CORNES 1989年最終モデル タイベル交換済
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CORNES 1989年最終モデル タイベル交換済
ボディタイプ
外装色
ロッソ
年式
1989.0 年型
走行距離
29300km
乗車定員
2.0 名
サイズ
長 428.0 cm 幅 175.0 cm 高 112.0 cm
エンジン形式
排気量
3185.0 cc
馬力
270
トルク
31.0
車検
令和7年7月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

1975年にパリサロンでデビューを飾った、フェラーリブランドとしては初となるV8気筒エンジンをミッドシップ方式で搭載した「308GTB」は「ディーノ246GT」の後継車として登場したモデルとなる。前年デビューの「ディーノ308GT4」にも搭載された新開発のV8気筒DOHCエンジンは、開発チーフにジュリアーノ・デ・アンジェリスを置き開発が進められたものとなっている。このF106A型とよばれる3V8エンジンは「365GT/4BB」に搭載された180V12気筒、すなわち「365GTB/4デイトナ」の60V12気筒エンジンの主な設計要件となる、燃焼室形状、ヘッド設計、カムシャフト、94mmのボア間ピッチ、ピストン、コンロッドなどを流用して、もちろんボア×ストロークや単気筒あたりの排気量となる365ccや、圧縮比8.8までも共通となるフェラーリ的モジュラー設計エンジンとなっている。シャーシはほぼ「ディーノ246GT」に用いたクロモリ鋼によるスペース鋼管フレームを引き継ぐ形となり、こちらは開発責任者アンジェロ・ベレイによるもの。ベレイとアンジェリスの対照的な技術者コンビにより、フェラーリは1960年代後半から1980年代前半までの複数台のフェラーリ・ロードモデルを誕生させている。このアンジェロ・ベレイは技術系の専門学校(日本の学制では中学に相当)が最終学歴で、フェラーリ創業の前年からエンツォ・フェラーリのもとで働き、生涯忠義を尽くしてエンツォの意思伝達から、カロッツェリアはじめ外注先との折衝、その上で開発チームをまとめ上げて来た人物。かたやジュリアーノ・デ・アンジェリスは、トリノ工科大卒の典型的な技術者で「365GTB/4デイトナ」のV12気筒エンジンの設計をはじめ、後にフェラーリからアルファロメオ に移籍すると「アルファ164プロカー」用のV10気筒エンジン開発にも加わるエンジン・スペシャリスト。この気配りチーフと技術者エンジン・スペシャリストのコンビにより「BB」「308」「テスタロッサ」とロードモデルを立て続けにデリバリーしていた。その中で「308シリーズ」は、当初ウェーバーキャブレターにより燃料供給していたエンジンを排ガス対策を迫られインジェクション化されると、パワーダウンを余儀なくされ苦難を極めた時期迎える。それを乗り越え、再び速さを取り戻すべく1982年のフランクフルトショーで「308GTBクワトロバルボーレ」をデビューさせる。このモデルに搭載されるF105A型とよばれる新型エンジンは、車名が表すように4バルブ化されただけに留まらず、エンジン全体に手が加えられていた。新設計となるシルミン材(シリコンを含有したアルミ材)によるシリンダーブロックは、生産効率向上の為に金型鋳造とされ、ウェット・ライナーにはスチールに代えて内壁にニカシル・コーティングを施したアルミ合金が使われた。燃焼室は4バルブ化によりバルブ面積を稼ぎながらバルブ挟み角を33.5度まで狭めて燃焼効率を上げ、排気バルブはニモニック合金(ニッケルにクロム、チタン、アルミを配合した耐熱合金)製に変更、バルブ・ガイドの材質も見直された。またヘッドガスケット材にも手が加えられてインジェクションモデルの「308GTBi」の214馬力/25kgmから240馬力/26kgmまでパフォーマンスアップが図られた。時代に翻弄されながらも「308シリーズ」は、1975年から1985年にかけて総生産台数12143台にものぼる台数を世に送り出す。