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メーカー
フェラーリ
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
外装色
ヌオーヴァジィアロ
年式
1970 年型
走行距離
41700km
乗車定員
2 名
サイズ
長 423 cm 幅 170 cm 高 113 cm
エンジン形式
排気量
2410 cc
馬力
195
トルク
車検
令和5年12月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

1960年、創業者エンツォ・フェラーリがいよいよリアエンジンのグランプリカー「ディーノ246P(試験的にフロントエンジンの246F1をミッドシップに換装したモデル)」の実戦投入を考えはじめ、この年のフェラーリはF1をフロントエンジンで戦う最後のシーズンとなった。「牛は荷車を引っ張るもので、後から押すモノではない」というフロントエンジンに固執したエンツォの考えを断念した時期といえるだろう。少し遅れてロードカーの分野では1966年、春のジュネーブショーで発表されたカロッツェリア・ベルトーネ作となる「ランボルギーニ・ミウラP400」のボディを見せられたカロッツェリア・ピニンファリーナのセルジオ・ピニンファリーナは、意気消沈する程の衝撃を受けた。フェラーリ最後のフロント・エンジンフラッグシップとなる「フェラーリ365GTB/4デイトナ」製作に最大限の努力を尽くしたにもかかわらず、エンツォ・フェラーリにミッドシップGT作成を迫る事となった。このセルジオの行動に先立つ1965年、フィアットとの間で「ディーノV6エンジン」を搭載するニューモデルの共同製作の契約が発表されている。この年10月のパリサロンでは、カロッツェリア・ピニンファリーナのアルド・プロヴァローネによるミッドシップ・スタディモデル「ディーノ・ベルリネッタ・スペチアーレ」が発表された。アグレッシブ極まる美しさは「ミウラ」に対抗するには充分だったが生産化にはまだ3年もの月日を要する事となる。翌年「ミウラ」が発表された後の11月のトリノショーで特徴的だったノーズデザインを市販型に近い2灯式にリデザインされた2次プロト「ディーノ・ベルリネッタGT」が発表され、この手直しを若き日のレオナルド・フィオラバンティが担当したとされている。そして迎えた1967年トリノショーで「ディーノ206GT」としてフェラーリ初のミッドシップロードモデルがデビューを果たす。「ディーノ」の名称は、社主エンツォ・フェラーリの愛息、アルフレディーノの愛称といわれ、溺愛したにもかかわらず夭逝してしまったこの息子の作、とされるV6ユニットを搭載するレーシングカーにも「ディーノ」の名称が使われている。またエンツォは、どちらかと言えば保守的なフェラーリユーザーに対して、黎明期であったミッドシップモデルを提示する冒険は避けたいという考えから「ディーノ」のブランドが誕生する事となった。しかし現在ではこのV6ユニットの設計者は、50年代に史上初となる乗用V6エンジンをランチア・アウレリアのために設計した、ヴィットリオ・ヤーノであるとする説が有力視されている。1967FIAによる新たなレギュレーションが発表され「F2用エンジンは1年間で500台以上量産するモデルに搭載されている物に限る」という事になった。そこで1965年のフィアットとの共同開発の話が意味を持ち、6611月のトリノショーで「フィアット・ディーノ・スパイダー」が、翌673月ジュネーブショーで「フィアット・ディーノ・クーペ」がデビューしFIAのホモロゲーション獲得を達成する。3車種共用となるアルミブロックを持つティーポ135Bとよばれるディーノ・ユニットは65°のバンク角を持つV6エンジンである事と2の排気量は共通ながら「ディーノ206GT」が搭載するエンジンはミッドシップとなる為、エキマニの取り回しやオイルサンプのディテールが異なる。キャブレターもフィアット・ディーノ用はウェーバー40DCNFなのに対し40DCNF/1という専用品が装備される。シャーシは後の「246GT」やその後継となる「308GTB」にもつながるアンジェロ・ベレイを中心としたチームによる、フェラーリ伝統の鋼管スペースフレーム構造となる。モデナのヴァカーリ社で製造されたフレームに、スカリエッティ社製アルミボディが架装され、180馬力を発揮するティーポ135Bユニットで車重1040kgのボディを0100km/h加速8.2秒、0400m加速15.5秒と最高速度225km/hという2ロードカーとしては優れた性能を発揮し153台が生産される事となった。1969年、フェラーリの親会社となったフィアットの意向で量産化と耐久性の面から「ディーノ246GT」となって同年3月にジュネーブ・ショーでデビューする。スチール製に改めらたボディをもち、2.4に拡大されたエンジンも頑強な鋳鉄ブロックに変更された。ボディデザインの変更点は少なく、ヘッドクリアランスを稼ぐ為に、全高が20mmプラスの1135mmとなり、バランスを取るようにホイールベースが60mm延長され2340mmとなった。また「ディーノ206GT」ではボディから飛び出したデザインのフィラーキャップが「ディーノ246GT」ではボディ同色のフラップの中に収められた。またエンジン・フード上のスリットも片側6個から7個に改められた。搭載されるエンジンは、アウレリオ・ランプレディにより再設計されたティーポ135CS型とよばれる65°V6DOHCエンジンは、ボア×ストロークが92.5mm×60mmとされ、2418ccの排気量をもつ。