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F1 LHD
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メーカー
ミッション
オートマ
グレード
F1 LHD
ボディタイプ
外装色
ロッソ
年式
2008 年型
走行距離
18.400km
乗車定員
2 名
サイズ
長 451 cm 幅 192 cm 高 124 cm
エンジン形式
F136E
排気量
4307 cc
馬力
490
トルク
47.4
車検
令和10年2月
ハンドル
駆動区分
輸入区分
ディーラー
内装色
ブラック
燃料区分
ガソリン
幌色
ブラック

 創業者エンツォ・フェラーリ亡き後、1991年からその意志を継ぐルカ・ディ・モンテゼーモロ体制になったフェラーリは、21世紀を目前に控えた1999年、V8気筒搭載シリーズとして高い人気を誇っていた「F355」の後継モデルとして「360モデナ」を発表。フェラーリ初のアルミ製スペースフレームを採用するこのモデルは、ボディ・パネル、サスペンション・アームに至るまでアルミニウム製として開発されている。ピニンファリーナのダビデ・アルカンジェリによりデザインされた、ダイナミックなボディラインをもつボディと、1970年代から続いてきたリトラクタブル式では無くプレキシグラスに覆われた固定式ヘッドランプが採用されているのが特徴となる。この「360モデナ」は「F355」よりひと回り大きなディメンジョンを持つにもかかわらず、アルミニウムを多様することにより、ほぼ同等の乾燥重量に仕上げられるとともに、大幅にボディ剛性は高められ大きく進化したエアロダイナミクス性能が与えられている。その上でモンテゼーモロの意向から高いコンフォート性能をもち、新時代のフェラーリ・ベルリネッタ像を世に示した。3586ccまで排気量アップが図られたF131B型・V8気筒エンジンは、5バルブ・ヘッドを「F355」から継承し、マニエッティマレリ社製の電子制御スロットルが初めて導入されている。これにより組み合わされるフェラーリ独自のセミ・オートマチックシステム「F1マチック」では、シフトダウン時の自動的にブリッピングが使える様になり、GPマシンさながらの瞬時のギア・チェンジを可能としている。「360モデナ」は、新たな時代のフェラーリ・ベルリネッタとして、より多くのファンに認められ「F355」のおよそ倍の生産台数を記録している。この「360モデナ」のエボリューション・モデルとして、20049月にパリサロンで発表されたのが「F430」となる。基本的なフォルムや、アルミニウム製のボディ構造を「360モデナ」から継承しながら、ピニンファリーナに在籍中だったフランク・ステフェンソンによりリフレッシュされたボディデザインは、1961年にF1タイトルを獲得した「フェラーリ156F1」の特徴ともいえるシャーク・ノーズ・デザインをフロントバンパーに取り入れる事で、よりシャープなエクステリア・デザインに刷新されている。また大型化されたリア・クォーターピラー付け根のエア・インテークは「360モデナ」とは大きく異なるデザインとされ、4つのテールランプはボディから浮き出したデザインが採用されている。1999年からF1コンストラクターズ・チャンピオンを連続して獲得したことにより、新世紀を迎えて勢いづくフェラーリは「F40」「F50」に続くスペチアーレ・フェラーリとして2002年に「エンツォ・フェラーリ」を発表する。これに続くライバルメーカー達の反応は早く、翌年にはポルシェからは「カレラGT」が、メルセデスベンツからは「SLR」がデビューしている。2004年の「F430」がショーデビューを果たす寸前のタイミングでは、ポルシェからは水冷エンジン搭載モデルの2世代目となる「997カレラ」が発表されると、それを追いかける様に翌2005年にはアストンマーティンは2003年の「DB9」に続いて「V8ヴァンテージ」を、マセラティからは2004年の「MC12」に続いて「グランスポーツ」が発表されるというスポーツカー活況の時代を迎える。