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メーカー
フィアット
ミッション
マニュアル
グレード
ボディタイプ
Coupe
外装色
ライトブルー
年式
1964 年型
走行距離
不明
乗車定員
5 名
サイズ
長 295 cm 幅 132 cm 高 133 cm
エンジン形式
排気量
490 cc
馬力
22
トルク
3.6kgm
車検
令和7年2月7日
ハンドル
駆動区分
後輪駆動
輸入区分
中古並行輸入
内装色
レッド
燃料区分
ガソリン
幌色

フィアット500のデビューは1957年、春のジュネーブショー。開発がスタートしたのは1953年のこと。第二次世界大戦後のイタリアのモータリゼーションの起爆剤となる、フィアット600の開発が終わっていない中で、フィアットの社主ヴィットリオ・バレッタは、更にベーシックで誰もが買える自動車の必要性を感じていた。その根拠となったのは、スクーター市場の活況ぶりで、代表格のピアッジオの生産状況を例にとれば、19462500台だったものがその後、急速に需要を伸ばしフィアット500の発売前年となる1956年には累計100万台近くに達していた。これが潜在的な4輪車の新規顧客と考えていたのだ。そこでフィアット600の開発者でもある、伝説的なチーフエンジニア、ダンテ・ジアコーザにこの考えを伝え、新型車の開発を任せた。それを受けたジアコーザはフィアット600と同じ全輪独立サスペンションを備えた、リアエンジン・リアドライブ・レイアウトで「極限まで小さく、なおかつ実用的なクルマ」として「ヌオーバ500」をつくりあげた。「ヌオーバ」とはイタリア語で「新しい」を意味する言葉で、それまで販売されていたジアコーザの開発による「500トポリーノ」に対しその新型という意味で「ヌオーバ500」と名付けられた。ヌオーバ500のデザインはフィアット社内にデザインセンターが設立される前だった為、ジアコーザによるものとされ、彼の美意識が色濃く反映されたものとなっていた。柔らかな丸味を帯びたフォルムは軽量化と低コストを狙って、比較的薄いシートメタルを用い、そこからより高い剛性を引き出す為、成形技術の限界ラインで整形されたものといわれている。エンジンはジアコーザの依頼を受け若手のトラッツァ技師に任された。出来上がったフィアット初の空冷2気筒エンジンは、こだわりの軽量設計とした事で激しい騒音と振動をもたらしたが、ボディのルーフに穴を開け、キャンバストップとする事で、ミニマムな快適性が確保される事となった。発表の翌年には早くも高性能版となる「500スポルト」というモデルが追加された。これは479cc13馬力だったノーマルに対し499.5cc21.5馬力までパワーアップされたエンジンを搭載していた。そして1960年、この500スポルトのエンジンを若干デチューンしたものを搭載し、ボディにクロームのトリムをあしらったヌオーバ500の進化型として「500D」が発表された。ヌオーバ500ではリアまで開くフルオープン型のキャンバストップだったが、500Dでは全席上部のみのキャンバストップとされ、パワーアップされたエンジンとともに快適性の向上がはかられた。外観上の変化点はヘッドランプ下に移されたウィンカーと丸型サイドマーカー、リアには大型化されたテールランプが付けられた。またリアウィンドウが付くルーフへと続くボディパネルは取り外し可能となっている。フロントフード上にあるアルミ製モールと、サイドライン及び後方にヒンジを持つ前開きのドアは500D以前のモデルの特徴となる。またラゲッジスペース確保の為、ボンネット内に置かれた燃料タンクは左側に寄せて設置されるようになった。室内はフロアパンの改良により、後席のレッグスペースが拡大され、可倒式リアシートを装備することでリアシート部をラゲッジスペースとして使えるようになった。フィアット500Dのエンジンは、ボア・ストローク67.4mm×70mmの空冷OHV直列2気筒で499.5ccの排気量をもつ。圧縮比7.1でシングルウェーバーキャブレター261MB4型を備え17.5馬力/4400rpm3.1kgm/2200rpmのトルクを発揮する。このエンジンにはフィアットが目指したピアッジオ社のコラーディーノ・ダッカニオのデザインした「ベスパ」の様なポジションに位置するクルマこそ大衆が求めたモノという着想に相応しい成り立ちを感じられる。シンプルで軽量、低コストで22.2km/といわれる驚異的な経済性を兼ね備えていた。組み合わされるトランスミッションは24速にシンクロをもつマニュアル4速となっている。足回りは、先に設計されたフィアット600と同じくフロントが横置きリーフ+アッパーアーム、リアはセミトレーリングアーム+コイルとなり、フロントの横置きリーフは、それ自体でロア・アームとスタビライザーの役目を果たすシンプルで巧妙な構造となる。ブレーキは全輪ドラムブレーキとなり、12インチ(3.5J)径のホイールに125mm幅のタイヤが組み合わされる。ホイールキャップは500Dから装備された。室内はボディ鋼板剥き出しのインパネを備えシンプルなインジケーター付きの120km/hまで刻まれたスピードメーターが1つドライバーに向けて装備されている。メインキーは電源のオンとオフ、ポジションのみで、スターターはシフトレバー後方に位置するレバーとなる。全長×全幅×全高は2970mm×1320mm×1325mm、ホイールベースは1840mm、トレッド前1121mm、後1135mm、車両重量500kgとなっている。動力性能としては最高速度95km/hと公表されていて、ヌオーバ50085km/hより10km/hのびている。フィアット5001954年にイタリアで発祥した、優秀な工業デザインとして認定されたモノの品質を認めるヨーロッパで最高の栄誉とされる「コンパッソ・ド・オーロ(金のコンパス)」を受賞している。またニューヨーク近代美術館(MoMA)に於いて、生誕60周年の節目の年に、永久展示品として常設コレクションに加わり、所蔵されるジャガーEタイプや、チシタリア202と同様にアートとしても認定される事となる。イタリアの戦後復興期に誕生したフィアット500は、最小の大きさの中に大人4人が乗れるミニマムなスペースと、移動する為に必要な最小限のパワーユニットが、最大のパワーが発揮出来るようにレイアウトされた設計がなされている。無駄な部分は一切無く、1mmたりとも余分な空間は見出せない。完璧なパッケージレイアウトのひとつとなっている。しかし、ただそれだけで、これ程長きにわたって、人々に愛され、整備され、大切に使用され続けるワケが無い。そこには人が愛情を注ぎたくなる形、デザインがあったからではないだろうか?どこに置かれていても、どこで見かけても、つい振り返ってしまう、気を惹かれる、もう一度見たくなる表情を見せる。そんな存在感を感じる。その場にすぐ馴染んで、しかも絵になる。そして見た人の心に焼き付く。この場合、見た人がクルマに興味がある、無いはあまり重要にならないところがとても貴重だと思う。人の感性にスッと入ってくる、こんな形のクルマはフィアット500以外には無い。そして、その存在感はこれからも高まるばかりに思える。フィアット500は「500D」以降「500F」「500L」「500R」と続いて1957年から1975年まで生産される事となり、総生産台数は3678000台となっている。