この数はフェラーリが1947年に創業して以来「308シリーズ」を発表するまでの、約30年間に生産された全フェラーリ・モデルの総生産台数に匹敵する程の数となり、フェラーリ・ブランドを最も世に知らしめたモデルであるとともに、広く人気を博したモデルとなった。「308GTBクワトロバルボーレ」がデビューした翌年、それまで3エンジンを搭載していた「ポルシェ911」は3.2エンジンに排気量をアップした「911カレラ3.2」をフランクフルトショーでデビューさせる。また、この当時フェラーリは、新たにFIAのレギュレーション変更により新設されたグループBカテゴリーにむけ、往年のコンペティションマシーンの車名を復活させた「288GTO」の開発を公表すると、ポルシェは全く新しい4輪駆動システムを用いて同じカテゴリーにむけて「959」というスーパーモデルで対応してきた。フェラーリとしては「308GTBクワトロバルボーレ」の更なる高性能化の必要性を感じ、エンジンの排気量アップを施した進化型モデル「328GTB」を1985年のフランクフルトショーで登場させた。車名の数字は「3.2V8エンジン」を、アルファベットは「グランツーリスモ・ベルリネッタ(クーペ・ボディ)」の頭文字となり車形をあらわしている。 エンジンのバージョンアップのみならず、70年代にデザインされたエクステリア、インテリアにも大幅に改良が加えられリニューアルされたスタイルは、先にデビューをはたした「テスタロッサ」に合わせるように80年代に相応しいデザインに生まれ変わった。「328GTB」のボディデザインはフェラーリの多くのモデルを手がけたピニンファリーナ社が担当。その中でも「ディーノ246GT」や「365GTB/4デイトナ」「365GT/4BB」などの黄金期のデザインを手がけたレオナルド・フィオラバンティによるものとなる。基本的にはベースとなった「308GTB」のフォルムを継承しながら、独立していたバンパー部分はボディと一体化された事で、よりモダンな印象となった。フロントのコンビネーションランプに挟まれた格子グリルに跳ね馬のオーナメントが付くフロントフェイスは「365GT/4BB」にも通じる印象に改められ、モダンになりながらも「308GTB」の頃からの手間のかかったボディワークは継承されている。ボディサイドの大きく凹んだインテーク部分は、ドアパネルと別に小板を形作りそれをドアに合わせて溶接。リアフェンダー側のインテークホールのエッジ部分はハンダを盛った後、シャープな成形が施されている。リアクォーターピラーのエッジ部分、更にテール部の箱状の成形も仕上げは全て人の手により研がれて、手間をかけられ造形されたものとなっている。

328GTB」のボディ構造は、フェラーリ創業時から続いてきたクロームモリブデン製鋼管フレームが用いられ、ボディ外皮を貼り付けていくという伝統の手法で組み上げられた最後の2シーター・モデルでもある。この後継モデルとなる「348tb」「F355」は、フェラーリといえども時代の流れに逆らいきれずフロントからキャビンまで鋼板モノコック構造が採用され、エンジンまわりに鋼管フレームが残るのみとなり「360モデナ」からはアルミフレーム構造にリニューアルされてしまう。その意味でも歴史的なクラシック・フェラーリと同じ手法、同じ構造で造られたボディは、今となっては貴重な存在といえるだろう。搭載されるエンジンはF105C型と呼ばれ、ボア×ストローク83.0mm×73.6mmから3185ccの排気量をもつ。金型鋳造製によるアルミの肉厚エンジンブロックによる90°V8気筒DOHC32バルブとなる。当時マラネロの工場では、エンジニア2人が1チームとなり一基のエンジンを組み上げていた。鍛造鋼の丸棒を切削加工し熱処理したクランクシャフトが採用され、ピストンはマーレ社製アルミ鍛造ピストンが使用される。トップ形状が見直されたピストンはショートスカート型の軽量で、耐久性に配慮された仕上がりとなっている。また通常鋳鉄製を使うライナーは冷却効率の高いアルミ製を採用し、このピストンとアルミライナーにより「308GTBクワトロバルボーレ」の9.2から9.8という高い圧縮比を実現している。吸気ポート形状も見直され、フェラーリのこだわりが感じられる手作業による研磨が施されたポート部分の造形をもつ。