その中で発表された「360モデナ」の進化型となる「F430」最大のトピックは、新開発されたV8気筒エンジンとなる。1970年代にジュリアーノ・デ・アンジェリス設計による「308」シリーズ登場時から「GTO/F40」を経て「360モデナ」まで用いられた94mmのボア間ピッチをもつV8エンジンに代わり、新設計のマセラティと共用となる新型V8エンジンが搭載されている。また電子制御によるディファレンシャルシステム(E-Diff)と併せて、現在に続く「マネッティーノ」というドライブモードが選択出来る、F1マシン由来の電子技術が新たに導入されているのも注目ポイントとなる。「360モデナ」と同様にアルコア社製アルミスペースフレームが採用されるが、最新の衝突安全基準を満たす為、細部に補強が加わり構造材重量は10%増となっている。床板に用いられる7075T6と呼ばれるアルミ合金パネルは、亜鉛5.6%、クローム3.0%、マグネシウム2.5%、銅1.6%を含む超々ジュラルミンと通称される合金で「零戦」の主翼材として使用されたアルミ合金の中でも図抜けて高強度な素材となっている。これを含むアルミスペースフレームは「360モデナ」比で、捩り剛性で20%、曲げ剛性で8%のアップが図られている。また空力特性の向上も図られ、Cd値は「360モデナ」と同じ0.33となるが、ダウンフォース量はF1セクションとの共同作業により、大きな進化を見せ50%増を達成している。好評をもって迎えられた「F430」に「360モデナ」と同様にオープンモデルが加わったのは、クーペモデルが発表されてから僅か半年後の20053月のジュネーブショーだった。「360モデナ」では1年かかったオープンモデルの開発期間が半分に短縮されたのは「360スパイダー」開発時のノウハウが使えた事と「360」シリーズの中でおよそ4割を占めたといわれるオープンモデルの比率が「F430」では6割になると予想されていた事にもよる。クーペモデルと異なりキャンバスルーフを備える「F430スパイダー」では、ボディ全高が20mm高くなりオープン化の為のトップのメカニズムとボディ補強による重量増は70kgに抑えられている。完全自動式となるキャンバス製トップは、スイッチを引き続けることで「360スパイダー」の約28秒から大きく短縮された約20秒間での開閉を実現し、ロックまで自動で行われる。はじめにサイドウィンドウが下がると、トップの前後端が持ち上がり、頭上で折り畳まれると同時にヘッドフェアリングのカタチをしたキャビン後方のカバーが後ヒンジで開き、そこに畳まれたトップが収納されオープンボディ化の手順が完了する。入念なインナートリミングが施された厚手のキャンバストップは遮音性も高く、スティールバーも備える頑丈な造りとなっている。トップは、キーが「オン」の状態で、エンジンフードが閉じられていて、速度が5km/h以下の状態なら作動させる事が可能となる。トップを閉じた状態では、フェラーリならではのトンネルバックスタイルが再現された巧みなデザインが採用され、リア・スクリーンはガラスではなく軽量化を考慮したPVC製となっている。エンジンフードはクーペモデルと同様にエンジンの上部が一部ガラス製となり、その中に赤い結晶塗装の吸気チャンバー部分が覗けるのも同様となる。トップを開けると左右のシート後方には乗員の安全を確保する為のロールバーが残り、後方からの風の巻き込み防止用のディフレクターは、黒のネットから透明なスクリーンに変更されている。またオープン時にはCピラーが無くなる事で、リアフェンダー上に盛り上がる「F430」のボディデザインのポイントとなるエアインテークが強調され、よりダイナミックな印象となる。「360スパイダー」に比べ、アルミスペースフレームの剛性は捩れ方向で10%、曲げ方向で5%向上しフレーム単体重量は10kg増となっている。フェラーリでは、これまでオープントップモデルとクーペモデルでサスペンション・セッティングを変えることなく開発が行われてきた。