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ナンバーズマッチング車両
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メーカー
ポルシェ
ミッション
マニュアル
グレード
ナンバーズマッチング車両
ボディタイプ
外装色
レッド
年式
1957 年型
走行距離
不明
乗車定員
4 名
サイズ
長 398 cm 幅 167 cm 高 129 cm
エンジン形式
排気量
1582 cc
馬力
60
トルク
11.2
車検
令和7年3月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
中古並行輸入
内装色
ベージュ
燃料区分
ガソリン
幌色

ポルシェ社が第二次世界大戦後開発を始め、19487月にその生産第一号車が発表された「ポルシェ356」。その車名となる「356」という数字はポルシェ社内での開発コードだといわれている。創業者であるフェルディナント・ポルシェは大戦中の軍事開発の責任を問われ、戦犯として拘留される中、疎開先のオーストリア・グミュントでフェルディナント・ポルシェの息子で技術者のフェルディナント・アントン・エルンスト・ポルシェ(フェリー・ポルシェ)と技術者のカール・ラーベらによって、設計・開発が行われた。ボディデザインは、フォルクスワーゲン・ビートルのデザインを担ったエルヴィン・コメンダによるものだといわれている。エンジンやサスペンションなどメカニズムの大部分は、フォルクスワーゲンをベースとしながら50台が生産された。1951年、このような軽量スポーツカーが成功をおさめる兆しが見えると、ポルシェ社は製造設備をオーストリア・グミュントから、ドイツ・シュツットガルト北部のツッフェンハウゼンに移した。この移設に先立つ1949年「356」のボディは、プロトタイプから続いたアルミ製からスチール製に変更されている。進化を続ける「356」は19559月、それまで中央に折れ線を残していたフロントウィンドウシールドに、曲面ガラスを採用。ヘッドライト下部にスモールライトひとつしか無かったフェイスデザインから、スモールライトとともに小さなホーングリルが付けられ「356A」として1.6の新型エンジンとともにフランクフルトショーで発表された。ボディ製作はシュツットガルトを本拠地とするコーチビルダーのロイター社によるもの。1906年に馬具の鞍のマイスターであった、ウィルヘルム・ロイターによって起こされた「カロッセリエグェルク・ロイター」はカルマン社、ドラウツ社と並ぶボディ製作会社となる。それらドイツ国内のコーチビルダーに加え、ベルギーのディーテレン社も「356」シリーズのボディ製作に関わっている。Kハードトップ(61〜’62)Kクーペ(62〜’65)、コンヴァーチブルD(58〜’59)それぞれカルマン社製、ドラウツ社製を表した名前とされている。「356」の最終アッセンブリーラインまで有していたロイター社は、1963年ポルシェ社に買収される事となる。その際、シート製造に限りロイター社に委託生産を持ちかけた事がきっかけとなり、現在のレカロ社が誕生することとなる。レカロ社がスポーツシートの生産に着手するのに至ったのも、ポルシェ社の要求によるところが大きいといわれている。ボディ製作で培った金属加工技術を駆使してシートシェルを成形し、そこにクッションや表皮を貼り付ける事は、馬具の鞍作りからの技術が活かされているのかもしれない。「356A」に搭載されるエンジンは、616/1型とよばれ、それまでの1500cc(527)エンジンをボアアップすることによりつくられたもので、ボア・ストロークは82.5mm×74.0mmとなる。空冷OHV水平対向4気筒エンジンは、1582ccの排気量と7.5の圧縮比をもち、ソレックス32PBICキャブレターをツインで備え60馬力/4500rpm11.2kgm/2800rpmのトルクを発揮する。フルスケール6000rpmのタコメーターには、45005000rpmにレッドゾーンがあり、スポーツカーのエンジンとしては物足りなく感じる程、低回転型と感じるかもしれない。しかし、このエンジンの真価は数字から想像されものとは全く異なり、鋭いレスポンスと精密機械のような緻密さをもって、スムーズにに回る感触と味わいといえるかもしれない。「911」のフラット6エンジンの1馬力は、他のメーカーのエンジンの1馬力より濃い、という印象をもつ人が多く存在するが、それは「356」の時代から始まっている事を思いしらされる。組み合わされるトランスミッションは、新型となる644型とよばれる4MTとなり、1ピースとなるケースが採用され、リンケージ類も同時にリニューアルされている。足回りはフロント・ダブルトレーリングアーム+トーションバー、リア・シングルトレーリングアーム+トーションバーとなり、ともに強化、改良されたもの。ブレーキは前後ともにアルミ製ドラム式となっている。ホイールは3.25×16インチから、4.5×15インチとなり5.60-15サイズのタイヤと組み合わされている。インテリアはエボナイト製の極細リムをもつステアリングホイールとホーンリングが、何とも優雅な雰囲気を漂わせる。ダッシュボード上面にパッドが貼られるようになり、サンバイザーが標準で装備されるようになった。VDO製となるメーターの配置が変更され、スピードメーターとタコメーターの位置が入れ替わった。これにともない「911」にもつながるステアリングを通して正面にタコメーターが配置されたことになり、ダッシュボードのステアリングコラム左側にキーシリンダーが置かれるのもポルシェならではとなる。レザー張りの大きめのシートは後のレカロ製というだけあって、ふくよかながら適度な硬さがあり、見かけよりホールド性が高い。長めのシフトレバーで操作する4速ギアボックスのシフトフィールはフォルクスワーゲン・ビートルの面影を感じるかもしれない。それでも「356」の最大の魅力ともいえるのは、このコックピットで感じられるボディの剛性感だろう。生産されてからの時の流れを全く感じさせないソリッドな造りは「911」を凌駕する程となる全長×全幅×全高は3950mm×1670mm×1310mm、ホイールベース2100mm、トレッド前1306mm、後1272mm。燃料タンク容量52で車両重量は780kgとなり、1957年生産の「356A」の生産台数は5241台となっている。乗り込む前にボディラインを観察すると、Rの大きな曲面で構成されたボディは、見る角度によってクローズアップされるラインが変化して見える。イタリアのカロッツェリア製ボディは、いかに正しくエッジを出すか大変そうだが、逆にエッジを絶対に作ってはいけないのが「356」のボディなのだろう。大きく湾曲したウィンドウスクリーンまで含めソリッドで小さなボディは存在感あふれるものとなる。ドアの閉まる音だけでも気持ち良く感じられるしっかりしたボディの中で、シートに身を預け左手でキイを捻ると、リアに置かれたフラット4エンジンに火が入り軽快に回り出す。ギアを1速に入れクラッチ操作は気を使う所となるが、ゆっくりとエンゲージすると思いの他あっさりと動き出してくれる。走り出しても硬さや荒々しさは感じられずマイルドな乗り心地に終始する。エンジン回転を上げるとフラット4がバタバタッとボリュームを上げはじめ、結構な勢いで加速する。しっかりとしたトラクションを感じる事が出来、気持ち良くボディが前に押し出される感覚が味わえる。絶対的なスピードは「911」より低くはなるが、しっかりとした軽量ボディを活かしたその走行感覚は、味わい深く時代を超えて楽しめるものとなっている。ボディデザインやインテリアの風合いに心を掴まれると「911」ですら急に無機質でビジネスライクに感じられるかもしれない。「356」にはスピードやパワーだけに頼らない、人の気持ちを惹きつけるアナログな魅力にあふれ、それはフォルクスワーゲン・ビートルにも繫るものといえるかもしれない。