.6ℓから、「モデナ」は創業者であるエンツォ・フェラーリの生誕地に由来する。モデナはイタリアのエミリア=ロマーニャ州にある都市名で、フェラーリ社の本拠地となるマラネロは、その郊外に位置する。︎ボディデザインはピニンファリーナ社によるものとなるが、ミッドシップV8シリーズをF355まで担当してきたレオナルド・フィオラバンティではなく、プジョー406クーペ をデザインしたダビデ・アルカンジェリによるものとなる。F355まで続いたトンネルバックのスタイルやリトラクタブルヘッドランプから、ファストバックスタイル、固定式ヘッドランプが採用され、イメージが大きく変化した事がうかがえる。また空力も重視され、5400時間にも及ぶ風洞テストが行われCd値0.335を得ている。同時に290km/h時に発生するダウンフォース量は前後均等に180kgとなり、それはF355の4倍となっている。ボディデザインとともに大きく様変わりしたのがボディ構造。フェラーリは創業時から328、テスタロッサ迄、長きにわたり鋼管チューブラーフレーム構造を採用してきた。それを348、F355の世代でスチールモノコック+鋼管フレームに変更し、360モデナではアルミスペースフレーム構造を採用し外板もアルミとするオールアルミボディに進化した。使用されるアルミフレームは、先にアウディA8用のアウディスペースフレーム(ASF)を製造する、米国・アルコア社によるもの。また外板のアルミパネルはアルスイス社製となる。360モデナ用のアルミフレームはF355のスチールモノコック+鋼管フレームに対し捻り剛性で44%、曲げ剛性で42%向上している。その結果ステアリング部やペダル類、更にはオールアルミ化されたサスペンションアームなどの支持剛性も向上し、タイヤの接地感やコントロール性の正確さが大幅にアップしているという。360モデナに搭載されるエンジンは、F131B型というF355のF129B型をベースに進化したものとなり、オールアルミ製の水冷90度V型8気筒DOHC5バルブでボア・ストローク85mm×79mmとされ総排気量3586ccとなっている。マーレ社製アルミ鍛造ピストン、パンクル社製チタンコンロッドはニカシル皮膜を施したスチール製シリンダーライナーとともにF355から継承された。ボッシュ・モトロニックME7.3燃料噴射装置を備え、11.0の圧縮比から、400馬力/8500rpm、38kgm/4750rpmのトルクを発揮する。新たに可変吸気機構や排気側の可変バルブタイミング機構が採用されている。しかし一番の注目点はフェラーリとして初採用となる、マニエッティ・マレリ社製の電子制御スロットルといえるだろう。当初は日常使用域ではやや過敏だといわれる程のレスポンスと評価されることもあった。それでもこのエンジンは、パワーや加速感でF355を上回り、低速トルクを充実させながら、5000rpm以上でもパワーの盛り上がりを見せ、当時としては世界最高のV8スポーツエンジンといわしめる程のキャラクターを持っていた。組み合わされるF1トランスミッションはF355F1と同様でオートマチックモードを備えながら、ステアリングポストのパドルによりマニュアル操作が出来るものとなっている。360モデナF1で大きく進化したのは、新設計となったトランスミッションがF355の横置きから縦置きに変更となり、ケースサイズに余裕を得た事で、1速と、2速にトリプルコーンシンクロ、3速〜6速迄がダブルコーンシンクロ採用となったこと。これによりクラッチへの負担と操作タイミングのラグの双方が軽減されることとなった。またエンジンに電子制御スロットルが採用された事で、F1システムにとって重要な、ダウン・シフト時の自動ブリッピングが可能となり素早くリズミカルなシフトダウンが出来るようになった。この様に進化したF1システムは、いよいよ完成の域に達したと言えるだろう。足回りはフェラーリの定石ともいえる前後ダブルウィッシュボーン式+コイルとなるが、アーム類はそれまでの鋳鉄プレス製から、アルミ鋳造製となった。またリアサスペンションには、トーコントロールリンクも備わり、一層のスタビリティ向上がはかられている。ショックアブソーバーは電子制御式アクティブダンパーとなり、スポーツモードにおいてはエンジンレスポンスも連動し、よりダイレクトな反応を体感することが出来る。ブレーキは前後ともに330mm径のドリルドベンチレーテッドディスクと4ポットのブレンボ社製アルミキャリパーが装備される。ABSはボッシュ製5.3となっている。タイヤサイズはフロント215/45ZR18、リア275/40ZR18となり、組み合わされるホイールはBBS鍛造アルミ製の18インチでフロント7.5J、リア10Jとなる。この度、入荷した360モデナF1には、後継車となるF430用の純正となるBBS製マグホイールが装着されている。