オープン化に際し普通は弱くなるボディを勘案してリアサスを動かす方向に設定することで対応を図るところが、フェラーリではこれを行ってこなかった。それゆえボディの負担が大きくなり、サスペンションの過渡特性に支障をきたす事もある中で「F430スパイダー」では、フロアに採用される超々ジュラルミン材やフレーム強化策が功を奏して、ステアリングに雑味を感じないクーペと同じ運動性能が確立されているのは大きな進化と言えるだろう。「F430スパイダー」では、ボディカラーが16色、それに対応するインテリアカラーが12色組み合わされ、トップカラーも4色が用意されている。 F430スパイダー」に搭載されるエンジンはティーポF136E型とよばれる、水冷V8気筒DOHC32バルブとなり、ボア×ストローク92mm×81mmから4308ccの排気量を得る。圧縮比11.3と、吸排気ともに可変バルブタイミング機構を装備して、ボッシュ・モトロニックME7で制御されるこのエンジンは、最高出力490馬力/8500rpm、最大トルク47.4kgm/5250rpmを発揮する。「F355/360モデナ」に採用されていた5バルブ・ヘッドからオーソドックスな4バルブ・ヘッドとされたのは、直線的なインテークポート形状にすることにより吸気効率を高める為とされ、これもF1技術の転用であるとエンジン設計を担当した元ルノーF1エンジン設計で知られるジャン・ジャック・イスがコメントしている。カムシャフト駆動は、それ以前までのコックドベルト方式では無くチェーン駆動方式に改められ、マセラティ用では90°クロスプレーン・クランクシャフトが用いられるが「F430スパイダー」用では、従来モデルと同様の180°シングルプレーン・クランクシャフトとされ慣性吸排気を存分に利用出来るように設計されている。ピストンはマーレ社製の高強度・軽量となるアルミ鍛造ピストンが採用され、コンロッドはパンクル社製のチタンコンロッドが採用され、コンパクトで軽さにこだわったエンジンの単体重量は184kgに抑えられている。「360スパイダー」から90馬力のパワーアップが図られたこのエンジンは、かつての「F40」の478馬力をも凌ぐ最高出力を発揮する。組み合わされるトランスミッションは、新開発となる6MT6速セミ・オートマチック・トランスミッションの「F1マチック」が用意される。「F1マチック」ではECUなどの進化に伴い、よりスムーズな変速マナーが与えられ最短0.15秒でのチェンジを実現。自動変速モードの「AUTO」を選択中でも、ステアリング裏に装備されたアルミ製の左右の変速パドルにより、任意のシフトチェンジが可能となっている。「360スパイダー」から15mmエンジン搭載位置が下げられた「F430スパイダー」では、クラッチが247mm径の乾式単板から、215mm径の小径ツインプレート式に変更され、これにより許容トルクは22%増えるとともに回転慣性は9%減らされている。エンジンオイルも低重心化を狙って、ギアボックスハウジング内に収めらる構造となる。新たに採用された電子制御により作動制限率を変化させられるリミテッド・スリップ・デフ(E-Diff)は、「F1マチック」の油圧を使って湿式多板クラッチを作動させる事でロック率を変化させる構造をもつ「F430スパイダー」のハンドリングの鍵となる。これによりエンジンパワーを有効活用するとともに、スタビリティ向上にも大きな効果を発揮する。ステアリング右下の赤い「マニエッティーノ」のスイッチは、路面状況により「アイス」「ローグリップ」「スポーツ」「レース」「CST(Control for Stability&Traction) Off)」の5つからドライブモードごとに、ダンパーの硬さ、CSTの介入具合、ギアチェンジ速度、E-Diffロック率が、それぞれ組み合わされたプログラムにより、状況にあわせた走行モードが選択出来るシステムとなっている。「F1マチック」「Eデフ」「マネッティーノ」に使われる技術は、全てフェラーリがレースを戦い続ける中で培われてきた技術と直結したものとなっている。 