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3.2
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メーカー
ポルシェ
ミッション
マニュアル
グレード
3.2
ボディタイプ
外装色
プラチナメタリック
年式
1984.0 年型
走行距離
148300km
乗車定員
4.0 名
サイズ
長 430.0 cm 幅 165.0 cm 高 135.0 cm
エンジン形式
排気量
3164.0 cc
馬力
231
トルク
28.6
車検
令和6年6月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラウン
燃料区分
ガソリン
幌色

1963年、フェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(ブッツィ・ポルシェの愛称でよばれるフェルディナント・ポルシェの孫)のデザインにより、その歴史をスタートした「ポルシェ911」。この時1963年のフランクフルトショーでデビューした「901」という車名をもつプロトタイプに続き、翌年から量産される「0シリーズ」から「ポルシェ911」と名称を改め、伝説の「ナナサンのカレラ」といわれる1973年型「カレラRS」も含まれる「Fシリーズ」の時代までが「ナロー・モデル」とよばれている。1974年になると、最大の輸出国であるアメリカ合衆国の、連邦自動車安全基準(FMVSS)の新しい衝突基準に対応して、前後に大型の5マイル・バンパー(フロント側5mph=8.5km/h、リア側3mph =4.8km/hの速度で衝突に際しヘッドライト、テールライトを含む灯火類と給油装置に損傷を与えない様、ショックを吸収出来るバンパー)と呼ばれるモダンなデザインのバンパーがつけられ、それにあわせて前後フェンダーもリデザインされたモデル「Gシリーズ」が発表された。この「Gシリーズ」以降1989年に「911」シリーズがタイプ964型にモデル・チェンジするまでの長きに渡って用いられた、このバンパーをもつモデル達は「ビック・バンパー」の愛称で親しまれた。「911」の5マイルバンパーは、ヨーロッパ仕様ではシンプルな収縮式となり、北米仕様は油圧ダンパーを内蔵し、衝撃を吸収する仕組みとなり重量も嵩むため走行性能にも影響を与えるものとなった。「Gシリーズ」登場時、搭載されていたエンジンは2.7であったが、排ガス規制と並いるライバル車に対して「ポルシェ911」らしい性能を発揮する為に1978年、3.0エンジンを搭載した「911SC(Lシリーズ)」に進化を遂げた。このエンジン変更にともないタイプ名もそれまでの901型から930型とされ、エアコンを標準装備する日本仕様でも圧縮比を下げ、排ガス対策をした上で180馬力(ヨーロッパ仕様は204馬力)を発揮し、未だ「カミソリのような鋭さをもつエンジン」と評価されていた。そのシリーズの最後には「911SC」と同じ排気量から、カムシャフトを変更し圧縮比を高め、燃料噴射装置をボッシュ/クーゲルフィッシャーのメカニカル・タイプとすることで255馬力を発揮、車重960kgの軽量ボディによりラリー参戦を目的としたホモロゲーション・モデル「911SC/RS」を20台生産するに至る。この「911SC」の後継車として19839月の第50回フランクフルトショーで「ポルシェ959」のプロトタイプとなるパールホワイトに塗られた「グルッペB」とともに発表されたのが「911カレラ3.2」となる。このショーではショートホイールベースが印象的な「アウディ・スポーツ・クワトロ」や「BMW M1」のエンジンを搭載した「BMW M635csi」、「VW ゴルフ GTI」などがお披露目されショーに彩りを添えていた。同年の東京モーターショーでも展示された「911カレラ3.2」を前に、当時、初来日となったポルシェ社のペーター・シュッツ社長は「3.2の新しいエンジンを搭載した911のパフォーマンスは、ナナサンの2.7カレラ(カレラRS)を凌ぐものとなった。そこで356以来、伝統的にシリーズ最高性能モデルに与えたカレラの名前を84年型に冠した。このモデルはカレラの名前に充分に値すると確信している」とコメントした。