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メーカー
ポルシェ
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
外装色
レッド
年式
1986 年型
走行距離
22600km
乗車定員
4 名
サイズ
長 430 cm 幅 179 cm 高 128 cm
エンジン形式
排気量
3287 cc
馬力
288
トルク
38.9
車検
令和5年5月
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
中古並行輸入
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色

19739月、フランクフルトショーにポルシェは「911ターボ」と名付けた1台のプロトタイプを展示した。「カレラRS 3.0」をベースにした様な大きく張り出したホイールアーチと深いフロントエアダム、巨大なリアスポイラーを備えたレーシーなボディに、極太ダンロップ製タイヤを履き鮮やかなシルバーメタリックに塗られていた。最高出力280馬力と最高速度280km/hという、当時としては全くもって衝撃的な性能値をアピールしていた。それは同時に発表された2.14の「カレラRSRターボ」という純レーシングモデルから派生した、ロードカーともいえるモデルとなっていた。タータンチェック張りのフルバケットシートにサンルーフ付きとなる、このプロトタイプは1ヶ月後の東京モーターショーでも公開される事となる。「911ターボ」を発表した当時、ポルシェのターボチャージャーに関しての技術は1000馬力を超える「917」で、世界スポーツカー選手権やアメリカのCan-Amレースで、そのノウハウを積み上げていた。この技術を使って、70年代に入り厳しくなってきた排気ガス規制の中、何とかポルシェのイメージに相応しいパフォーマンスを確保したロードモデルの開発を目論んでいた。またそれは、同年3月のジュネーブショーにデビューした「フェラーリ365GT/4BB」や「カウンタック」の生産1次プロトを送り込んだランボルギーニに対してのポルシェの対抗策でもあった。そしてスポーツカー選手権を主催するFIAは、1976年以降レギュレーション変更により「グループ5」で世界メイクス選手権を争う事となり、連続する24ヶ月で400台のホモロゲーションモデルが必要とされていた。無敵だった「917」で勝利を重ねる事がかなわなくなったポルシェは、新たにグループ5用に2.8ツインターボを搭載した「935」と、グループ4用に3.0ターボ「934」を開発し、この2台のホモロゲーションモデルとしての役割も「911ターボ」は担っていた。197410月、パリサロンに登場したグリーンメタリックの市販型「911ターボ」は社内では「タイプ930」とよばれ260馬力と300km/h迄のスピードメーターを装備していた。タータンチェックとレザーのインテリア、毛足の長いカーペット、パワーウィンドウにエアコンといった豪華な装備とKKK(キューネ・コップ&カウス社=kuhnle,kopp und kausch社は、現在ボルグワーナー・ターボシステム社に吸収合併され、ガソリンエンジン用ターボシェアは世界第1)製ターボチャージャーを組み込んだエンジンにより、19753月から販売された。もともと軽量な「911」に装備が加わったところで車重は1.2トン程度となり0100km/h加速5.5秒、最高速度250km/h以上という性能を発揮した。これにより圧倒的な人気と支持を集めた「911ターボ」は販売初年度に1000台を超える1148台を販売。翌年76年モデルは更に1703台を販売し大ヒットモデルとなった。「911ターボ」に搭載されるエンジンは、930/50型とよばれ、ベースは1974年に登場した「カレラRS 3.0」の3.0フラット6エンジンとなる。このエンジンのクランクケースは高出力に耐える為、軽量なマグネシウム製からアルミの金型加圧鋳造製に変更されたものを使用。これに鋳鉄ライナーを廃して、内面にニカシルメッキを施したRS用アルミスリーブを使って95mm径に拡大し、70.4mmのストロークとあわせて2994ccの排気量をもつ。ヘッドはRSよりもバルブ挟み角の狭い新設計とし、高熱に強いナトリウム封入エキゾーストバルブを備える。ピストンは「RSR」にも使用された鋳造アルミ製に変更され、ターボ化による燃焼温度上昇に備えピストン裏を冷却するオイルジェットが追加されている。ターボチャージャーはKKK製の型番26を使用、ブースト圧は0.8barから260馬力/5500rpm35.0kgm/4000rpmのトルクを発揮する。ターボが加わる事でエンジン単体重量は23kg程重い206kgとなり、同排気量NAエンジンに対し約1.3倍のパワーアップとなった。1978年にこのエンジンは930/68型に進化し、ボア径が2mm拡大されボア・ストロークは97.0mm×74.4mmとなり、3299ccにアップした。この時チャージアフタークーラー(正式名称で通称インタークーラー)がリアウィング内部に装備され、ターボチャージャーは同じKKK製ながら型番27に変更され、ブースト圧は0.8barを維持した。圧縮比は6.5から7.0に引き上げられ、300馬力/5500rpm42kgm/4000rpmのトルクを発揮する。そして1983年には燃料噴射システムを、それまでのボッシュKジェトロニックからKEジェトロニック(一部電子化されたKジェトロニック)変更した事によりトルクのみ44kgmにアップされた。