足回りは、前後ともにダブルウィシュボーン式が採用され、アーム類を含め構成する部品はアルミ製となり、前後ともにスタビライザーを備える。ショックアブソーバーはザックス製の電子制御式となりガス封入タイプが採用されている。ブレーキはフロント・リアともに330mm径のドリルド・ベンチレーテッド・ディスクが装備され、前後ともにブレンボ製4ポッドキャリパーと組み合わされABSを装備する。今回入荷した車両には、純正オプションのカーボン-セラミック・ブレーキシステムが装備され、フロント380mm×34mm、リア350mm×34mmサイズのドリルド・カーボン-セラミックディスクは、それぞれ6ポッドと4ポッドのブレンボ製キャリパーと組み合わされている。ホイールは、BBS製の19インチとなりフロントに7.5J、リアには10Jが装備され、組み合わされるタイヤサイズは、フロント225/35ZR19(今回入荷した車両は235/35ZR19を装備)、リア285/35ZR19となっている。 F430スパイダー」では、エクステリアの灯火類やダブルスポーク・デザインのホイール、リアパネルの造形に代表される様に、インテリアも先に発表された限定モデル「エンツォ・フェラーリ」のイメージで構築されている。上部が潰れ気味のデザインが採用されているステアリングを挟んでダッシュボード左右端に一つずつ、中央に3つ備わるエア・ヴェントは、5スポークタイプの円形で「エンツォ・フェラーリ」と同じデザインのものが採用され、その基部にカーボンパネルが使われているのも同様となる。中央部の3つのエア・ヴェントの下には、1DINサイズのオーディオをレイアウトし、その左右にはパワーウィンドウのスイッチを配置、その下には室内空調の為のダイヤルがまとめられている。エンジンスタートスイッチとマネッティーノの切り替えスイッチを備えた、3スポークのステアリングホイールを通して正面には黄色の盤面をもつ、ひときわ大きなレブカウンターが装備されるのが特徴となる。1万回転まで刻まれたレブカウンターは、8600rpmからレッドゾーンとされ「F1マチック」のギアポジションが表示されるインジケーターがレイアウトされている。レブカウンターの右側には、小径のスピードメーターが備わり360km/hまで刻まれている。「F1マチック」のギアチェンジ用シフト・パドルは、アルミ製となりステアリング裏に固定されるタイプとなる。ダッシュボードから独立したカーボンパネルで覆われたフロアコンソールには、アルミパネルのエリアが設けられ、前方から「リバース・スイッチ」「オートマチック・モード・スイッチ」「ローンチ・コントロール・スイッチ」が並ぶ。新デザインとなったシートの調整は電動調整式となり、ドア・トリムなどにも多くの上質なレザーが用いられている事で、ハイクオリティなインテリアに仕上げられている。「F430スパイダー」では、リアバルクヘッドの左右シートの間には、引き出し式の小物入れが装備されている。ペダル類は、キャスト・アロイ製となりスロットル・ペダル右にステンレス・プレートが貼られるのはフェラーリ各車と同様、またパッセンジャー側にもアルミ製の大型フットレストが装備されている。全長×全幅×全高は4512mm×1923mm×1234mm、ホイールベース2600mm、トレッド前1669mm、後1616mm、車両重量1520kgとなっている。前後重量配分は42.1:57.9、燃料タンク容量は95、最小回転半径は5.4m、新車時販売価格は2457万円(F1・スパイダーボディで2007年当時)。生産台数は「F430」全てのモデルを含めた合計で16999台となっている。F430 F1(ベルリネッタ=クーペモデル)」のメーカー公表性能値は、0100km/h加速4.0秒、0400m加速11.95(6MTモデルでは12.0)、最高速度312km/hに対して「F430スパイダーF1」は、0100km/h加速4.1秒、0400m加速12.05秒、01km加速21.8秒、最高速度310km/hとなっている。カーグラフィック誌による「F430 F1(ベルリネッタ)」の実測データでは、0100km/h加速4.5秒、0400m加速12.3秒、最高速度250km/h以上を記録している。