エルンスト・フールマン前社長がポルシェ社初めての赤字転落の責任をとり、任期を一年残して辞任、その後を継いで1981年から87年までポルシェ社長を務めたペーター・シュッツは、アメリカ系ドイツ人。キャタピラー社でディーゼルエンジンのエンジニアを務めポルシェ社の経営再建を図る中で「911」のブランド性にいち早く注目した人物となる。「911」の後継車として「928/924」によるFRポルシェを主力とする路線から「911」を中心とする商品展開に軌道修正を行い、それを形にしたはじめの一台が1981年フランクフルトショーで発表の「911ターボ・カブリオレ・スタディ」とされている。「ターボ・ボディ」が採用されてはいたが「911」をベースに新たに「4WD」と「カブリオレ」が提案された。「4WD」はフロアパンの再設計が必要な為、見送られ開発を続けられる中「カブリオレ」は1982年から「911SCカブリオレ」として市販に移された。またイメージ刷新の意味も含め採用された「カレラ」の車名も、1983年発表となった「911カレラ3.2」以降「911」と「カレラ」の名称が組み合わされ用いられるようになった。「911カレラ3.2」のエクステリアではフロントスカートのバンパー下に吊り下げられていた角型フォグランプがビルトインされたものとなり「Carrera」のエンブレムがエンジンフードに付けられた。そしてアルミホイールのデザインが「928」に採用されていた「テレホンダイヤル」タイプの15インチが標準装備されていたが、多くのユーザーはオプション設定されていたFUCHS製ホイールを注文したといわれている。搭載されるエンジンは、空冷SOHC水平対向6気筒となり、定評のあったの3モデルからストロークを4mm延長した95.0mm×74.4mmのボア・ストロークとなる3164ccの排気量をもつ。燃料噴射装置をこれまでのメカニカル・インジェクションのKジェトロニックから、電子制御式となったLジェトロニックに変更されドライバビリティと燃費の向上がはかられている。このLジェトロニック燃料噴射装置と9.5の圧縮比から最高出力215馬力/5800rpm、最大トルク26.0kgm/4800rpmを発揮する。(この数値は三元触媒とO2センサーを用いて53年規制をクリアした日本仕様のもので、ヨーロッパ仕様では10.3の圧縮比と触媒レスで231馬力となる)3モデルと比べると馬力で19%、トルクで4%上乗せされている。それに伴い組み合わされる5速マニュアルミッションは、2速と5速のレシオが引き上げられ、ファイナルは3モデルと共通となる。このミッションは「915ミッション」とよばれるポルシェ社製シンクロメッシュを採用する「スプーンで蜂蜜をかき回す」や「冷えたバターを熱いバターナイフでかき回す」と表現される独特のシフトフィールを持つ為、ポルシェフリークの間では人気が高いものとなっている。足回りはフロント・マクファーソンストラット式、リア・セミトレーリングアーム式となり、ボーゲ製オイルダンパーを装備、オプションでビルシュタイン製ガスダンパーも用意される。前後ともにトーションバースプリングをもち、スタビライザーを備える。Ate製対向ピストンをもつキャリパーを備えるブレーキは前後ベンチレーテッドディスクを装備し、増強されたエンジンパワーに対応して3.5mm厚くなり、対フェード性能を強化している。リアホイールのホイールシリンダーを大型化し「928S2」のバランス制御ユニットを採用することで前後ブレーキバランスを改良、前輪のロックを防いでいる。ホイールはフロント6J×15、リア7J×15を備え185/70VR15215/60VR15サイズのタイヤと組み合わされる。今回入荷した個体には純正オプションとなる「911」の定番ともいえるFUCHS社製16インチ・アルミ鍛造ホイールが装備されている。組み合わされるタイヤも205/55VR16225/50VR16サイズが組み合わされている。インテリアは「PORSCHE」のレタリングが入った内張りのクロスが新たに採用され、長時間ドライブし続けても疲れにくいレカロ製ハイバックシートを備える。このシートに38cm径レザー製の3スポークステアリングを装備、そのステアリングを通して正面に配される大径レブカウンターを含むメータークラスター内の5連メーターのレイアウトは「ポルシェ911」ならではとなり、メーター類は全てVDO製となる。