ダウンドラフトのツインチョークウェバー40DCNF型のキャブレターを3基備え、9.0の圧縮比から最高出力195馬力/7600rpm、最大トルク23.0kgm/5500rpmを発揮する。鋳鉄ブロック化されたこのエンジンは、乾燥重量134kgとなり僅か4kg重くなっただけで済んだといわれている。組み合わされるトランスミッションは自社製5MTとなり、ロッキングファクター40%となる機械式LSDを装備する。足回りは前後とも、ダブルウィッシュボーン式+コイル+スタビライザーを装備しコニ社製ショックアブソーバーを備える。ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクを装備し、ガーリング製ブレーキキャリパーと組み合わされる。ホイール&タイヤサイズは、前後クロモドラ製センターロック式6.5Jの軽合金ホイールに205/70VR14のミシュランXWXが装着される。「ディーノ246GT」には、大別してタイプLME3種のバリエーションが存在する。今回入荷したタイプLと呼ばれる初期型は、それまでの「ディーノ206GT」のディテールが多く残され、センターロック式ホイールが付けられている。またボディはドア、およびフロント、エンジン、トランクの3枚のフードはアルミ製となり、ANSA製マフラー、70燃料タンク、交差式ワイパーを装備する。クロームメッキによる三角窓のフレーム、ワイパーブレード、ルームミラーも「206GT」とタイプLならではのもの。またスチール製となるボディパネルは金型プレスによる物では無く、より「206GT」に近い緩やかなボディラインが再現されている。鋼管スペースフレームもまだ「206GT」時代の様に細い部材が採用されている。インテリアではタイプL初期型用となる38cm径のMOMO製ウッドステアリング(タイプL後期型は37cm径の革巻きとなる)が装備され、シフトゲート右脇に空調レバーが備わり、シート自体の意匠は大きく変わらないが、ヘッドレストがリアバルクヘッドに直付けされるのも「206GT」とタイプLのみとなる。正面メータークラスター内は左から、時計、スピード、4つの小メーター(左上が油温、左下が油圧、右上が水温、右下が燃料)、タコメーター、アンメーターと並ぶ。ダッシュボード右側下一面がグローブボックスの蓋になるのも「206GT」とタイプLだけとなっている。全長×全幅×全高は4235mm×1700mm×1135mm、ホイールベースは2340mm、トレッド前1425mm、後1430mm、車両重量1080kg(乾燥重量となり実質1200kgといわれている)。燃料タンク容量70。新車時ディーラー価格900万円(1973年・西武自動車)。生産台数はディーノ246GTとしては2487台、そのうちタイプLは僅か357台となる。メーカー公表性能値は0400m加速15.4秒、最高速度235km/h。カーグラフィック誌による実測データは、海外でポール・フレールによるテストデータが掲載され、0100km/h加速7.1秒、0400m加速14.8秒、01000m加速27.0秒、最高速度233km/hとなっている。「ディーノ246GT」のドアを小さなメッキされたドアノブで開き、シートに腰を降ろすとフロントウィンドウごしに左右の盛り上がったフェンダーが目線の高さにに入る。そして全方向に視界は開け特にリアクォーターの窓の切れ方はミッドシップモデルとしては異例となる、考えられたデザインを実感する事が出来る。エンジン音は、背後から大きめなボリュームで室内に透過してくるが、とてもフレキシブルでタウンスピードでの乗り心地を含めて、低速から高速まで快適。これは乗員が重心付近に座っているというポジショニングのせいでもあるが、スピードを増すにつれ、より良くなる傾向を持っている。重めのクラッチながら全体的にローギアードな5段ギアボックスはフェラーリの常で画然たるゲートを備えている。その為チェンジレバーの動きは大きく素早いチェンジには、慣れを要する。加速では同時代のポルシェ・カレラに一歩譲っても、エンジン回転が4500rpmから上にいくにしたがい、マフラーとエンジンのサウンドがシンクロし始めるとミュージックと呼ぶに相応しいサウンドを奏でる。これは「ディーノ246GT」でなければ体験出来ないものと評価が高い。また左右のフロントフェンダーはコーナーリング時にクルマを理想的なラインに乗せるのに絶好なガイドとなっている。ステアリング・ホイールに添えた手を僅かに動かすだけでノーズは反応を示し、そのまま保舵力が重くなる事無く、思い通りにコーナーをクリアしていける軽快感は他のフェラーリロードカーではなかなか得られないものとなる。2速あるいは3速のフルパワーをかけてコーナーリングしても、前後タイヤは絶妙にバランスし、純粋にニュートラルステアを示す。このハンドリング特性はずば抜けて高く自信を持ってワインディングを堪能する事が出来る。ミッドシップ黎明期にこれだけバランスの取れた挙動に仕上げていたのに驚きを感じる事が出来る。その秀逸なボディサイズと、時代を代表する素晴らしいボディデザインを目の当たりにすると、技術の進化とはいったい何なのかと考えさせられるかもしれない。大きすぎるエンジンパワーも重い快適装備もそれ程必要では無かったのかもしれないと。スポーツカーに必要なのはドライバーの思い通りに反応してくれる事、ただそれだけ…その上魅力的なスタイルとサウンドをもつ「ディーノ246GT」は、走らせる喜びを実感出来る。こんなクラッシックフェラーリは、なかなか探せないかもしれない。