F430スパイダー」生産当時、フェラーリを率いていたルカ・ディ・モンテゼーモロとはフルネームではなく、正式な名前はルカ・コルデロ・ランツァ・マルケーゼ・ディ・モンテゼーモロという。マルケーゼというのはイギリス以外の侯爵の爵位号だから侯爵家の出身となる。ルカがファーストネーム、コルデロは名字にあたる。モンテゼーモロはピエモンテ地方の村の名前となり、白トリュフの産地として有名なモンドーヴィという地域に14世紀から続く旧家が、家系のルーツとなる。イタリア人ならノーブルな家系の出であることは名前からすぐにわかる。そしてイタリアは古い社会だから、侯爵家の血筋をもつルカは、子供の頃から一目置かれて7歳まではボローニャで育った。そこから両親とローマに移り住み、ローマ大学で国際商法の学位をとるまでここに留まり、勉学に励むかたわらサーキット・レースやラリーにも夢中になっていた。最初は「チンクエチェント」から始まり「ランチア・フルヴィア・クーペ」へと進み、ドライバーとしてランチア・ラリー・チームに帯同してフィンランド、フランス、スペインへと足を伸ばした事もあったが両親には反対されていた。この時代にボローニャのラジオ局で自身のプログラムを持っていたルカは、1970年代のはじめにそのラジオでレース擁護論を取り上げると、たまたまそれを聴いていたエンツォ・フェラーリから連絡が入り、マラネロへの招待を受ける。ローマ大学卒業後には弁護士を目指しアメリカのコロンビア大学に留学したルカは、卒業を次の夏に控えた1972年のクリスマスに祖父が住むボローニャに戻り、年が明けた1月に初めてマラネロを訪ねた。そこでエンツォから、レース部門を立て直す為にフェラーリ入りを強く要請されたルカは、それを快諾。その年の7月に米国コロンビア大学を卒業して、弱冠25歳でスクーデリア・フェラーリのマネージャーに就任、最初のレースは英国のシルバーストーン。予選でのフェラーリは16位と全く奮わず危機的な状況だった。翌年1974年には若きオーストリア人ドライバー、ニキ・ラウダを加えたスクーデリア・フェラーリは、最終戦で惜しくもタイトルを逃したもののシーズン通して2位まで復活。1975年には念願のF1コンストラクターズタイトル獲得を達成する。更に翌年にはラウダが大事故に遭遇しながらも1ポイント差で2位を獲得、翌年1977年には再びチャンピオンに返り咲くという強さを見せた。大学を出たばかりのルカの卓越したコミュニケーション能力と見事な采配により、強いスクーデリア・フェラーリが復活を遂げることとなった。その後、イタリア経済界を担うフィアットの会長ジャンニ・アニエッリの勅命により、フェラーリの重責から開放されたルカは、国際PR担当を経て1981年、フィアットの出版子会社でイタリア最大の新聞ラ・スタンパの発行元のITEDIの社長に就任、3年後には世界的なヴェルモット酒メーカー、チンザノ・インターナショナルの社長を歴任した。これらの人事ももちろんアニエッリからの要請だったが、16歳の時に親しい友人がアニエッリの親族だった事をきっかけとしてルカはアニエッリと出会い、それ以来、好奇心に溢れ世界を意識しながらイタリアを深く愛するその思想に魅せられ続けてきた。ルカは、スクーデリア・フェラーリのマネージャー時代から既にシャツの袖の上に腕時計をはめる事を許されていた。これはジャンニ・アニエッリ特有のファッション・スタイルで、アニエッリ家の人間だけに許されていたスタイルでもあった。それだけで無くボタン・ダウンのシャツのボタンを外してタイを締めるのもジャンニの有名なファッション・スタイルとなるが、ルカはこれも実行し常にジャンニへの憧れと忠誠を表現していた。この頃、ヨットのアメリカズ・カップに参加するイタリア艇の建造・参加プロジェクトのオーガナイザーとなったルカは、スポンサー集めに尽力しその手腕を買われ1990年にはFIFAワールドカップ・イタリア大会事務局長を務め成功を収める。そして1989年に創業者エンツォを失ったフェラーリは、アニエッリからの要請により1991年にルカがエンツォの後任を務めることとなる。