そして床から生えるオルガンタイプが採用されるアクセル・ブレーキ・クラッチのペダルの操作感は独特なものとなり、慣れてしまえば素早い操作にはこの方が良い事に気付かされる。それはほとんどのレーシングカーのペダルも同様にオルガンタイプが使われている事からもわかる。ギアシフトのパターンは14速でH型を形成し、右上の5速の手前がリバースとなる。新たにフロントシートの間にダイヤル式の室内送風ファン・スイッチが付いた事で、空冷エンジンの宿命となる室内空調の風量を、エンジン回転数に頼る事無く安定して得られるようになった。リアシートは完全なプラス2シートとなり、大人が長時間座れるものにはなっていない。荷物用、あるいは子供用だが、あるだけで便利なスペースともいえるもの。全長×全幅×全高は4300mm×1650mm×1350mm、ホイールベース2270mm、トレッド前1375mm、後1395mm、車両重量1230kg。燃料タンク容量80、最小回転半径4.9m、新車時販売価格995万円となっている。1984年〜1986年まで製造された915ミッション装備の「911カレラ3.2クーペ 」は19125台となり、そのうち日本仕様は672台となっている。メーカー公表性能値は0100km/h加速6.1秒、最高速度245km/hとなる。カーグラフィック誌による実測データ値は0100km/h加速6.7秒、0400m加速14.8秒、01000m加速26.6秒、最高速度242.9km/hとなっている。ドアノブを引いて車内に入りドライバーズシートに着くと全方向ルーミーで、そして助手席側のサイドウィンドウにも手が届きそうなコンパクトなボディがスポーツカーらしさを感じさせる。フロントウィンドウからの眺めは、フロントフェンダーの峰が車両感覚をつかむ上で役に立つとともに「911カレラ」に乗っている実感を味わう事が出来る。左手でキーシリンダーを捻りエンジンをスタートするのも、またしかり。比較的長めのシフトレバーで1速を選びクラッチをエンゲージする。床から生えるクラッチペダルは、発進時には気を使わされるがエンジンの低速トルクに助けられ次第に慣れてくる。それ以前の3エンジンより「911」らしい澄んだトーンを聴かせてくれる空冷エンジンは、当時「ツインカムヘッドも、気筒あたり4本のバルブも、ターボも持たないにもかかわらず、単なるSOHCで、このパフォーマンス」と多くの車雑誌に評価された。「類稀なるレスポンス」ともいわれたエンジンフィールはアクセルを踏み込む事で、その瞬間ドライバーは、この言葉の意味がきっと理解できる事だろう。低回転域でのフレキシブルな領域からリニアにパワー感を高めながら3000rpmから力を漲らせ、一段と力強く盛りあがるのは4000rpm。そこから6300rpmのレブリミットまでのトップエンドパワーは、どのギアに入っていてもバックレストに身体を押し付けられるG感覚を味わう事が可能となる。一点の淀みもない高密度な加速感は「911カレラ」ならではといえるだろう。また100km/hでの高速クルージングは52300rpmにすぎないが、後方からコックピットに伝わるエンジンの軽い唸りが、ある種の快感をドライバーにもたらし、退屈な時間とはならない。こうした官能的な部分も「911カレラ」の大切な持ち味といえるかもしれない。そこからひと踏するだけで、また猛然たる加速に移れるのだから、どんな速度域にも自在に行き来が出来る。ノンパワーとなるラック&ピニオン式のステアリングは、強い手応えと顕著なキックバックを伝えるかわりに、しっかりとした剛性感とダイレクトな路面感覚を備える。定評あるブレーキシステムは耐フェード性、ペダルフィールともに一級品。リアにエンジンを搭載する「911カレラ」は速いけれども、速く走らせる為にはその独特の操縦性を理解することが必要となるかもしれない。それを理解し分かり合えた先での達成感や信頼感、そして緊張感もスポーツカーの楽しみと言えるだろう。電子デバイスの助けを借りる事無く、現代のクルマのようにコンフォート性能も高く設定されていない時代の「911カレラ」は、シンプルで軽量、そしてダイレクトな反応を堪能出来る、純粋なスポーツカーといえるかもしれない。