点火系は新たにマレリ製マイクロ・プレックスが採用され、これは「テスタロッサ」での実績が評価された事による。燃料供給はボッシュ製Kジェトロニック機械式燃料噴射装置により、最高出力270馬力/7000rpm、最大トルク31.0kgm/5500rpm(高圧縮比でキャタライザー、エアインジェクションの無い欧州仕様の数値)を発揮する。北米仕様やそれに準ずる日本仕様の場合、排ガス対策により260馬力/7000rpm29.5kgm/5500rpmとなり、圧縮比も9.2に下げられている事まで考慮すれば、スペック差は、あまり大きなものではないかもしれない。組み合わされるトランスミッションは、フェラーリ自製による5速マニュアルトランスミッションとなり、ボルグ&ベック製9.5インチ径シングルプレートクラッチが採用される。クラッチはそれまでのワイヤー式から油圧式となり、その重さは大幅に軽減された。またディファレンシャルはZF製となり、LSD機構も組み込まれ40%のロッキング・ファクターをもっている。足回りはフロント・リアともにダブルウィッシュボーン式で共にスタビライザーを備える。ショックアブソーバーはマイナーチェンジが行われる1988年以前に生産された凹面型ホイールが付く前期型はフェラーリが長い間採用してきたコニ社製が組み合わされる。シャーシNo.76626以降の凸面型ホイールが付く後期型からは、ビルシュタイン社製となる。このマイナーチェンジにより、フレームの改良が施されるとともに前後サスペンションアーム取り付け部の左右幅が狭められ、結果的にサスペンションアームが延長されジオメトリーも全面的に見直された。全ては更なる高速安定性とドライバビリティ向上の為と、4ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)取り付けが考慮された事による。ABSはオプション装備から始まり、シャーシNo.79177以降、標準装備となった。最終型の「フェラーリ328GTB」は、ステアリングコラムの取り付け位置も改良され、進化した足回りと合わせてより洗練された乗り味をもっている。ブレーキはフロント275mm、リア279mm4輪ベンチレーテッドディスクを備える。タイヤサイズはフロント205/55VR16、リア225/50VR16となりスピードライン製の前後それぞれ7J/8J16インチ・ホイールと組み合わされる。インテリアはメーターナセルの形状は「308GTB」から継承され、そこに収まるVeglia製メーター類のレタリングは、オレンジ色に変更された。デザインが一新されたセンターコンソール部はスイッチ類からタンブラースイッチが一掃され、カラフルなバーグラフ表示を備えたモダンなデザインに変貌した。ドアアームレストのデザインも変更され、サイドブレーキがセンターからドア側に移設されフライオフ式が採用されている。モモ製の小径3スポークステアリングやクロームメッキされた長めのギアレバー、その根本のメタル製シフトゲートはフェラーリならではの装備といえるもので、敢えてそのまま継承されている。コノリー・レザーによるシートは、形状とステッチのパターンが変更されるが、高いホールド感と高めの着座位置となり、リクライニングはダイヤル式からレバー式に変更された。ややタイトに感じるフェラーリのコックピットに入ると、シートなどに使われるレザーの匂いなのか、車種がかわっても同じ感覚を味わう事が出来、それは不思議と印象に残るものとなっている。 全長×全幅×全高は4255mm(日本仕様は4285mm)×1730mm×1128mm、ホイールベース2350mm、トレッド前1485mm、後1465mmで、現在のクルマたちの中ではとてもコンパクトに感じるサイズ。それは「ディーノ246GT」から始まったスモール・フェラーリ・シリーズの最終型に相応しいものといえるだろう。最小回転半径は6m、燃料タンク容量74、車両車重は1236kg(日本仕様は排ガス対策や安全装備などにより1422kgとなる)。「328」シリーズの生産台数は7412台となり「328GTB」は僅か1344台「328GTS」が6068台となっている。メーカー公表性能値は0100km/h加速6.4秒、0400m加速14.3秒、01km加速25.7秒、最高速度263km/hとなる。