それからのフェラーリは、伝統を継承しながらも数々の新技術を導入することで新たなフェラーリらしさを築きつつその勢いを徐々に取り戻していく。以前はフェラーリだから…”と諦めざるをえなかったウィークポイントを改善して魅力あるフェラーリをガレージにしまい込まず、実用に使って欲しいというルカ自身の発言を裏付けるように、プロダクションモデルでは高い動力性能を維持しながら、ドライバビリティ、信頼性、そしてコンフォート性能を高めたニューモデルの開発を目指した。そして成績の振るわないスクーデリア・フェラーリにもルカは再び采配を振って、19841985年にプジョーを率いてWRC2年連続タイトルを獲得してみせたジャン・トッドを1993年フランスGPから起用、1996年には、その前年迄2年連続ドライバーズチャンピオンだったミハエル・シューマッハを加入させた。そして翌年にはシューマッハのタイトル獲得に貢献したテクニカル・ディレクター、ロス・ブラウンをベネトンF1チームから迎えたスクーデリア・フェラーリは、1999年に念願のF1年間コンストラクターズ・タイトル獲得を達成。翌年2000年にはシューマッハによるドライバーズ・タイトルを獲得することで、1979年以来の21年振りのダブルタイトル獲得に成功。ここから2004年まで、スクーデリア・フェラーリは、コンストラクターズ・タイトルを連続して獲得する黄金期を再び築く事となる。こうした背景の中でルカはプロダクションモデルに、全く新しいアルミ製スペースフレームとアルミボディによる新型モデルの導入・開発を決断。1999年に発表された「360モデナ」シリーズでは6年間で17653台を、その進化型ともいえる「F430」シリーズでは僅か4年で16999台の生産を記録し、両車合わせると3万台を大きく上回る台数が販売され、商業的にも新たなユーザー層の獲得にも大きな成果を挙げている。これは、10年間で2万台を超えたエンツォの時代の人気モデル「308/328」シリーズを凌駕するほどの販売台数を示す事となり、F1レースでのスクーデリア・フェラーリの歴史的な快進撃をあわせると、この頃にフェラーリはそれまでのブランド・イメージに加えプレミアム・ブランドとして現代に繋がる新たなフェラーリ時代の土台が築いたともいえる。同時にこの時代のフェラーリを率いてきたルカの知名度も自動車界のみならず広く知られる事となり、創業者エンツォ以来の新たなフェラーリのカリスマの誕生により、フェラーリはよりフェラーリらしさを取り戻す事に成功している。この成功は、低迷していたフェラーリを2度にわたり救ったルカの卓越した手腕によるものだけでは無く、ルカが若い時代から関わり続け、その生き様を見せ続けてきたエンツォとアニエッリとの深い繋がりによる。そして3人が等しくイタリアを、そしてフェラーリを深く愛し続けてきた結果ともいえる。そして2014年に、ルカは23年にわたり務めてきたフェラーリのトップを退き、その座をセルジオ・マルキオンネに譲る事となるF430スパイダー」は先代の「360スパイダー」からのフォルムを継承しながらも、ひと足先に発表された「エンツォ・フェラーリ」を感じさせるエレメントが多用され、シャープなディテールをもつ。それでもベルリネッタ・ボディに比べエレガントな雰囲気を漂わせているのは、凝ったトンネルバックスタイルが再現されたキャンバス製のトップが効いているのかもしれない。特徴的なリアクォーターパネルに備わるインテークの手前に作られた窪みに手を差し込んで、僅かにアールの付いた3角形状のドアノブを引いて厚みのあるドアを開く。幅広いサイドシルを跨いでキャビンの中央寄りにセットされた低いシートに腰を下ろしてみると、スターターボタンとマニエッティーノの切り替えスイッチが配されたステアリングの奥には1万回転まで刻まれたイエローの盤面をもつ大径のレブカウンターが見える。車名が刻まれた2本のステーで支えられるドアミラーの、直線と円弧で切られた「エンツォ・フェラーリ」由来のデザインが継承されるミラー部には、リアクォーターのインテークが映り込んでいる。