組み合わされるトランスミッションは増強されたエンジンパワーに対応した新開発の強化型でハイギアードな4MT930型ギアボックスとなる。このギアボックスはグループ5のレーシングカー「935」の600馬力を視野に入れて設計されたといわれている。通常「911」は915型とよばれるマグネシウム製ギアボックスを使用しているが、大きなトルクを受け止める事から、アルミ製ギアボックスが採用されている。ディファレンシャルはロッキングファクター30%LSDを装備する。大幅に広げられたトレッドをもつ足回りは、フロント・マクファーソンストラット式+トーションバー+スタビライザー、リア・セミトレーリングアーム式+トーションバー+スタビライザーを備える。型式こそ「911」と共通ながらレーシングカーの「カレラRSRターボ」のノウハウを用いて強化された足回りは、容量の大きいキャストアロイ製トレーリングアームが使われ、ホイールベアリングも格上げされた強化版が使用されている。ブレーキはフロント304mm径、リア309mm径のドリルド・ベンチレーテッドディスクが採用され、ブレンボ製4ポッドキャリパーを前後に組み合わせている。タイヤサイズはフロント205/55VR16(7J)、リア225/50VR16(8J)となり、当時としては超扁平で異次元の高性能タイヤといわれた、ピレリ社との共同開発による「P7」がロードモデルとして初めて採用された。ダッシュボードの眺めは他の「911」シリーズとほぼ共通のレイアウトとなっているが、「911ターボ」ならではの装備として、ドライバー正面にレイアウトされた6700rpmからレッドゾーンとなる大径タコメーター内に、最大1barまでのターボブースト計が備わる。またその左側には300km/hまでのスピードメーターを配置する。見慣れたハイバックシートは深めのサイドサポートをもち、可動部は全て電動式となる。室内は充分な防音が施され厚いカーペットによる充実したインテリアとなっている。全長×全幅×全高は4300mm×1750mm×1310mm、ホイールベースは2280mm、トレッド前1430mm、後1450mm、車両重量1330kg。前後重量配分は34.6:65.4で、燃料タンク容量80となっている。新車時ディーラー価格は1630万円(1978)。生産台数は1978年〜89年の3.3エンジンのクーペモデルで17003台となる。メーカー公表性能値は0100km/h加速5.3秒、最高速度260km/h。カーグラフィック誌による実測データは0400m加速13.86秒、01km加速25.32秒、最高速度242.26km/hとなっている。(日本仕様265馬力/40.3kgmエンジン搭載の3.3ターボによるデータ)911ターボ」の佇まいは他の「911」モデルとは全く印象が異なる。この時代の「911」は今となってはスリークともいえる程、小さく幅の狭いイメージに対して「911ターボ」のボディは圧倒的なオーバーフェンダーとリアの大きなスポイラーで、現在のクルマの流れの中でもひと目で見分ける事が出来る。対してインテリアはポルシェらしく機能的なものとなるが「911」に乗った事のある人なら、その違いが明確にわかる上質で豪華な演出がなされている。エンジンキーをステアリングコラム左側のキーシリンダーに差し込みエンジンをかけると、大人しく控えめな排気音でアイドリングがはじまる。やや重めのオルガン式となるクラッチペダルを踏んで1速にギアレバーを入れ、半クラッチを少なめに意識しながらつなぐと、ゆっくり走り出す。そして2速へ、この2速のままで150km/hまで使うことが出来、ほぼオートマチック車の様に日常走行がまかなえる。ただしそうしていたのでは「911ターボ」の魅力を1割も味わった事にはならない。空いたストレートを見つけてアクセルを開けてみると、3000rpmを過ぎる頃からターボ効果を感じる事が出来、タービンの高周波音が聞こえてくる。と同時に2次曲線的にパワーが高まりタコメーターの針は、弾みをつけた様にレッドゾーンに吸い込まれる。滑らかな回転感とリミッターとなるイグニッションのカットオフが無ければ、容易にオーバーレブしてしまう程のスムーズさをもっている。この間の加速の凄まじさは「911ターボ」ならではの別世界といえるだろう。ワインディングロードにおいても、固められた足回りと強力なブレーキ、そしてロープロファイルタイヤにより、しっかりターボによるパワーを活かした走りを楽しむ事が出来る。他の「911」モデル以上にスローイン・ファーストアウトの基本を意識してコーナーをやりすごし、圧倒的な立ち上がり加速を味わいながら眼にする光景は忘れられない印象的なモノとなるだろう。「911ターボ」発売当時、ライバルとなる12気筒エンジンを搭載した「フェラーリ365GT/4BB」や「ランボルギーニ・カウンタック」と比べトップスピードでは一歩譲っても、発進加速や160km/hあたりまでの速度域では、ライバルをしのぐ世界最高の抜群の加速を誇るロードカーとよばれていた。その性能を保ちながら他の「911」同様の高い実用性と快適性を備え、良好な視界とフレキシブルなエンジンにより街中での取り回しも容易に出来る。ライバル2車と同様に少しずつアップデートされながら1989年迄、生産された「911ターボ」は「911」が964型に進化してからも3.3ターボの930/68型が採用され、1993年に3.6となるM64型ユニットにバトンを渡し、空冷ターボエンジンによるRR2輪駆動の時代に幕を閉じる事となる。