カーグラフィック誌による1988年の実測データは「328GTS」によるもので、0100km/h加速6.0秒、0400m加速14.0秒、01km加速25.4秒、最高速度253.9km/hとなっている。新車時ディーラー価格「328GTB」は1520万円、「328GTS」は1587万円。路肩に止められている「328GTB」の傍に立って、改めて感じられるのは、そのボディのコンパクトさかもしれない。現在販売されている「フォルクスワーゲン・ゴルフ」より小さなサイズをもつ、そのボディに乗り込んで気付くのはペダルのオフセットで大きく中央寄りに、身体の中心より右側にズレて配置されている事、そしてドライバー目線の低さだろう。クラッチペダルを踏むと、旧世代のワイヤー式クラッチのフェラーリを体験した事がある人ならば、その軽さに驚かされる。フェラーリならではの伝統のゲートに沿ってギアを1速に入れ、このクラッチをリリースすると、低回転からでもトルク溢れるエンジン特性により、思ったよりあっさりとスムーズに走り出せる。ノンパワーのステアリングも走っていればそれほど重くは感じない。コンパクトなボディと潤沢な低速トルク、そして良好な視界によりタウンスピードでのドライブも苦にはならない。そこから徐々にスピードを上げて、エンジン回転数を上げていくと4500rpmから上のエンジンサウンドはミュージックに変化し始める。更に高回転域に達するとエンジンは、鋭いレスポンスを示すとともにカン高いフォルテッシモを奏ではじめ、フェラーリをドライブしている実感を味わえる至福の時間となる。車庫入れの時には、ボディサイズの割には小回りが効かないが、ワインディングロードでのコーナーへの切れ込みはスムーズで回頭性も高い。特別な技術を用いなくとも、他車とは異なり面白い様にコーナーをクリア出来る感覚が楽しめる。知らぬ間にペースが上りフェラーリならではの、ダイレクトでいて繊細な感覚に富む操縦性を体験出来、それはけして忘れる事のできない情景として心に深く刻まれる事になる。「328GTB」はフェラーリ黎明期の初期モデルから受け継がれてきた文法通りに造られていながら、スポーツカーらしい運動性も感じられ、クルマとして丁度良いバランスを兼ね備えたモデルとなる。現在の交通事情にも対応出来る装備と快適性をもちながら、その発端を「308GTB」と考えれば、充分にクラッシックと呼べる年代の車両となる。シンプルなメカニズムで構築されながらもインジェクション装備により、エンジン始動に手間取らず信頼性も高い、なかなか巡り会えない実用的なクラッシック・フェラーリとなっている。「328GTB」までの、フェラーリのフレーム車体構造は、左右のサイドシルとセンターコンソール下に前後方向に平行に3本の楕円断面を持つ、太いクロームモリブデン鋼(クロモリ鋼)によるパイプを使ったメインフレーム+前後サスペンションやパワートレイン、ラジエーターなどを抱える様に組まれた角断面サブフレームが主体となっている。それに細いパイプが溶接されフェンダーやバンパー、その他のボディパネル類が取り付けられている。タイヤが路面から受けるショックやエンジントルクの反動など全てこのフレームが受け止めて、ボディパネルは一切応力を受けていない。エンジン、トランスミッション、サスペンション、シート、ABCペダル、ステアリング、人が触れて動かす部分は全てクロモリ鋼管フレームに、太いボルトでしっかり取り付けられている。これらが生み出す感触こそが「フェラーリ」の濃い味わいを生み出している。フェラーリの伝統的なシフトゲートの下には、アルミ鋳物で出来た頑丈な造りのシフトボックスがあり、これも太い4本のボルトで床下のクロモリ鋼管フレームにしっかりと固定されている。そのボックスから後方へ伸びる太い鉄パイプによるシフトリンケージなどの構造は、往年の「250GTO」や「250LM」に代表されるレーシング・フェラーリそのものの世界に通じるものとなる。「フェラーリ328GTB」はプレミアム・ブランドとしてでは無く、レーシングカー・ブランドとしての創業者エンツォ・フェラーリが創り上げた世界が凝縮されて込められた貴重なモデルとなっている。