全てはフェラーリならではといえるキャビンの中で、ドライビングポジションを調整しキーを捻ってスターターボタンを押すと、エンジンがその素性を主張する様に背後から快音が一瞬響く。「F1マチック」を装備するこのモデルは、ステアリングの裏側に固定されている右側のパドルを1度引ことで1速ギアがスタンバイされ、レブカウンター内のインジケーターの表示が「N」から「1」に変わる。アクセルをゆっくり踏み込むことでクラッチがスムーズに油圧により自動エンゲージされ滑らかな発進が可能となる。絶え間なく改良されてきた「F1マチック」によるスムーズな反応は、発進のみならず変速にも活かされている。低速域での乗り心地やステアリング・フィールも同様で操作系は軽く、乗り味は想像するより滑らか感じられる。強化されたアルミスペースフレームと電制サスペンション、上質に仕立てられたシートによりオープンボディであっても直接的な尖った振動は身体には伝わらず、スカットルやフロアに伝わる微振動も少ない。エンジンが温まったのを確認し、少しエンジン回転を上げてみると「360モデナ」より高音基調の澄んだ方向にサウンド・チューニングされたエンジン音は、トップを閉じていてもクーペモデルに比べ直接的にドライバーに響くものとなる。信号待ちの時間を利用して、サイドブレーキの脇にあるスイッチでフルオート式のトップを開けてみると、それまでの囲まれ感の強かったキャビンから開放感あふれるオープンボディへと大きく変化する。走り始めると耳に直接伝わるサウンドが、エンジンの回転数により華やかに変化するのを楽しむことが出来、心配していたキャビンへの風の巻き込みも少なく快適なドライブが可能となる。これは2脚のシート後方に存在するロールバー間に装備された透明なディフレクターの効果によるもので、サイドウィンドウを上げておけば高速巡航もこなせる程の見事な空力効果を感じさせるものとなる。それに輪をかける様にエンジンは、レッドゾーンまで綺麗にフケ上がりながらパワーの収束を感じさせる事なく盛り上がりを見せ、良好なレスポンスと素晴らしいサウンドを聴かせてくれる。「F1マチック」は「AUTOモード」でも充分に洗練されたシフト・マナーを見せるが、左側のシフトパドルを引いてダウンシフトを試せば一瞬の中吹かしに気持ちが高まるのが感じられ、それはサーキットを軸足とするフェラーリの歴史が凝縮されたサウンドと呼べるものとなる。「F430スパイダー」は、オープンモデルであってもワインディングロードを少し速いペースで走らせると「Eデフ」の働きにより、思うがままにコーナーに進入し理想的に脱出するという走り方が楽しめる。加速方向、減速方向それぞれに、マイルドに電子制御によりデフに作動制限がかけられ、セオリーどおりのドライビングで速く走れるセッティングが施されている。クーペモデル同様にラインどりの自由度も高く、あらゆるレベルのスピードでもコーナリングが愉しめるモデルといえるだろう。オープンモデルであっても、ステアリングのフィードバックやブレーキフィールの解像度が高く仕上げられているのでハイスピードに対応出来るだけでは無く、スピードを抑えていてもドライビングの確度が充分に味わえる。また季節や風の変化も存分に楽しむ事が出来る、オープンモデル本来の魅力も備えている。そこに左右のパドルを使ってのギアチェンジによる、官能的なフェラーリならではのサウンドが加われば、時間が経つのを忘れる程の充実したドライブとなるかもしれない。レースと共に歩んできたフェラーリ伝統の技術に加え、現在につながる電子制御技術を有効に使ってドライバビリティを高めながらメカニカルな信頼性や耐久性も高められた世代を代表する「F430スパイダー」は、コンフォート性能にも優れる為、長距離ドライブにも応えてくれるモデルとなる。クーペモデルに比べ失うモノが無く、オープンモデルゆえの快感とエレガントな風合いを感じさせる美しさは「F430スパイダー」の大きな魅力となっている。長く乗り続ける程に高いスキルが自然と身につき、更なる楽しさを一緒に追いかける事が出来る、希少なフェラーリの一台と言えるだろう