サイズはフロント7.5J×19、リアは10J×19となりインチアップされ、よりスポーティなたたずまいとなっている。アルミボディを主張するように各部にアルミ製のアクセントが配されたインテリアは、ボディが拡大されたことにより、コックピットの広さを感じることが出来る。フロントのトレッド拡大により足元の広さと、ホイールベース延長によりシート後方に空間が生まれた。これは当時の社主であるルカ・モンテゼーモロからの強いリクエストによるもので、ゴルフバックが楽に収まるスペースが確保された。サイドブレーキのレバーがサイドフレームに押しやられる形で、F355のドアサイドからセンターコンソール部に移動し、ステアリングにチルトとテレスコピック機構が採用され、より自然なドライビングポジションを得る事が可能となった。3スポークタイプとなったステアリングは、フルサイズのエアバッグ付きながら小ぶりなセンターパットを備えるものとなっている。ドライバー正面に大径レブカウンターを配置してメーター類は全てメーターナセル内に収められ視認性が向上した。またフェイスレベルのエア・アウトレットは丸型のデザインとなり、F355とは雰囲気を大きく変えている。︎ボディ寸法は全長×全幅×全高で4477mm×1922mm×1214mmとなりホイールベースは2600mm、トレッド前1669mm、後1617mmとなっている。車両重量は1430kg。前後重量配分は42:58。性能はフェラーリ所有の1周約3kmとなるフィオラノ・テストコースのラップタイムで当時のチーフ・テストドライバー、ダリオ・ベヌッツィのドライブで1分30秒。これはF355より3秒速いタイムとなる。メーカー公表値は最高速度295km/h、0→100km/h加速4.5秒、0→400m加速12.6秒、0→1km加速22.9秒。カーグラフィック誌による実測テストでは0→100km/h加速4.8秒、0→400m加速12.9秒、0→1km加速23.2秒(以上6MT車)。360モデナF1の実測値は0→100km/h加速4.3秒、0→400m加速12.4秒、0→1km加速22.4秒となり6MTより僅かに速いタイムを記録したことからも、F1システムの完成度がうかがえる。またそれは、生産台数にも反映されているようで総生産台数16244台のうち、360モデナF1は15903台、6MTモデルは341台となっている。新車時価格360モデナ(6MT)1645万円、360モデナF1 1765万円となっている。(2001年)フェラーリ360モデナに搭載されるF131B型エンジンは、フェラーリV8ミッドシップシリーズの出発点となる308GTBに搭載されたジュリアーノ・デ・アンジェリス設計によるF106A型と同系列の発展型で、その最後のエンジンとなる。F355から360モデナ用に排気量アップするにあたりボア径は同じ85mm、もうこれ以上ボア方向に拡大する余裕が無く、高回転型に不利となるにもかかわらずストローク方向に2mm延長して、88ccと20馬力を上乗せしている。また360モデナではホイールベースを456GTと同じ2600mmまで延ばした。しかしこれはクルマの運動特性を考える上でポイントとなる、ホイールベース/トレッド比(ホイールベース÷前後トレッドの平均値)で見ると360モデナは1.58となる。328、348の1.59とF355の1.57のちょうど間の数値となっている。これは紛れもなくフェラーリの文法でセッティングがなされたもので、回頭性と安定性のバランスをもってスポーツカーの黄金比といわれる1.60より僅かに回頭性寄りの数値となる。360モデナはコンフォート性向上を使命として開発されるにあたり、ホイールベース延長は免れなかった。それでもフェラーリらしい回頭性を維持する為に車体は拡大せざるを得なかった。しかしエンジンパワーはもはや臨界点。そこでアルミボディを採用することにより、テスタロッサ並みの外寸ながら328と同等の車両重量にとどめることでフェラーリらしい動力性能を維持出来た。エンツォ・フェラーリの時代から、長い間使い続けてきた、基本設計のしっかりした信頼性の高いパワーユニットに磨きをかけ、ここを起点として後世に続く全く新しいアルミボディでそれを包んだ。360モデナの中でそこまで続いた古き良き時代と、そこから始まるこれからの新しい時代がひとつになっているように感じる。今世紀の始まりとなる2000年当時、360モデナはフェラーリに新しい流れを生み出した。それでもしっかりと何ものでも無くフェラーリらしく存在していた。そしてこの頃フォーミュラーワンの世界においても、フェラーリはコンストラクターズとドライバーズタイトルを連取して、とても勢いに乗った時代であったことを思い出した。この時の勢いがあったからこそ内燃機関エンジンが萎みつつある現在に於いてもフェラーリは輝きを失わずに存在し続けていられるのかもしれない…